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アイデアを出せることはどれほど価値があるか?

長年働いていると「あの人は、アイデアマン」と言われるような人と出くわすことが多い。

創業社長でなくても、何年も働いていれば、なんらかの新しいサービスや商品を考えることは当たり前のことだろう。
商売やサービスの新規開発は、アイデアから始まると言っても過言ではない。

しかし、「アイデアを出すこと自体にどれほど価値があることか?」ということを理解していない人が少なからず存在するのもまた、ビジネスの世界の一面である。

事業構想や商品、サービスのアイデアを考えることは楽しいし、やり甲斐がある仕事だ。
ある日突然、何かがピンと浮かんだ時、ほとんどの人は、自分のアイデアに酔いしれる。

世の中で唯一つ、自分だけが考え出したアイデアに有頂天になる。

実はこれは大きな勘違いなのである。

例えば、日本国内のビジネスだけで考えても、働いている人は何千万人といる。

仮にアイデアを出す職業、経営者に限らず事業のプランナー、企業の企画部門、商品開発部門に限っても数十万人は存在するだろう。

この数だけを考えても、唯一自分だけが考え出すことのできるアイデアなど奇跡的な確率であることは想像に難くない。

要するに、自分がアイデアを思いついたら、その瞬間に少なくとも100名は同じことを考えていると思うことが大切なのだ。

私は、アイデアを考えることに陶酔している人に遭遇すると、決まって、この言葉を伝えるようにしている。
働き始めて20年以上、また自分で事業を始めて14年、これは結構当たっていると日々実感する。

それでは「アイデアを出すことは意味がないのか?」という疑問も生じる。
ネガティブに考えがちの人はそう考えるだろう。

実際は全く逆だ。
アイデアを出すこと自体は重要なこと。

新しいことを生み出す第一歩なのである。

しかし、アイデアを出すこと自体は手段に過ぎない。

目的を考えれば、ほんの第一歩に過ぎないのだ。

それを実行に移すことが一番重要。

ところがビシネスにおいて、アイデアだけで実行に移さない人がどれだけ多いことか。

加えて、成功するための条件としては、一度始めたら、そうそう簡単にあきらめないことである。

少なくとも100名の内の10名は実行に移すだろうから、後は、粘り強く最後までやりきることが重要なのだ。

やり続けていれば、自然とライバルが脱落していく。

極端な話、あきらめない限り、最初のアイデアが形を変え、別の方向へ派生することもある。

それでも最初のアイデアはいつまでも活きている。

実は、アイデアだけの人は経営者の中でも意外と多い。

創業社長でも、アイデアコレクションのような人が多いことに驚く。

また、経営者の取り巻きにも多い。

中途半端な経営コンサルを名乗るような人の経営戦略や事業構想もアイデアのひとつと言えるが、役に立つところを見たことがない。

それは、実践経験から考えられたものではないからだろう。

誰かの実戦経験を第三者的に結果だけを捉えているのだから、ほとんど役に立たないのも当然だろう。
それにもかかわらず、厄介なことに、このような人たちは、本気で自分のアイデアやアドバイスが価値がある信じて疑わない。
それで報酬がもらえて当然という人もいる。

事業や商品開発、サービスの構築などは、実行することが何十倍も難しいのである。

仮に事業化、商品化に漕ぎ着けても、そもそも、売上があがり、利益を出し、事業として成功する保証などどこにもない。

実は、20代前半、仕事でのアイデアが出せなくて悩んでいたことがある。

どれだけ真剣に考えても、どれだけ時間を費やしても、まともなアイデアなど浮かばなかった。

ところが、自慢じゃないが、今は、毎日、幾らでも浮かんでくる。

理由は簡単だ。

責任ある立場で生活し、ビジネスを行っているからだ。

実際にアジアなどで活動していると、ほっておいても脳は刺激される。

ちょっと、糸口になるネタを持っていたり、人との会話で刺激されれば、そこから芋づる式に沸いて出てくる。

では、それを全部実行するのか?
答えはノーだ。

若い頃、会社を立ち上げたばかりの頃は、浮かんだアイデア全てを実行していた。

しかし、何年もビジネスをしていると、初めから成功しないと思えるものも少しは見えてくる。

だから、取捨選択ししている。

常に言い聞かせていることがある。

100のアイデアが浮かんだら1つぐらいは実行に移そうと。

本当は、2000に1つぐらいの感覚になるまで、アイデアを搾り出したい
とも思っている。

学生の皆さんも焦ることは全くない。

私も経験してきたように、アイデアは自然に浮かぶようになる。

アイデアなど、社会にもまれていればいつでも生み出せるようになる。

まずは、アイデアが浮かんだら実行することが大切だ。

実行することを繰り返す。

そうすれば、本物の実行力が徐々に身につく。

社会に入れば、反面教師となるアイデアオンリーの『頭でっかちビジネスパーソン』が驚くほどたくさんいる。

アイデアは実行を伴わないと活きてこない。

少なくとも、そのようなビジネスパーソンを見極める目だけは、養うようにしてもらいたい。

(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2008年10月6日に投稿したものです。)