2冊目:『流星ひとつ』(沢木耕太郎)
今年の2冊目は、沢木耕太郎『流星ひとつ』。
『流星ひとつ』(沢木耕太郎)
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『深夜特急』などを書いたノンフィクション作家の沢木耕太郎による、歌手・藤圭子へのインタビュー集。この本は、諸般の事情によりお蔵入りになったものの、藤圭子の死後、出版された。藤圭子といえば、宇多田ヒカルの母としても有名。当時は28歳で、歌手引退を発表したばかり。一方、沢木は31歳。
「何故、引退するのか」「これからどうするのか」ということを、Barでそれぞれ8杯(!)のお酒を飲みながら、少しずつ沢木が藤圭子にインタビューしていく。マスコミ嫌いの藤圭子が、酔いもあり、沢木のインタビューの旨さもあり、だんだんと心を開いて自分の考えを話し始めるのが、臨場感もあり面白い。
僕自身は飲み会は苦手だけど、飲みの席で人が話すことには興味があり、普段も人の話をふんふんと聞いていたり、ヨルタモリや、Porter Classicでの連載など酒席をコンテンツにしたものも好きだ。酔いが回るにつれ、だんだんお互いの本音が出てくるところも面白いし、何より飲みの席での話題の、その後に残らない"水物感"が儚さもあり好きだ。
そしてそこに、「恋愛」の要素が入ったら、観てる側としてはより面白くなる。
一説によると、このインタビュー後、二人が恋仲になったことも、本書が一度お蔵入りした要因らしい。それを踏まえて読んでみると、段々と二人の価値観がすり合わされて、距離感がグッと近づいていくことが感じられ、ドキドキする。まるで、映画「恋人までの距離(ディスタンス)」のようだ。
晩年はギャンブル依存や鬱病に悩まされ、世間からもあまりいいイメージを持たれていなかった藤圭子の輝いていたひとときを伝えるため、沢木耕太郎はお蔵入りとなっていたこの書籍を出版したそう。
その通り、本書の中の藤圭子は感受性も豊かで、危うさもあるが本能のおもむくままに生きており、とても魅力的な女性だったんだなあという印象を受ける。藤圭子が輝いていたひとときをリアルに感じることができるだけで、この本を読む意義があると思った。
この本を書いた当時の沢木耕太郎は今の僕と同じ31歳。話題の引き出しが圧倒的に多い。これはモテそうだ。。と思った。自分も頑張ろう。
Twitter(@konihi36)もやってます。