「アジアで働く」、その仕事はいくらですか?
今、就職活動シーズン真っ盛り。
いつも頭から離れないのだが、今の若者には日本の現実は見えているだろうか?
今年も私は当社の会社説明会で、直接学生の皆さんに話をしている。
当社の場合は年々アジアで働くということを前提に意識的に採用活動を強化している。
自然と当社にはアジア志向の学生達が集まってくる。
実際に説明会のときなどに聞いてみると、アジア体験者は増えつつある。
アジアに留学していた、あるいは短期で訪問した経験がある人が半分以上だ。
ところが、こんなアジア志向の彼らでも、今、日本の企業達が目の色を変えてアジアに動き出している事はあまりわかっていない。
だからといって私は驚いているわけではない。
学生がそもそも日本国内の現実や実態も知らずに20年以上暮らしてきて、国内のことですらわかっていないのに、アジアが分かるわけがない。
だから、アジアをすぐに理解しましょう、知りましょう、という話はしない。
もっと、単純にアジアと日本のこれからを考える。
このことが大切。
そのひとつが、”働く価値”を考えることなのだ。
内需主導の中、国内だけでほとんどの経済活動が完結していた時代は、国内で働く価値だけを考えていれば良かった。
例えば、大学生が社会人になるときの初任給。
働きだすとボーナスも含めた年収、あるいは生涯収入などを少なからず意識する。
生涯勤め上げようが、転職しようが、国内目線で働き続ければよかった。
サラリーマン平均年収がよく知られているように、それより高いか低いかなどは1つの自分のポジション確認の目安にはなる。
また、アルバイトを少しでもすれば、時給1000円の仕事がきつい仕事なのか、自分は貢献できているのかなど、働く価値や単価はおおよそ理解できる。
では、アジアで働くことを考えたらどうだろうか?
単純に自分の労働の単価価値、あるいは給与を自分はいくらもらえるのか。
こんなことを考えようとしても、想像することすらできない。
例えば、日本で経験した家庭教師のアルバイトは、ベトナムではいくらもらえるのか?
コンビニのアルバイトは、インドネシアではいくらなのか?
今の経済活動はアジアを中心にまわりだしている。
日本企業がアジアに進出し、それにつれて日本人がアジアで働きだす。
あるいは、現地の企業で働く日本人が増える。
こうなってくると、当たり前に自分のアジアでの労働の価値は考えておく必要がある。
言い出したら際限なく複雑な要素が絡むテーマだが、単純化すると、アジアで働く価値を考えるには2つの視点が大切だ。
まずは、日本人そのものの価値。
それと自分の価値。
この2つである。
1つ目の日本人そのものの価値を考えてみる。
知る人ぞ知る、日本は世界で人件費が一番高い国だ。
もちろん、世界でもトップの物価だからバランスが取れていると言えばそうだ。
だが、国内で完結していた時代は問題はない。
海外でビジネスをするとなると、とたんにコスト高が重石になる。
もちろん、アジアの新興国は日本の優れたノウハウや技術を欲している。
高い人件費を支払ってでも、見返りがあると判断すれば、日本水準の報酬を獲得することは可能だ。
だがそれは稀なケースだし、長年日本を支えてきたキャリア組の話だ。
結局、これからの日本人は、現地の物価水準と連動した人件費コストを目安に、それに対して付加価値があるかどうかが勝負になってくる。
もう1つの自分の価値を考える。
例えば、ベトナムにあるベトナム企業に日本人の自分が就職したと仮定しよう。
自分の初任給は20万円。ベトナム人の初任給はその10分の1。
この差をどう考えるか?
日本人だから20万円は当然・・・は通じない。
だったら、日本人でもベトナム人と同じ報酬で・・・。
理屈はそうだが、経営者目線で考えるとこれも難しい。
極端な事例で説明したが、アジアで働く時代が来るということは、自分がどの国でどういう働き方をするといくらの報酬が得られるのか?
得るための付加価値は何なのか?
こんなところも普通に考えられる思考回路が必要になってくる。
こんなことがわかってきたら、安い人件費で日本に来ているアジアや他の国の人たちの労働の実態、価値なども自然に理解できるようになると思う。
そして、日本の経済や会社の活動の仕組み、現実が見えてくるのである。
(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2012年5月30日に投稿したものです。)