不妊治療と仕事の両立
仕事をする女性にとって大知っていてほしい法律は、労働基準法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などである。女性の社会進出、働き手の不足、少子化問題に対応するために以上の法律が改正を繰り返しつつ整えられたおかげで、(個人的にはもっとやれって気持ちもある)妊娠しつつも働きやすくなっているのではないかと思う。もちろん、子を産むのは自由なので、男性や女性でも自分には関係ないと思うかもしれないが、同僚や部下がそのような立場になったときに法律で保障されていることを知っておいて損はないだろう。
企業には女性が働きやすいように上記の法律に沿った環境づくりが期待されている。そのほか法律として制定されていないが、配慮を求められるケースに対応するために、今般、厚生労働省より「不妊治療を続けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」と「不妊治療と仕事の両立支援サポートハンドブック」が公開された。
女性は子供を産むという特徴があり、その際10か月間の間体内に別の命を宿し、日々身体的・精神的に変化がある。妊娠サイクルの中で、母体と胎児の健康を守るために健診や出産準備などで法的に休業を取ることが保障されているのが上記の法律である。
では、胎児を宿すための法律はあるのだろうか?
高学歴化、晩婚化、月経不順、無理なダイエット、中絶経験、性病、ストレスなど原因はいろいろと推察されるが不妊治療を選択するカップルは5.5組に1組と多い。3組に1組は離婚するという計算があるが、それを考えると不妊治療をしたにもかかわらず離婚するカップルがいるのだ。余談。
不妊は女性だけでなく、男性も原因がある場合もあり、不妊治療はカップルで臨む唯一の治療かもしれない。(性病の治療は別として)働き盛りの男性や女性が、不妊治療を始めるにあたり、ネックなのは時間とお金だ。
不妊治療はお金がかかるのは周知かもしれないが、血液検査、エコー、精液検査など様々ある。そこで健康保険がきくものときかないものがあり、感染の抗体検査も合わせると6~8万に一番初めにかかる。その後も検査を複数回重ねるし、途中でホルモン剤内服もある。さらに治療スケジュールは月経サイクルに合わせて決まるため、直近で休みを取る必要がある。とてもハードなのだ。男性は1回受診すればあとは来なくてもいいが、女性は卵胞の成長具合を確認しするために受診、タイミング法を行い受精したか確認するためにまた受診と、とにかく受診する頻度が高くなる。1回で着床すれば問題ないが、何度もあると職場の迷惑になると考え、退職する女性も多い。泣く泣くキャリアを捨てるのだ。職場も戦力を失うのでどいらにしろ損失になる。それを解消しようと取り組むために秋のマニュアルやハンドブックを公開したのは想像に難くない。
少子化はわが国の重要な社会問題であるので不妊治療に臨みやすくしたのであろうこのマニュアル、しかしながら不妊治療を保障する法律はないため企業努力に任せている。そのため不妊治療でやめる社員の企業損失や、他企業が取り入れている不妊治療との両立支援を紹介しており、なんともここもとないが、ないよりましだろう。
不妊治療の報告は妊娠の報告よりセンシティブだと考える。妊娠時の休暇でさえ何かしらの問題がいまだにある中、このマニュアルがどこまで浸透し、かつ利用されるだろうか。
企業にとっては現在ホワイト500など、健康経営を積極的に行いPRするにはもってこいのマニュアルになるのか、それとも活用されないままなのか。このマニュアルを活用したところで国から企業に助成金の支給はないので、余力がある企業でかつ両立支援のベースが整っている企業ならば積極的に使えるものかもしれない。
個人的には環境づくりとやはり不妊治療への助成金のほうが少子化の歯止めになるとは思うが、不妊治療から働きやすい環境を整えている企業に対しては安心して勤めることができる目安になるかもしれない。