日本人がアジアで働くために必要なこと
最近ますます、アジアビジネスがさかんになってきた。
過熱気味の感も少しはあるが、この流れは止まらないだろう。
それと歩調をあわせて、アジアで働く人たちの教育の必要性が、にわかにクローズアップされてきた。
特に大企業はこういう面では動きが早い。
中小企業以上に大企業は人材活用が事業の結果に直結する。
世界不況下の厳しい経営環境、膨大な人件費をいかに効率よく活用するかは至上命題だ。
アジアビジネスにおいては、いくら現地化するといっても、キーマンとなるのはやはり日本人である。
アジアで適用できる人材の育成は重要な人事戦略といえよう。
また、経済産業省なども、グローバル人材と称して、
国際的に活躍できる人材の育成支援に力を入れ始めている。
しかし、まだまだこの分野は、緒に就いたばかり。
現時点では、様々な取り組み事例を見ても本当の実践者、実体験が少ない中で、表面上の取り組みといわざる得ない。
大切なのは、語学教育であったり、生活環境や身の安全といった日本本位の視点、教育内容である。
当社はかれこれアジア人材に深く関わって約20年になる。
私個人の経験になるともっと長い。
結論からいうと、アジアで働くことは落とし穴だらけなのだ。
日本人がどう変わるかは重要な課題である。
しかし、その前にアジアのことをもっと知り、準備という意味での何らかの体験しておかないといけない。
アジアの人たちがどういう人か、どんな仕事のやり方をするのか?
そもそも、彼らのビジネススキルは?
チームワークは理解できるのか?
言葉は通じるの?
座学だけでは、付け焼刃にもならない。
何事にもいえるが、対策や改善の手がかりを持つためには、失敗事例から学ぶのが定石である。
アジアで働くことのいくつかの失敗事例から考えてみよう。
失敗の中でも最も多いケースのひとつは、ストレスに絶えれなくなること、である。
衛生面、交通の利便性、住まいの問題などの生活環境のストレスは当然として、最大のストレスの原因は人間関係だろう。
社内での現地スタッフとのかかわり。
現地のお客さん、業者さん。
一般の生活の場でも、どこかに買い物、食事など行けば、少なからず人との接点が生まれる。
現代の日本はおおむね安心・安全・便利である。
昔に比べて少なくなったとはいえ、まだまだ親切な人も多い。
非常識な人も少ない。
こういう温室で育った人達は、アジアに適応するのに時間がかかる。
日本人の常識は世界では非常識でもあるからだ。
商習慣になじめない人も挫折しやすい。
日本のビジネスが過当競争の中、いくら厳しいといっても、アジアはもっとタフである。
ビジネスレベルの低さがそれに拍車をかける。
理不尽なことだらけで、日本人の持つ常識は通用しない相手が大半だ。
遅刻は当たり前で、普通のように約束を反故にする。
さらに、ごまかすし、支払い無視なども発生する。
会議でも議事をとらない。
前提をすぐに覆す。
そして、言い訳のオンパレード・・・。
慣れれば良いという単純な話ではなく、まともに仕事で結果を出すためには、かなりレベルの高いビジネススキルが要求される。
揚げ足を取られないように、隙を見せないようにしなければならず、余計にストレスは重なる。
次に挙げる事例も企業の悩み、失敗のひとつだ。
いわゆる女性問題。
もちろん、女性にも起こりえるケースだが、問題になるのはほとんど男性。
日本人男性は、必要以上にモテる。
日本ブランドかつ、お金の力といっても過言ではない。
逆にモテない人を見つけるのは大変なくらい。
誘惑に弱い人、けじめのつかない人は甘い生活に骨抜きにされ、仕事に身が入らなくなるケースがある。
経営者クラスなら対応も心得ているが、一般的なビジネスパーソンでは、即、失敗に陥る。
場合によっては、人生を棒に振るケースもある。
もうひとつの失敗事例。
現地スタッフからリスペクトされないケースだ。
日本人1人か2人で、部下全員が現地人というケースは多い。
なんでも言うことを聞いてくれそうだが、そうはいかない。
日本のように聞き分けの良い部下ではない。
まだまだ、ビジネスの目線で見たら、中学生以下であり、彼らは、自分のことを棚に上げて、上司のあらを探すのだ。
逆に言うと、上司が仕事ができ、なおかつ人間力があれば、大袈裟に言えば神様のようにリスペクトされる。
中途半端な仕事スキルでは、メッキは簡単にはがされるのである。
中途半端なマネージャーが通用しない所以だ。
マネージャーで赴任しながら、部下のレベルの低さにさじを投げてしまう人も問題である。
先に述べたように、ベトナムぐらいの国だと、部下の行動特性は中学生以下ぐらい。
一回教えたぐらいでは、マスターできない。
何かと、“できない、しない”彼らの正当な言い訳は巧み。
根気が必要なのだ。
日本で今の若者のマネジメントに四苦八苦している程度の人が、アジアだから簡単に通用すると思ったら大間違い。
大きなしっぺ返しを喰らうことになるのである。
次から次へと、挙げればきりがない。
相手も変わってもらわないといけないが、まずは、相手を知り、日本人が変わる努力をする。
日本人もアジア流をマスターするために勉強し、トレーニングし、適応する努力が必要だ。
赴任前に、現地体験も必要だろう。
その上で、赴任前の教育訓練をする。
送り出す企業の立場からの結論を言うと、エースを送り込めばよいだけの話である。
仕事ができれば、環境が変わっても、少々ひどい部下でも使いこなすことはできる。
商習慣のレベルの低さにもかき回されない。
このあたりの実践的なポイントは、来春、書籍にまとめて発刊する予定だ。
それと同時に、引き続き、アジアで働く人たちに向けての、教育サービスを世代別、立場別にサポートしていきたいと考えている。
(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2011年12月10日に投稿したものです。)