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中小企業に行くか、大企業に行くかで何が変わるのか?

私も、社会人となり既に20年の月日が過ぎた。

改めて振り返ってみると、仕事をするという観点から考えれば、この期間は相当長い時間だと思う。

実際、記憶からも薄れかけるほど実に沢山の仕事にかかわってきた。

特に、一般の人と比べても、中小企業関係で仕事してきたおかげで、仕事の数も種類も多い。

20代前半の自分自身から考えると、今の自分に驚いてしまうこともある。

正直、大学を卒業し、入社したばかりの頃は、働くことにいきなりウンザリしていた。

こんなつまらない"仕事"というものを60歳まで続けないといけないとは…。

毎日が、憂鬱であった。だから、遊ぶことしか考えていなかった。
どこで、どう変わったのかは、明確に思い出す事はできないが、今は、何をやっても楽しいし、刺激的だ。

仕事を通して、人生をエンジョイできる。

今でこそ会社を経営していることもあり、若い頃から常に仕事に前向きでチャレンジをし続けてきたかのように思われがちだが、実は全く違っていたのだ。

当時を詳しく振り返ると…まず就職はどこでも良いと考えていた。
私だけではなく、私の友人は皆同じだった。

その中で、なんとなく建設会社の現場監督に向いていそうに感じた。

世間知らずの狭い了見と知識不足のフィーリングのみで入社したのが不動建設というゼネコンであった。

一応社員数は3000人以上はいたし、東証一部上場の会社だった。

もっともゼネコンランキングでは、30位前後であったので、本当の意味での大企業ではないが、少なくとも「大きい会社」であることに違いはなかった。

その後、紆余曲折あり、何を思ったか26歳の時にIT業界に転身した。
実は人生で初めての転職の際に、不思議と大企業で働くことに色気を感じ出していたのも事実だ。
その時に面接を受けたのは数社全て誰もが名前を知っている大企業であった。
結局、入社しようとも思わないほど極めて規模の小さな会社に偶然の縁で入社したのだ。
この小さな会社に決めた理由も単なるフィーリングであった。

しかも、仕事とは関係のない理由だ。

しかしながら振り返ってみると、この時に私の仕事人生が決まったと感じる。

中小企業の世界に身を置く事が決定づけられたと言っても過言ではない。

仕事人生の折り返しを迎えると同時に、
「大企業で働いていたら、今頃自分はどうなっていたのだろう?」
と自分自身に問いかけることが多くなった。


特に、大企業に勤めている同世代の友人やビジネスの仲間たちと、本音ベースで語り合う際によく脳裏に浮かぶ。
彼らは私に対して「好き勝手にできて、自分で何事も決めることができてうらやましい」というニュアンスで話をする。

私は、逆に大企業の第一線でバリバリやっている人を、ふとうらやましく思うこともある。

つまり、お互いに『隣の芝生は青く見える』ということだ。

実際、我が社は小さい会社だし、顧客の多くも小さな会社だ。
要するに、中小企業で働いて中小企業相手に仕事をしている。

小さい単位の仕事をコツコツと重ねる仕事である。

20年近くこのような仕事をしていると、同じ日本で働くにしても、ここまで違いがあるのかと、ふと考えてしまう。

中小企業と大企業とのギャップは本当に大きい。

一言で何が違うかといえば、それは、リスクの高さだ。

中小企業は小船だ。

大企業は当然、大きな船、つまり大型タンカーや空母になる。

嵐になれば、小船はモロにその影響は受けるし、穏やかな海であっても、大きな船に衝突すれば、ひとたまりもない。

リスクだらけである。

企業経営においては、リスクは、即、倒産を意味する。

もちろん、超大企業でも突然倒産する時代ではあるが、経営環境の影響をモロに受けるのは中小企業である。

また、大きな船に何年も身を任せていれば、日々、ピリピリする感覚は求められない。

当然、小船に乗っている人たちに比べたら、リスク察知能力は低下するだろう。

その他にも違いは山のようにあるが、以下3つほど取り上げる。

まず、大企業は仕事を出す側、中小企業はその仕事を請ける側という構図になる。

つまり、中小企業は大企業に使われる側になるのだ。

立場の違いが、お互いの仕事のやり方やプレッシャーに大きな差となって現れる。
極端な話、大企業の人は今日の仕事は明日に回せる。

しかし、中小企業は、今日の仕事は、今日中に絶対仕上げないとならない。

なぜならば、大企業が突きつける納期が大前提になるからだ。

その納期を守れなければ、仕事を止められる。

いくら奇麗事を並べても、これが中小企業の視点であり、本音なのだ。

また、若い頃の仕事の任せられ方も違う。

今でも明確に覚えているが、私が創業して間もない31歳の時の頃、某重厚長大産業の雄の大企業に営業訪問した時のことだ。

「ほう、近藤さん、社長ですか?うちだったら、まだ主任ぐらいだね」と言われてしまった。

このとき素直に思ったものだ。

「日本の企業は人材活用でなんともったいないことをしているんだ」と。

もちろん、当時ですら終身雇用、年功序列が色濃く残っており、もっともな部分もある。
しかし、大企業でなくても中小企業で活躍できる人はどんどんやればよいというのが、私の持論だ。

もちろん、ベンチャー企業も基本は中小企業である。

大企業で、会社全体を動かす事は、社長にでもならない限り、無理だ。

しかし、中小企業では、自分の活動が組織全体に影響する割合が大きい。

自然と手ごたえを感じやすい。

リスクの高い環境で仕事すれば、自然と乱世に必要なビジネススキルが身につくし、もっと言えば、経営者としての能力は高まる。

そして、最後の違いを挙げよう。

これからのアジアビジネスに日本がどう貢献していくかが重要なテーマになる。

ベトナムなどの成長途上国は、大企業だけが進出したところで、産業の発展の行き詰まりは目に見えている。

誰でも知っているように、裾野産業の発達が不可欠だ。

つまり、小さい会社が数多く生まれて、活躍していけるようにならないと産業自体が成立しないわけである。

アジアのことを見据えれば、中小企業で活躍できるスキルこそ必要なのだ。
このような視点からも、本当は、中小企業に向いている人でも、大企業に人材が流れていく今日の日本の就職戦線の現実を変革したいと常々思う。

そんな私は会社を作る前から大企業を下請けで使う気持ちで仕事をしてきた。

それは今も変わらない。

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2008年9月25日に投稿したものです。)