私のプレイリスト ラッキーオールドサン
ラッキーオールドサン
2013年に結成された日本の男女2人組バンド。
バンド名は、篠原(Vo,Gt)がたまたま手に取った久保田麻琴(夕焼け楽団)のアルバムに収録されていた「ラッキー・オールド・サン」からつけられた。
2人の結婚を機に、現在は拠点を東京から四国に移して活動している。
篠原良彰(しのはらよしあき)
・ボーカル、ギターを担当
・1992年生まれ(30歳)
・高校から曲作りを始める
・囲碁が好き
・尊敬するアーティストは銀杏BOYZ、高田渡など
ナナ
・ボーカル、キーボードを担当
・好きな動物はヤギ
・嫌いな食べ物はタマネギ
・尊敬するアーティストは銀杏BOYZ、andymori、ユーミンなど
略歴
2013年夏、別々のバンド(篠原:「COPIES」、ナナ:「箔」)で活動していた2人が、東高円寺のライブハウス「UFO CLUB」で知り合う。
COPIESのボーカルがいなくなり、ピンチヒッターとして篠原がナナを誘う。ナナは篠原に誘われるまで人前で歌った経験がなく、篠原もナナの歌声を聴いたことはなかった。しかし、直感的に誘い歌ってもらった結果、ナナの歌声に大きな魅力を感じた篠原は、2人で新しい形の音楽を作ろうと決心する。ちょうどその頃、ナナも新しいことを始めたいと思っていたこともあり、同年冬、「ラッキーオールドサン」が結成される。バンド名は、篠原がたまたま手に取った久保田麻琴(夕焼け楽団)のアルバムに収録されていた 「ラッキー・オールド・サン」からつけられた。
1stフルアルバムを完成させた当時、彼らはまだ東京の大学生だった。大学卒業後、2人は一般企業に就職するも、僅か数ヶ月で退職。音楽で生きていくしかないと心に決める。
東京を拠点に、曲作りやライブ活動を続けた2人は、2019年2月15日に結婚したことを発表する。
結婚を機に、活動拠点を篠原の地元である四国へと移した彼らは、自宅に設置した簡易スタジオや旅先で曲を作り、全国へ音を届け続けている。
街の人
今泉力哉監督の映画『街の上』で流れていた『街の人』を聞いて、ラッキーオールドサンというバンドを知りました。
『街の上』鑑賞後、どうしても頭から離れない歌い出し(いつものー待ち合わせー)が気になりすぎて、すぐに「街の上 歌」で検索したことを憶えています。
今泉作品に出てくる俳優は、思わずこちらから働きかけたくなってしまうような不思議な魅力を持っている方が多く、『街の上』では、主役の若葉竜也と古川琴音が特にその“不思議と見る者を惹きつける”演技をしていました(この映画でまんまと2人のファンになってしまった...)。
ラッキーオールドサンの雰囲気は、そんな今泉映画の作風と見事に調和していました。与える音楽ではなく、“呼びかける”音楽というのでしょうか。
彼らの曲は、常に身近なものに寄り添っていて、誰ひとり取り残すことなく、安らかで素直な気持ちにさせてくれるのです。
海へと続く道
『海へと続く道』は、ラッキーオールドサンの1stミニアルバム『I’m so sorry, mom』に収録された一曲です。
『I’m so sorry, mom』をリリースした当時、彼らはまだ都内の大学生でした。それでも彼らが生み出したミニアルバムの完成度は驚くほど高く、ラッキーオールドサンというデュオは、必然的に出来上がった無二の音楽性をもって世に出ることとなります。
キャッチーなハーモニカの音から始まる『海へと続く道』は、とてもシンプルなメロディながら無条件で好きになってしまう名曲です。
個人的に、1stミニアルバム『海へと続く道』は___陳腐な言い回しですが___、ラッキーオールドサンの原点にして頂点だと思います。それくらい大好きで最高の作品です。
何も決まってない
ラッキーオールドサンの2人は、ともに作詞作曲を手がけています。
元々別々のバンドで活動していた彼らですが、それぞれの作る曲は既に「ラッキーオールドサン」の形になっていて、2人の音楽性は自然と調和していたと言います。
『何も決まってない』は、ナナが作った初めての曲です。マイペースで気の向くままに進んでいる様子が、等身大の言葉で伝わってきます。
よく、タイトルが付いていない絵画などに『無題』という便宜的な呼び名があてられますが、『無題』よりも『何も決まってない』の方が人間ぽくていいですよね。
「何も決まってない」。潔くて好感の持てる言葉です。
さよならスカイライン
『さよならスカイライン』は、アルバム『Belle Époque』に収録された1曲です。
「Belle Époque(ベルエポック)」は、日本語で“佳(よ)き時代”と訳すことができます。
ラッキーオールドサンにとってこのアルバムは、東京という場所で過ごした青春時代の終わりを感じさせるらしく、まさに佳き時代を彷彿とさせるような、ノスタルジックで、静かに力強い曲が詰め込まれているように思います。
新たな土地で生活することは、期待とともに大きな不安が付き纏うものです。ただ、先の分からないことへ無意味に頭を悩ませるよりも、この曲の歌詞のように、「なんとかなるさ」の気持ちでフフフと鼻唄を歌うくらいがちょうどいいのかもしれません。
ちなみにスカイラインとは日産の車のことで、個人的にこの曲を聴くと、高校時代の恩師が乗っていた水色のスカイラインを思い出し、私の冴えなくともかけがえの無い青春時代がフラッシュバックしてきます。まさしく、佳き時代でした...。懐かしい...。
旅するギター
ナナと篠原は2019年に結婚しています。それを機に、彼らは活動の拠点を東京から四国へと移しました。
アルバム『旅するギター』は、そんな2人が大きな転機を迎える只中で制作された作品です。
彼らにとって東京という街は青春そのものであり、そこを離れる決断はかなりの覚悟を伴うものだったと言います。
しかし、四国に移り住んだ今では、自宅に簡易スタジオを作って思いついたらギターが弾けるような環境を整え、また旅に出かけては2人で音楽を作ってと、限りなく等身大で素敵なバンド&夫婦生活を送っているようです。
田舎で気ままに音楽を作る夫婦デュオって、最高すぎません?
『旅するギター』はアルバムのタイトル曲になっており、彼らにしては珍しく挑戦的な歌詞でありながら、ラッキーオールドサンというバンドをよく表した曲になっています。
MVも、2人でひたすら旅を楽しむ姿が続くだけの幸せな映像になっていて、思わず微笑んでしまうとても素敵な作品です。
天国の古いアルバム
『天国の古いお家』は、最新アルバム『うすらい』に収録された曲の中で最も印象的だった曲です。
2021年から始まった47都道府県を回る全国ツアー「うすらいの旅」は、会場のブッキングからプロモーションまで全て2人だけで行うという、等身大を突き詰めたような企画でした。
記念すべきツアーファイナル東京公演へ足を運んだ私は、まず会場の“ライブハウスじゃない感”に驚かされます。
これは他の公演へ行った人たちも口を揃えて言っていたことなのですが、ラッキーオールドサンの2人が選んだ会場は、ライブハウスというよりも、BARや喫茶店といった趣の、知る人ぞ知る系ステージでした。
ドリンクも薬草カクテル(?)や台湾の聞いたことないお酒など、普段行くライブとは違うラインナップでとても面白かったです。
さて、全国ツアー「うすらいの旅」ですが、企画始動からラスト公演まで、実に2年もの歳月がかかりました。
それには、企画に関わる全てを2人で行ったことやコロナの影響(ツアー序盤で喧嘩したことも)がありますが、それでも2年かけて完結させてしまうのはすごい遂行力です。
そしてそんなに苦労した全国ツアーのファイナルなのに、いつも通り“ゆるゆるMC”だったのも、いかにも彼ららしくて安心しました(笑)。
***
これまで何度か登場したキーワード「等身大」は、ラッキーオールドサンの大きな特徴であり強みであると思います。
音楽作りの根底に「人」の哲学を据えているため、時代に流されず、いつ聴いても人の心を引き寄せるような名曲が生まれるのではないでしょうか。
とにかく、素朴で飾らない2人のマイペースなやり取りは、見ているだけで心が安らぐ、現代人の忘れがちな“等身大”を穏やかに体現しています。
ギターとともに世界を旅する夫婦デュオ「ラッキーオールドサン」。
どこまでも素敵な2人の活動を、これからも追い続けていこうと思います。