安心して好きでいる
「つまり、僕以外に他の誰かがいることを認めてほしいってことですか?」
騒がしい居酒屋のはずなのに
一瞬だけ2人だけの空間な気がした
珍しく、セックスをしたあとに解散とならず
そのまま飲みに行くことができた
この日、私はいろいろと戸惑っていたのだ
めっちゃ気持ちよくて
2人で汗だくになったはずなのに
彼はいけなかった
事後に、拗らせの波がやってきてしまって
メンヘラなことを口走ったあとだった
お酒の力を借りないと言えない言葉がある
それは便宜上であることは承知の上で
お酒の力を借りて言いたいこともある
一杯飲み終えるかどうかのタイミングで
私から出た言葉は「最低」だった
「あなたは今までも不倫経験が豊富だし
女性の扱いも上手だと思っている。
だから、別に私と別れても次があるだろうし
私はその他過去の1人になるんだとも思ってる。」
「分散相手がいるならそれはそれだと思っている。スタンスは同じにしたいと思う。」
「この2人の関係にゴールなんてない。始まった時点でゴールのようなものだしバレたら一瞬で終わる。飽きたら終わるだけなのに何のために付き合っているんだろうって思う。」
ふーん、そっか~と言いながらも
ちゃんと聞いている姿勢なのは分かる
適当にしないからこそ、こっちが既に負け戦になっていることも認めざるを得ない状況になっている
私が、一番言いたかったこと
「今のこの状況もそうなんだけど優劣をつけるならば私は劣勢の立場になっていると思ってる。それがすごく嫌だし惨めに思う。」
そこで彼が、もうちょっと詳しく話してと。
私の過去の恋愛話
数は少ないけれど
別に難しいと思ったことはなかった
ほどほどに、楽しいくて
ちょっと私のほうが有利やん♪って思っていたことが多かった
追いかけるより
追いかけられる方がラクなのを知ったのは
社会人になってからだった
余裕がない恋愛はしんどいのだ
好きな人が一人「しか」いない状況は私にとってかなり稀なことで
(どこまでクズやねんって話なんですけどね)
いま、好きな人が「彼一人」の状況
それが「余裕がない」と感じている
夫いるじゃんって言われた時、いるけれどそれとこれは違うねんと答えた
ふーんと言いつつ、彼は煙をくゆらせながら
「あむは自分が嫌いな相手なら、優勢に感じるのかな。自分がそれほど好きじゃない相手なら、優劣の中では優に立てる。でも、それって幸せなのかな?」
うっ、、、と言葉に詰まる
さっき話した過去の恋愛話、私が猛烈にアタックしたみたいな話はなく、なんとなくその場の雰囲気とか、友達が狙ってた子と実は繋がってしまったみたいな若気の至りあるあるだった
嫌いではないけれど、それほど好きじゃないって言葉が言い得て妙だった。
矢継ぎ早さに次の質問になる
「あとね、これは間違ってたらそう教えてほしいんだけど僕と別れたいって言ってる?」
これには全力で否定した。別れたいなんて微塵も思っていなかったからそれは違うと答えた。
ほお~と頷きながらちょっと言葉を探す
彼は言った
「じゃあ、これも勘違いだったら教えてね。僕の事、大好きで不安なんだって言っているようにも聞こえるんだけどな」
茶化すことも笑いに変える術もなかった
机に顔を伏せて頷いた
まさに余裕がない
一度伏せた顔を上げるタイミングがなさすぎるし恥ずかしすぎる
「好きな時って不安な気持ちがゼロってのはないよ。ゼロって思うのはそれはそれで問題だからね。」
見えてないけれどきっとニヤリとしながら
「そっか~あむは僕のことが大好きなんだね~」と満足そうな声が聞こえた
店員さんがメニューを聞きに来てくれたから、追加のお酒を頼む時ようやく目を合わす
彼はにこっと笑いながら
「他に誰かを認めるかについては嫌です。それなりに束縛したい気持ちがあるので。」
「好きな気持ちを重いと感じたことはない。ありがとうしかない。ただ、その気持ちに対して行動で答えられないときはごめんねって思う。どうにかしたいなって思ってるよ。」
もうこれだけで答えは充分だった。
「たしかにこの関係は、共通の目標を持ちにくいよね。でも、嫁、子どもたち、そしてあむがいるんだけどね。俺の中では。」
嘘がナイところ。
ちゃんと家族を先に出すところ。
こういう線引きがちゃんとできる人だから私もそうできると改めて思う。
「5年後、10年後の事は約束できないけれど・・・
今、僕の好きな気持ちはあむに向いているんだけどね」
「あむの好きと僕の好き、これは見えないものでしょ?あむは私の方が重たい、大きいって表現をしているよね。単位が違うっていうのかな?それはどうしたら、分かるんだろうね。」
できない約束はしない。
誠実だと思った。
彼は、耳障りのイイ言葉は言わない。
分からないものをどうしたらわかるんだろうと提案し返すところが賢いと思う。
「最初の方に言った、女性の扱いに慣れてるだっけ?努力の末です。」と
いじわるな笑顔をしながら、過去の話をする彼に自然と安心感を覚えた。
過去があるから今があるし
結婚しているから今がある
過去に嫉妬をして心を蝕むくらいなら
今をちゃんと見たほうが絶対に幸せだ
だって
こうやって二人で過ごせているんだものと
自分で答えを出すのに
そう時間はかからなかった
余裕がなくて負けていると思ったら
好きで仕方なくてずっと一緒にいたいって
告白してるだけだった
そのあと彼は「お酒の力を借りて聞くのもなんですが・・・」と
前置きをしたあとに
今日のセックスでいけなかった理由を話してくれた
要は、溜め過ぎた故にタイミングを逃したと
日々コンスタントに出していなかったからだと自分なりに答えははっきりしていると頷きながら話していた
あと、、これはいいのかな。とじっと見られながらだったので
こちらも身構えると
「僕、あとどんなことできますか?」と。
キツネにつままれた気持ちになり、数秒黙ってしまった
あ、と彼が言った時には
私は爆笑してしまった
この前は神回だった(この回です)
と伝えたら彼も爆笑してた
気づけば終電の時間だった
2人でめっちゃ走ってなんとか間に合った
息も絶え絶えになりながら
「昼間もこんな呼吸だったのに夜まで息を上げるなんていやらしい〜w」って言った彼に
ほんとそれって笑いながら答えた
彼が「結局僕らは仲がいいんですよ。好き好き同士」って言葉にどこか古臭さを感じながらも(笑)好きな気持ちってピュアやなって年甲斐もなく思ったり、、、
事後にこうやって話すのが
意外と面白くて
単刀直入にセックスの話ができるから
これはこれでアリだねって
二人とも思ってたのも嬉しかった
家族の次に私がいる
この言葉だけでも充分すぎるんだよなあ
5年、10年後は分からない
そのくらい先の単位を出してくれたことも
嬉しかった
たとえ、それより前に終えたとしても今の気持ちは嘘ついてないと思うし、私自身の責任でその言葉を信じたいと思う
安心して(時々不安になったりしながら)好きでいられる人に出会えてよかった!