10冊目:『コンビニ人間』(村田沙耶香)
今年10冊目は、芥川賞受賞作品『コンビニ人間』。
『コンビニ人間』(村田沙耶香)
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話題作だけどあまり興味が惹かれず手をつけていなかったが、面白いという声が周りから聞こえてきたので、読んでみた。
読み始めてまず心が動いたのが、コンビニ業務の描写の細かさ。著者が実際にコンビニで長年働き続けていることは知っていたけど、その経験が文章の中で活きており、無機質な感じがしていたコンビニでの仕事に命が吹き込まれていた。「大抵のフィクションは、作家のこれまでの経験や人生観が反映されたものであるからノンフィクションと言える」というようなことを聞いたことがあるが、まさしくそうだなあと思った。作品を通じて著者が何を考え、どう生きているかが知る。それが面白い。
主人公の「コンビニ店員」という与えられた役割を全うすることで、世の中における自分の居場所を確保し安心する気持ちはなんだか分かる気がした。自分を主観で見るというより、脳のちょっと後方の上あたりから自分を見ていて、自分という存在を動かしている感じ。そんなことが僕も以前は結構あった気がするなあ。
そんな感情とともに生きてきた主人公が、様々な出来事を経て、少しずつ変化をしていく。でも、その変化は、いわゆる世の中から正解とされているものではないかも知れない。「世の中がどう言おうと、自分はこれでいく。」そう思えた時から、自分なりの幸せな人生が始まるんだと思った。
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