不動産一括査定サイトを利用する場合のガチな注意点【自分のブログに書けない内容を公開】
この記事では、不動産一括査定の利用を検討している方に向けて、自分のブログでは絶対書けない内容を解説します。
筆者は不動産屋の立場で、約10年にわたり不動産一括査定サイトを活用してきました。
その中で、不動産一括査定サイトのウラ側や、見たくもないダーティーな側面を目にしてきました。
また、不動産会社を譲渡後、今度は一利用者として一括査定サイトを4つ試し、所有していたマンションを売却しました。
こうした経験を通じて、不動産一括査定サイトは「必要悪」だと考えるようになりました。
では、不動産一括査定サイトはなぜ「悪」の側面を持ちながらも「必要」とされているのでしょうか?
この記事を読めば、その両面を理解し、不動産一括査定サイトを賢く使うための知識を整理できます。
可能な限り簡潔に分かりやすくまとめたので、ぜひ一読してみてください。
不動産一括査定最大のデメリットは「ウソ査定書」の存在
不動産一括査定サイトは、その仕組み上、ひとつの問題を抱えています。複数の不動産屋を比較する以上、不動産屋間で、必要以上の競争が生じるのです。
その結果、登録している不動産会社が良心的な営業を心掛けていると、かえって仲介契約を取れない傾向があります。
一方で、相場を無視した高額な査定額を提示すると、案外簡単に顧客を獲得できてしまいます。
これは、不動産一括査定サイトを利用する多くの方が不動産のシロウトであり「高い査定額を『良い査定』と信じてしまう」からです。
そのため、他社に負けないよう不動産会社が競って高額な査定書を出すようになりました。
しかし、重要なのはその査定額で実際に売れるかどうかです。結論からいうと、高額な査定額を出しても、その価格で売れることはめったにありません。不動産の売却価格は、最終的に買い手と売り手の納得できるライン、つまり相場価格で決まるからです。
ぜひ理解しておいてほしいのですが、本来の査定とは、相場をもとに「売出から3か月程度で成約する価格」を算出するものです。高額な査定を提示されたからといって、それが「良い査定」というわけではありません。「高額=良い査定」と考えてしまうと、不動産一括査定サイトのビジネスモデルにまんまと乗せられてしまうことになります。
「高額な査定がよい査定額だ」と思っている人は「自分は情弱だった」と反省してください。
実際、そういう情弱な人があまりにも多いのは残念すぎるポイントです。
「不動産一括査定」とは不動産屋の集客ツールである!
もうひとつ押さえておきたいのは、不動産一括査定サイトの本質は、不動産会社の「集客ツール」であるということです。
たとえば、あなたが6社の不動産会社に査定依頼をしたとします。その場合、不動産一括査定サイトの運営会社は、それぞれの会社から約1万5000円の手数料を受け取ります。
不動産一括査定サイトは、濡れ手に粟で9万円の売上が手に入るという仕組みです。
このビジネスモデルは非常に儲かる仕組みで、今では30社以上もの一括査定サイトが乱立している状況です。
この仕組みから、不動産一括査定サイトにとっての本当の「顧客」は、不動産を売却したいあなたではなく、不動産会社だということがわかります。
では、あなたはどういう立場なのでしょうか? 簡単にいえば、不動産会社を集めるための「餌」と考えるのが妥当でしょう。
この事実を理解していれば、不動産一括査定サイトを利用する際に冷静な判断ができるはずです。
(注)実際には、不動産一括査定サイトが不動産会社に課金する金額はさまざまで、数千円から2万円程度と推測されます。
しつこい営業電話は実際にあるのか?
しつこい営業電話について心配する人も多いですが、筆者としては「それもまた情弱の特徴」と考えています。
コンプライアンスが重視される現在、しつこい電話などはき然として断ればいいだけです。
また「実際しつこい電話があるのか」ですが、これは地域や物件の条件によって大きく異なります。
不動産価格が上昇している激戦区では、不動産会社の競争が激しいため、訪問営業や頻繁な電話が行われることがよくあります。筆者も不動産会社を経営していた際に、顧客から「他社のしつこい営業電話に困っている」「アポなし訪問を受けて困った」という話をよく耳にしました。
一方で、地方の物件を不動産一括査定サイトで売却してみた際は、しつこい営業はほとんどありませんでした。このことから、営業電話の多さはエリアの環境に左右されると考えられます。
たとえば、東京都心部の駅近物件など、需要が高いエリアではしつこい営業電話が来る可能性があります。一方で、地方の空き家や相続物件の場合、不動産会社もそれほど熱心な営業を行わないことが多いため、電話に悩まされることは少ないでしょう。
いずれにせよ、不動産屋は決して安くないお金を払っていますから、しつこい電話くらいさせてやってください。そして、嫌なら断ってください。
いいですか。お金を払っているのは不動産屋です。その点を押さえておいてください。
悪徳不動産業者は混じっているのか?
不動産会社は全国に約13万社以上あります。
その中には、残念ながら悪徳業者も存在します。ただ、全体の比率で言えばごく一部に過ぎません。
一方で、不動産一括査定サイトに登録している会社の数は、最大規模のサイトでも4,000~5,000社程度。そう考えると、一括査定サイトを利用して「完全な悪徳業者」に当たる確率はかなり低いと考えてよいでしょう。
とはいえ、「ちょいワル」くらいの業者はそれなりに存在します。巧妙な営業トークで攻略してきたり、契約を急かしてくるような業者に当たる可能性はゼロではありません。
その点を把握しておき、冷静に相手を見極めるように努めてください。
よくある「不動産一括査定比較記事」のカスみたいな内容の件
インターネット上に溢れる不動産一括査定サイトの比較記事を見ると、筆者としては、正直ゲンナリしてしまいます。
公表されているデータを並べて点数をつけたり、ランキング形式にしたりしている記事がよくありますが、そもそもそのデータが正しいのかどうかをウラ取りしている記事はありません。
また、肝心な「公表されていないデータ」や「語られない本質」が比較記事に一切書かれていない点も問題です。
どんなに立派な数字を掲げていても、実際に役に立たない一括査定サイトもありますし、逆に宣伝がヘタで控えめでも誠実で信頼できるサイトも存在します。
ここからは、インターネット上にあふれる表面的な比較記事に惑わされないためのポイントをお伝えします。
ネットの「不動産一括査定の比較記事」は広告主のちょうちん記事
インターネット上にあふれる「不動産一括査定」の解説記事。どうしてこんなにたくさんあるのかというと、アフィリエイト広告を掲載するちょうちん記事だからです。
いいですか? あなたがその記事経由で不動産一括査定を申し込むと、その記事を掲載しているサイトに1万円くらいの広告料金がキックバックされます。
だからこれほどちょうちん記事が氾濫しているわけですね。
筆者も人のことはいえず、自分のブログではアフィリエイト広告を掲載しています。しかし、最低限人としての心は失いたくないので、不動産のプロとして次のようなポリシーをもって記事を書いています。
①都市部なら普通に考えて超大手不動産会社をすすめるのが妥当
②地方では「必要悪としての不動産一括査定をいかに使いこなすか」が課題
③それぞれのメリット・デメリットにはちゃんと触れておく
そこで、自分のブログ記事でも「不動産一括査定サイトは不動産屋からお金をもらってますよ」といった、最低限の仕組みは語っています。
こういう点を隠しているカス記事には、ダマされないように気をつけてください。
「登録不動産会社数」の盛り方
ほとんどの「不動産一括査定サイト比較記事」では、「登録不動産会社の数が何社か」という点を評価基準にしていますが、これはあまり意味がありません。
登録会社数を水増しする方法はいくつもあり、実際に多くの一括査定サイトはこの数字を水増ししているからです。
わかりやすいところから紹介していきましょう。
一部の一括査定サイトは、登録会社数ではなく「登録店舗数」を発表しています。
1つの不動産会社が複数の店舗を運営しているケースは多々ありますから、その分数字を大きく見せることが可能です。こうした手法を使うサイトは、かなり怪しい営業方針だとみていいでしょう。
もっと悪質な例としては、登録しているだけで実際に営業を行っていない「休眠会社」もカウントに含めるケースがあります。
一括査定サイトの登録を解除せずに「休眠扱いにできる」という制度をあえて設けて、その上で休眠会社までカウントすることで、数字を大きく見せているわけです。ここまでいくと、かなり悪質です。
でも、多くの不動産一括査定比較記事では、その悪質な手口を指摘することもなく「登録会社数が多い」と評価しています。
あえてなのか、それとも何も考えていないのかはわかりませんが、こういう記事を真に受けるとよくない事は確かです。
「優良不動産会社を厳選!」していない実態
不動産一括査定サイトの広告でよく見かける「当サイトでは、優良不動産会社を独自基準で厳選!」というフレーズ。しかし、これはほとんどが誇大表現、もしくはそれに近いと考えてよいでしょう。
筆者の知る限り、どんな不動産会社であっても登録を断られるケースはほとんどありません。むしろ、スジの悪い不動産会社にも営業をかけて「ぜひ登録してください」と誘っているのが実情です。
13万社以上ある不動産会社のうち、わずか数千社しか登録していない一括査定サイトが、登録業者を厳選できるだけの余裕を持っているはずがないのです。
もちろん、あからさまな悪徳業者や、宅建業の免許を剥奪されたような会社は登録されません。しかし、それ以外の会社であれば、基本的に誰でも登録できると考えるのが妥当です。
「優良不動産会社しか登録していない」という主張を真に受けるのではなく、冷静な目で判断することが重要です。広告の文言に惑わされないよう注意しましょう。
不動産一括査定サイトの注意点(ガチ解説)
この章では、不動産一括査定サイトを利用する上での注意点を解説します。ざっくり一番ダメなのは、「何も考えずに利用すること」です。
「うちの査定額はいくらかなー?」
「うわー高い。うれしい」
「じゃーここに仲介頼もう」
というのはダメです。この記事をここまで読んだ人なら、何がダメなのかわかりますよね。では、どうすればいいのか? その点を考えていきましょう。
繰り返しになりますが、不動産一括査定サイトはある意味必要悪。複数業者に出会える点は「必要」な部分ですから、多くの業者に会い、その誠実さをしっかり吟味するようにしてください。
査定額はあてにせず「自分で相場を把握する」努力は不可欠
そもそも、不動産一括査定サイト内の過当競争により、査定額はあまり信じられなくなっています。そこで、まずは「自分で相場を把握する」ことが必要で、その上で査定書を見るようにしてください。
査定書には、それなりにプロとしての意見が書かれていますから、相場をわかっている人が見れば参考になります。
では、相場を把握する方法ですが、手っ取り早いのは毎年4月に送られてくる、固定資産税納税通知書を参照すること。
納税通知書には、その不動産の「評価額」が書かれています。
①固定資産税評価額は、公示地価の70%程度
②公示地価は実勢価格より1~2割低い
上記から、次のように計算できます。
推定実勢価格 = 固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 1.1
たとえば、固定資産税評価額が500万円だとしたら、
500万 ÷ 0.7 × 1.1 = 約785万7千円
となります。
これを基準に、もし査定額が大幅に外れていたら「なぜそうなったのか?」を尋ねてください。
どの不動産屋が誠実か? を考え抜く!
筆者のテストでは、地方なら4分の1から2分の1の査定額は「ちゃんと相場の範囲におさまっている」ということがいえます。
ひとつ前の章で計算した自己査定額などを基準に、正しい査定を出している業者を選ぶのが最低条件です。
その上で、どの業者が嘘をつかず正しいことを述べているかを考えるようにしてください。
強引に専任媒介をすすめてくる不動産屋は避ける
わかりやすいダメ例として「強引に専任媒介をすすめる業者はダメ」という点が挙げられます。
不動産の媒介契約(仲介契約)には上記の3類型があります。筆者は一般媒介契約で十分な場合が多い、と考えています。
この点について、あまり長く書いてしまうと本題とずれてしまうため、詳しくは以下の記事を参照してください。
>>一般媒介の強みをいかして不動産売却を成功させる「最強の法則」
ここでは、ひとまず「専任媒介(専属専任媒介)を強引にすすめてくる業者はパス」と覚えてください。
都市部なら結局、超大手が正解な可能性大
これは筆者自身のブログにも常々書いていることですが、都市部であれば超大手の三井不動産リアルティ、住友不動産販売、東急リバブルなどに仲介を依頼するのが確実です。
査定も正確に出してくれますし、コンプライアンス体制もしっかりしているので、全体的に安心して任せられます。販売力も魅力です。
もちろん、個々の営業マンによるレベルの違いはあります。
しかし、中小業者のバラツキ具合と比べると、だいぶレベルが整っている印象です。なので、大手仲介業者が積極的に扱ってくれる都市部の物件なら、まずは大手でしょう。
地方で存在価値を発揮する「不動産一括査定サイト」
大手不動産会社は、ちょっと地方に行くと、対応していないケースがあります。
たとえば栃木県宇都宮市、香川県高松市、茨城県水戸市などの都市部であっても対応していません(業界1位の三井不動産リアルティの場合)。
そこで、地方都市の場合は、地元の不動産会社の中から信頼できる会社を探す必要があります。
信頼できる地元不動産会社の探し方についても、詳しく述べると長くなってしまいますので、筆者が監修を行う「トーマ不動産マガジン」の記事をご覧ください。
>>地元の不動産屋の探し方:大手との使い分けやメリット・デメリット
そもそも「不動産取引」を学ばない客はカモられる
不動産売買・不動産取引を学ばないユーザーには、どのような危険があるのでしょうか? 不動産売買という高額取引について、自ら学ぼうとせず、不動産屋任せにする事には、次のようなリスクがあります。
結局相場より安く売却する
高すぎる不動産査定額にダマされて売り出したとしても、その価格では売れません。じりじりと価格を下げながら長期化し、結局「相場より安く売ってしまった」ということはよくあります。
だいたい、ウソの査定額を出すような会社が、ちゃんと物件を売ってくれるはずがないですよね?
それだけでなく、不動産会社に悪意があれば、最終的に激安で買取業者に買い取らせるといった手口もあります。
意味のない高額査定に踊らされて、いいことはひとつもありません。
最近ではこういった意味のない高額査定を「撒き餌」と読んでいるメディアもあります。たとえば、出版社のダイヤモンド社が運営する「ダイヤモンド不動産研究所」の記事でも「撒き餌」と書かれています。
>>マンションの売却査定とは?査定額の目安や算出方法、査定ポイントを解説
税金や費用で損をする可能性
もし売却でソンをしなかったとしても、何の知識もなく不動産を売却してしまうと、是利金面でソンをしてしまう可能性があります。
・マイホームの売却で「3,000万円特別控除」を適用せず、大きな税負担を被る。
・贈与税や相続税対策を怠り、家族に負担を残す。
こういった点も心配なので、不動産売却については自分自身で調べ、把握するようにしてください。
購入後にトラブルに巻き込まれる可能性
自分で不動産売買を学ばない、また、確実に仕事ができない不動産会社に仲介を任せてしまった場合には「購入後のトラブル」も心配です。
・購入後に「隣地との境界線トラブル」が発生。
・隣人のなかに要注意人物がいてトラブルに発展。
といったことは十分に考えられます。
まともな不動産屋であれば境界については確認して教えてくれますし、隣人トラブルについても聞き込み調査を行っています。
自ら学ぶ姿勢に加えて、そういった点を説明してくれる業者を選ぶ努力も必要でしょう。
では「どの不動産一括査定サイト」がマシなのか?
ではどの不動産一括査定サイトを選べばいいのか? なかなかの難題ですが、筆者が不動産会社の立場で利用してみて、実際にいいのではないかと思ったのはリガイドです。
また、サイト運営を通じて取材した中では、HowMaという査定サイトが良心的だと感じました。
ほかにもいい査定サイトはあるかもしれませんが、直接知らないサイトをほめるわけには行かないので、この記事では上記の2サイトをおすすめしておきます。
この記事では、リンクは貼りません(広告リンクと思われても困るので)。リガイドまたはHowMaという名称で検索してみてください。
または、以下の記事を参照してみてください。
>>宅建士が選ぶ!本当におすすめできる不動産一括査定サイト13選 2024年版
まとめ
この記事では、不動産一括査定サイトの利点と問題点を忖度なく解説しました。以下に重要なポイントをまとめます。
高額査定額の罠
不動産一括査定サイトのビジネスモデルのために、高額な「ウソ査定」が出されるケースがあります。
高い査定額が必ずしも良い査定ではなく、ちゃんと相場を捉えた査定額であることが重要です。
高すぎる査定額にダマされないために、自己査定を行っておく努力も必要でしょう。
一括査定サイトの本質は「不動産屋の営業ツール」
不動産一括査定サイトは、不動産会社の「集客ツール」であり、不動産屋からお金を徴収して営業しています。ユーザーであるあなた自身は、不動産会社に送客する「顧客候補」に過ぎないことを理解し、冷静に利用してください。
いずれにせよ、不動産売買は高額取引です。知識不足は不利な取引やトラブルを招く原因となります。税金や法律の知識を含め、自分でちゃんと学ぶことが大切です。
学ばない人を「情弱」と呼んでいますよね?
情弱に該当してしまわないよう、ちゃんと勉強しましょう! 不動産取引には、それだけの重みがありますし、学ぶ価値もあります。