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ただのスト客がストリップ劇場の舞台に立った日 #ショーガール体験

「将来の夢はストリップのコピー、もしくはストリップ風のショーを自分でやってみること」

現存するすべてのストリップ劇場を巡ったことを記念して、2019年に出した同人誌『ストリップ劇場空間へのいざない』のあとがきに書いた言葉です。

ストリップ劇場に初めて訪れたのが10年ほど前、いわゆるストリップの常連のお客さん(スト客)になってから5年、あの同人誌を出してから2年ほど。まさか私がストリップ劇場のステージに立つとは思いもよりませんでした。

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一夜限りのショーガール体験」という企画があります。これは新宿にある、バーレスクダンサーが夜な夜なショーを繰り広げるお店AFTER PARTY TOKYOが主催する、一般の女性が、衣装選びからメイク、振り付けまでプロのバーレスクダンサーのサポートを受けながら準備し、お客さんを迎えてショーを披露するまでをやってみるという企画。以前私が体験した際のレポートもnoteに書きました。

このAFTER PARTY TOKYOが、ストリップ劇場の一つである「新宿ニューアート」にて開催されるSM興行(通常のストリップ興行ではない、SMを中心とした何でもありの企画、と私は理解している)において、劇場DEバーレスクをいう企画を行いまして、さらにショーガール体験の一環で舞台に立つ人を募集するというのです。

出演にはオーディションや書類選考があると思いきや、参加条件は「ショーガール体験 ベーシックに参加したことがある人」。これにはとても勇気づけられまして、「どんな女性でも輝かせてみせる!」という心強さを感じました。

応募はLINEで受付。ドキドキしながら、受付時間をほんの少し過ぎたくらいに参加希望を出し、私の受付は4番目でした。もともとは3枠のところ、増枠いただいて今回参加できることになりました。

今回の演目とレッスン

私のインストラクターはミラスワロウテイルさん。ミラさんは、2020年に開催予定のまぼろしの誕生日企画「グランドキャバレーゆうこ」にて、オリジナル演目を披露しようと振り付けやレッスンをお願いしていたところだったのでした。

その演目が、ずっと日の目を見ていないことが気がかりで、今回の企画でもその曲で踊りたいとお願いしました。もう一つ、コロナ禍に入る前までの間、外見・内面ともに大きく向上して、これまでは「美人しかやる資格がない」と思っていたコスプレを「やってみよう」と、そう思えた時期によく聞いていた曲であり、私がコスプレでやったキャラクターの曲。

知的で中二病でエモくて、私が好きなストリップの側面(ストリップという枠組みのなかで、自分が好きな表現を持ち込むこと)が表れていると、自分では思っていた曲でした。

ミラさんは、まったく新しい、キュートでかっこよくてドラマチックな振り付けをつけてくださいました。

レッスンは全部で3回。最初に動画を見たときには「これ、できるんだろうか?」と思ったものの、最初のレッスンで振りを直接教えてもらうと、自然と覚えられました。2回目と3回目は完成度を高めていく方に。最初のうちは、練習なのになんだか心細くて緊張する感じがあったのが、ミラさんもノリノリで盛り上げてくださり「踊るの楽しい!もっとやりたい!」という心持ちまでになりました。

ミラさんには「まずは笑顔!」と、想像しているよりも何倍もオーバーに表現して初めて伝わると教わりました。笑顔については、直近でカメラマンさんに写真を撮られる機会があり、撮られた写真を見て「あまりきれいに笑えてないな…」とくよくよする機会があったので、本当に心配で、ストアカで笑顔のレッスンを探して受講するくらいでした。

笑顔については、演目をご覧になった方からなんと「笑顔がかわいい」と言っていただけるまでになったのです!

自分でも、撮影していただいた動画を見て「見れるものになっている!」という感想を持ちました。そんな感想は自己卑下がすぎるかもしれませんが、今までの自分なら、動画は怖くて見れないか、動画を見て落ち込んだことのほうが多かったのです。

以前は、変身写真やコスプレ撮影で「奇跡の1カット」が撮れたことに感激していたのが、写真が動画になっても「自分いいじゃん」と思える。そこまでになれたことにしみじみとした気持ちになります。

最初は作ってもらったふりを再現するので精一杯だった私が、しだいに「この演目は思春期をテーマに少女から大人への変化を表すものだ」「花の精になったつもりで盆を歩きたい」などとイメージを膨らませられるようになり、美しく見せる魅せ方も自分で研究できるようになりました。そうなったとき「ミラさんの振り付け」から「自分の演目」になっていったと思います。

本番までの準備

レッスンを受ける以外にも、自分でも色々と準備をしてきました。主には、衣装、メイク、個人練習です。

衣装は、もし可能なら他でも披露する機会が持てればと、自分で調達することにしました。もともとは結構シックな衣装をイメージしていましたが「もっと派手なほうがいいな!」と、最終的にスパンコールのトップスと、バラの花のようなパニエを購入して使うことになりました。

次回、ショーをする機会があればもっとキラキラにしたいと思うので、このあたりも価値観の変化が起こっていったのだと思います。

体型については、悔しいことにここ3年ほどで一番太ってしまったので、なんとかマシにできるようにコルセットやガードルなどを使っています。これは相当に悔しいので、またの機会に備えてダイエットに励みます。。。

メイクについては一番不安に思っていました……。最初に参加したショーガール体験でも、メイクと髪型は自分でできるか不安だったので、お願いすることにして、ショーガール体験のカリキュラム内のメイク講座すら受けていないのです。

私は、YouTubeで「バーレスク メイク」などで検索し、関連動画をひたすら見て、おすすめされていたメイク用品を買いあさりました。また、尊敬する踊り子の栗鳥巣さんが、以前ステージメイクの実演をしていたのを思い出し、メモを頼りにお揃いのものを買ったりしました。

色々見ていく中で「これは実際に舞台に立っている方のベースメイクづくりを参考にしたほうがいい」「このアイメイクの仕方は自分には合わない」など、コツがつかめてきて、なんとかそれらしいものができるようになりました。

後に、ショーガール体験をレポートされたYouTube動画を発見し、そこで解説されているメイクテクニックは、概ね自分ができるようになったショーメイクとさほど乖離がないと確認できて安心しました。

個人練習は、自分の部屋でやることもあれば、スタジオを借りてやることもありました。ダンスの練習でスタジオを借りるのは初めての経験でしたが、徒歩5分に直前予約ならかなり割安で借りられる広いスタジオがあったので、とても助かりました。あとは暇があればイメージトレーニングしたり……。音楽、パフォーマンス、講演など人前に立つ機会はこれまで色々ありましたが、4分間という短い時間に対してここまで完成度を上げていったのは初めての経験でした。

準備をするなかでの葛藤

練習を重ねるなかで、せっかくの今回の機会を「いい経験ができて楽しかったな」以上にしたいと思うほどに、私のなかで苦しい思いがありました。バーレスクといえば、容姿や体型の美しさ、セクシーさで勝負するイメージがあり、自分は、容姿や体型も自信がないし、顔タイプ診断でも「アクティブキュート」と診断される私は、セクシーとは対極にいるのではないか(私は本当にセクシーに見せたいのか?)。そして「バーレスクに向いていないのではないか」「自分の力を使うポイントは果たしてここなのか」とまで考えてしまうのです。

それでも「自分なりのショーをやろう」と思えたのは、レッスンを重ねるなかで「私にもいいものができるかもしれない」と思えたのと、レディナナさん・Aya Mermaidさんが開催した、自分ならではのセクシーを発見するレッスン「BODY FEELS EXIT」を受けたおかげでした。

ナナさんは、ディタ・フォン・ティースの言葉を借り「自分がリラックスしているときが一番セクシー」と言いました。また、「こんな格好して恥ずかしい」「自分には似合わない」という気持ちから、自分を開放して見せたいように振る舞うのがセクシーだとも学びました。

レッスン中に一人ひとり、即興で踊る時間があったのですが、私の番になり、落として踏むくらいならとパフォーマンス中にメガネを外したら、場内がドッと受けたのです。「セクシーさとは自分らしさを開放することなのか」としっくりくる出来事でした。

本番

当日は髪を美容院でブローしてもらい、午後からAFTER PARTY TOKYOに集合すると、みなさんまったりとメイクをしていて、いつもどおりの和やかな雰囲気が救われた気分でした。

本番前にみなさんで記念写真を撮ったときには「あのSM興行の中の人になれたのか……」と感慨深いものがありました。

「投光さんに私の名前を呼んでもらえる!」「香盤表に私の名前がある!」といったことにいちいち感動していましたが、リハーサルは、ステージに立てる幸福感よりも戸惑いのほうが大きく……足が震えたり、盆の段差につまづきそうになったり……「これは結構たいへんだ」という思いでした。

本番は、やっぱり足が震えたり、よろけてしまったり、練習通りにいかないところはたくさんあったものの、リハーサルよりも本番のほうがよくできたことに安堵しました。本番中は、体がいうことを効かないなか、なんとかうまくやろうとずっと頭を働かせていたような気がします。

本番中は自分にスイッチが入り、もう本当に楽しく、あとは身を任せるように踊れたらどんなにいいかと思うけれども、本番という魔を感じた瞬間でした。しかし、あとからいただいた動画を見ると、想像の100倍くらいよかったことにびっくりしました。ちゃんとショーになっている。体感として練習の7割くらいの出来ではあるけども、その練習をしっかりやれていた結果、ちゃんと完成度を上げられたという感じでしょうか。

一見、完璧に見えるパフォーマンスをされる方でも、もしかしたら足がすくむような思いをしながら表現しているのかもしれない。それでもしっかりと準備してこられているからこその表現なんだろうなと思いました。

そして、ステージをご覧いただいた方、温かい声援をいただいた方、お気持ちやお酒をいただいた方、メッセージで感想をいただいた方、本当に多くの方がこの場にいてくださって、とてもうれしく、ありがたいことだと感激しました。

その後のAFTER PARTY TOKYOのみなさんのパフォーマンスは個性豊かで、バーレスクの最低限の型さえ守れば、なんて自由な世界なんだと感銘を受けました。私がストリップで好きだと感じた要素がそこにありました。みなさんのショーを見る中で、自分のイマジネーションも湧き、私はどうやら「変なショーがやりたい」という強い思いを抱きました。

これから

今思うと、今回の曲はセクシーとは対極に位置するような、アップテンポでオタクっぽい感じで、「これでショーを作りたい」だなんて、とんでもないお願いをしてしまったかもしれません(AFTER PARTY TOKYO代表のレディナナさんも「独創的な曲」と表現していたような……)。

そういう選曲をしてしまう私は、バーレスクの気質に向いてないんじゃないかと思う部分もないわけではないのですが、一連の体験を通じて、それよりも「変なものしか見せたくない」「自分しか見せられないものを見せたい」という気持ちがむくむくと湧いてくるようになりました。

レッスンのなかで、ミラさんからは「ショーを始める前に立っているだけでも空気が変わる」と言っていただけたことがあり、本当に嬉しかったです。

学生時代の音楽系の部活や、社会人になってからも大人数のバンドに一時期参加していたことから、舞台に立つ機会は一般よりは多かったのですが、舞台上でうまく力を発揮してこれなかったのが多かったのがコンプレックスでした。特にバンドに関しては、やっていくのが辛くなって離れてしまったこともあり「関わってきたことは、自分にとってどんな意味があったんだろう」と思うこともありました。

他にも、アートやサブカルチャーが好きで色々と見たり勉強してきたりしたこと、クラシック音楽や日本の伝統芸能も少しかじってきたこと、10代の頃、服を作るのが好きで、入っていた部活のメンバーのために衣装を作った経験など、ムダで遠回りな経験だったかもと思っていたことが、バーレスクですべて役立ちそうな気がしたのです。

会社員とパフォーマーの二足のわらじ的な方を見て、本当に憧れるところがあります。特に、前述のバンドのメンバーだったころに、パフォーマーのm@ricaさんが、会社員と並行してセクシーなパフォーマーをやっているというインタビュー記事を読んで、フィールドは違えど勝手に共感していたりしました。最近では書店員兼踊り子の新井見枝香さんのことが「こんな生き方ができたらいいなぁ」とうらやましすぎて直視できない自分がいます。

これからどうやって、バーレスクやパフォーマンスに関わっていくと、自分が楽しめて、幸せになる人の総量を増やせるだろうか。コンプレックスが多すぎてどうしていいか苦しくなる部分もあるのですが、とにかく今は、やれることをやってみようと思っています。まずは痩せたいのでジムを再開し、ダンススクールにも行くことにしました。ついでに近所に良さそうなスクールがあったのでボイストレーニングも習う。

そしてどうも、今回私はかっこいい系の演目をやったはずなのに、いろんな人から「かわいい」と言ってもらえたことで、もっと明るくて楽しい演目もやってみたい、と思うようになりました。キッチュでB級で、かわいい衣装をタケノコの皮のように脱いでいく、秘宝館のような演目がやりたい。他にもいくつか演目の構想が重い浮かびました。

自分がショーとどう向き合っていくかはまだわかりませんが、自分の課題に思っているところを前向きに改善していき、新たな演目を世に出していくまではひとまずやってみよう。それからまた何か新しい世界が見えたらいいなと思います。

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近藤佑子
お読みいただきありがとうございました! よかったらブログものぞいてみてください😊 https://kondoyuko.hatenablog.com/