どうして日本の学生は大企業しか見えていないのか?
日本の学生の大企業志向は、今に始まったことではない。
ただし、中小企業フィールドが大好きな、いわゆる世間から見たら変わり者の私にとって、日本のビジネスにおける七不思議に映って仕方がない。
もちろん、その要因は様々な方が指摘している通り、『安定志向・安全志向・ブランド志向』に尽きると思う。
しかし、私はそのことを残念に思う。
少なくともこの十数年来の日本経済停滞期に、今度こそ、若者の大企業志向が崩れることを期待してきた私としては、「どうして?」とぼやきたくもなる。
当社でも、来春の採用に関して今年の初めぐらいから採用活動を開始した。
総勢約1200名ぐらいの方に、当社の会社説明会に参加いただいた。
海外出張などの関係で流石に、毎回、私が話をすることは叶わなかったが、
それでも私が直接話をした際は「当社の考え」「世の中の現実」「アジアの現実」を率直にお伝えした。
学生の大半が驚きと感心のまなざしを向けてくれる。
話をする私としても、当然、気合が入るし、刺激も受ける。
いつも思うのだが、学生や若者は本当に世間の事実を知らない。
知ろうとしていないということもあるが、身近に大切なことを教える機会や人が少なすぎるのだろう。
学生の反応が大きいのは、例えば大企業について話をするときだ。
私の話は、経済評論家でも人事担当者でもないので、いたってシンプルだ。
経営者としてというよりも、もっと楽しい仕事人生があるだろうにという思いが強い。
大企業が学生を採用する動向に関しては、最初のサラリーマン時代はされる側の視点で、その後は自分で会社を経営するようになり、採用する側からの視点で、私なりに約20年以上見てきた。
長い期間でこの有様を俯瞰的に見ていると、大企業の行動パターンがよく見えてくる。
当たり前の話だが、採用枠は、景気の動向に左右されるし、会社の業績におおいに左右される。
もちろん、偉い方が、人事戦略、採用戦略は念入りに立案していることかと思うが、はたから見ていて、どうも行き当たりばったり感は否めない。
好決算が何年か続けば、大量採用。
リストラで人が減りすぎたからといっては新卒採用増。
今回のように急激に不景気が迫ってきたり、業績悪化が懸念されると採用枠の大幅減。
もちろん、経営者としてみれば、もっともな舵取りだと思う。
人件費は、コストとしては大きい。
必ずしも学生たちだけが被害者だとは思わないが、それでも当人たちは大変だ。
採用する側の論理が分かっていれば、結果として、自分自身で判断するわけだから自己責任ともいえる。
少なくも私が接している学生は、このコラムの主題にあるように、社会も会社も良く分かっていない。
分からない中で大企業志向なのだ。
10年ぐらい前に、大企業の倒産が衝撃的ニュースとして喧伝されだした頃のこと。
同じように会社説明会をした際に「もっと小さい会社にも目を向けて自立する」という主旨で話したとき、ある学生は
”だからこそ絶対に潰れない大企業を探すんです”
と話していたのを今でも鮮明に覚えている。
今、あの学生はどうなっているのだろうか?
この10年、想像外の倒産、合併などは枚挙に暇がない。
時代が変わってしまったのである。
話を元に戻そう。
私が学生に伝えたいことは簡単明瞭だ。
ここ数年、大量採用枠で大企業に入社した人は本当に幸せなんだろうか?
彼らの10年後はどうなるのだろうか?
組織は基本的にはピラミッド構成が一番安定する。
人口構成ですらそうだ。
組織的統制にはピラミッド型が絶対だ。
そうすると、ここ最近大量採用した会社は、10年後、30歳前後の社員が
アンバランスに膨れ上がっていることになる。
当然、企業は、スリム化を図る。
急激な減量は過度なストレスが溜まるものだ。
実際、20年ほど前のバブル採用組が、その後の不景気到来で、酷い目にあっている。
今回も、また繰り返すのだろう。
そんなことを考えると、急激な景気後退で、これから大企業枠が急激に減少するこれからが、学生にとって本当のチャンスだと思うし、私にとっても日本が変化するラストチャンスに思えてならない。
学生の皆さん、小さい会社で自分のブランドを創造しよう。
アジアを駆け巡るような仕事こそ現代に相応しい。
そのことに1人でも多く気づいて欲しい。
(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2008年12月3日に投稿したものです。)