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言語化、自己承認欲求、ひとの存在の尊重のこと

1.「言語化」についての見解

最近、世間では「言語化」がやたら流行っているように感じる。
ありとあらゆる現象を、いかに言語化できるかどうか、
という能力が、どうも、非常に大切にされているようなのだ。

実は、私は、中学生の時から、
かなりの頻度で日記を書いていて、
自分が思ったこと・感じたことを言葉にしてスッキリさせるということをやっていた。
その頃は、まだ、世間で「言語化」は流行っていなかった。

私は親が転勤族の子供で生まれて、
土地としての「故郷」が無い、という実感があり、
心の拠り所になるような感覚がいつも欠けているような感覚があり、
日記を書いて、自分が何を感じ、何を思っているのか、何が起こっているのか、
といったことを言葉にしていく作業は、
精神の安定に間違いなく役立っていた。

高校に行っても日記は書いていたし、
大学に行ったら堀江貴文の影響でブログの存在がメジャーになって、
ブログをせっせと書いていた。

大学を卒業してからじきなんて、
とてつもなく精神不安定だったため、
新卒で入社した会社をすぐに退職し、
ほぼ引きこもりのような生活をしながら、
ブログを毎日書いたり、それだけでは飽き足らず、
メールカウンセリングで大量のメールを書き綴って
それを傾聴してもらうという経験も3年くらいした。

精神的に不安定な人間にとっては、
「言語化」
という行為は、
間違いなく一定の効果があるということは、
自身の経験からも共感できるところである。

しかし一方で、
言語化したおしてきた人間から言えることは、
やっぱり言語化しきれないことはある、
というか、
具体的に説明的に言語化しようとすればするほど、
大事ななにかを失っている可能性は大いにありえる、
と思うし、

特に、書いている側の人間からすればスッキリする行為でも、
その、超具体的・説明的な言語化されたものを受け取る読み手にとってみたら、
少々窮屈な印象を与えるということは多々あるだろう、
ということはどうしても指摘しておきたい。

何もかもを説明しつくすような勢いで言葉を使うのではなく、
むしろ、すべては表現しきれない諦観をしっかりと根底に置きながら、
余白のある言葉、読み手の想像力を喚起させる言葉、
断定的ではない言葉、
を意識して使っていくことは、結構大事なことではないかな?と思う。

私の個人的な趣味かもしれないが、
両義的な言葉も結構好きだ。
どっちともとれる、読み手の判断に委ねる、考えさせる、
そういったニュアンスの言葉のチョイスが私は好きなのだ。

私は、「女子サッカーに耳をすまして」というサイトを運営している。

このサイトの運営を通じて、サッカーを言語化することの難しさ・限界を感じていることも多い。
私自身のサッカーについての理解がお粗末ということもあるのかもしれないが、サッカーのすべてを言葉にすることは、おそらく理解が深まったとしてもできないだろうし、きっとするべきではない。
それよりも、何か問いを発見し、読み手の想像力を喚起させるような、
何かリアクションしたくなるような、
そんな文章を綴っていければいいのではないか、
と考えている。

そんなことをまさに体現しやすいSNSとして、
最近は「トイビト」さんのSNSも完成したようなので、
そちらにもアカウントを作った。

「言語化」が表現しきれていないなら、
写真ならどうか、動画ならどうか、とか、アートならどうか、
いろいろな他の手段も思い浮かぶかもしれないが、

おそらく、何を、どんな手段で表現しようとも、
「なにかを表現する」
ということは、
「なにかを表現しないこと」
にどうしてもなってしまうのだ。

できるだけ多様性を包含しながら、
様々な意味合いや可能性を包含しながら伝えたいと思うのであれば、
問いかける、とか、断定しない、とか、
想像力を喚起させる工夫をする、とか、
両義的な表現をする、
といったことをして、
書き手の当初の目論見を読み手が越えて理解してくる可能性を残しておく、
より他ないのではないかと思う。

もちろん、ケースバイケースで、
正解はこれだ、と断定的に言ってしまったほうが良い場合もあるだろう。

曖昧に表現するか、断定的に表現するか、
それはどちらもできたほうがいいし、
どちらのメリット・デメリットも理解したうえで、
使い分けられたほうが、きっとコミュニケーションの質は上がっていくだろう。

このエッセイでも、なにか、
読み手の想像力を喚起させるようなことを、
具体的なテーマで、ひとつくらい書いていけたらと思う。

何がいいかな。

「SNSと現実世界について」
なんていかがですか。

最近は、そのテーマが今
ちょっと頭の片隅で気になってるなあと感じてきていたので。

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