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弓を放つように話す

私は口数が少ないほうだと思う。
学生の頃から始まって今もそうだが、文字通り一言も話さずに一日を終えることもよくある。

人と話す時は、言葉を選びすぎるきらいがあると自分でも気がついている。
矢をぐぐぐっと引っ張りながら、綺麗な放物線を描いて話せるように言葉を選んでいると、もうその話題が終わっている事が多い。
弦が後ろに張れば張るほど、自分の気持ちも張り詰める。
勢い良く突き刺さる矢じりのように、刺さりの良い言葉を勝手に探しているのだろう。

(あくまでも自分が勝手に)困っているのは、よりによって頻出ワードの「最近どうなん?」だったりする。
おそらく、私の体験を通した何か面白い話が聴きたいんだろうなと感じてはいるが、確実なのは早寝早起きが少々加速したくらいで、例えばオシャレになったとか転職したとか、この”変化の時代”の中に居ても特に目立った変化は身に起こっていない。
一旦、色々とまとめて「健康やで」と返していると、あまりに面白くないからか、耐えかねて向こうから”面白い話”を繰り出して来る。
こうなると、例の質問は自身の話を聴いてもらいたいだけの撒き餌なんだと、いつも儚く悟る。
しかし聴くのは好きだ。
だからそこからは、私の本業の「耳を傾けること」に集中できる。

水鉄砲を撃つように、リズムよく言葉を並べる人も居る。
話を深堀りすることは出来ないけど、その分軽やかに会話が流れていく様子を見て、この人は魔術師か何かかと毎回思う。
鳥や虫は、言葉を選ぶ様子が無いのにも関わらず、あんなに綺麗な声で話をするのはなぜだろうと、いつも関心をもって見てしまう。

今の時期はイカルが、オペラ歌手のような高らかな歌声を披露してくれている。

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