【現代短歌】Marlboro
食べさしのお皿を渡す直前のきみの目線が何より愛しい
ああごめん、今のことばは忘れてと言われた時からあなたは他人
下積みを耐えたからこそ今がある、言った親父は浮気をしました
賢くてセンスが良くて楽しくて...だけどわたしを愛してくれない
恋愛に向いていないと決めつける人間に向いていないだけの僕
かわいいと言われて怒っていたはずのわたしの顔は敗北寸前
今よりもかわいくなりたいと願う女子の気持ちで世界は成り立つ
過払いの愛もあなたを訴えてみれば戻ってくるのかしら?
カート・コヴァーン、あなたがかっこよすぎるからあいつを忘れられないじゃない
さみしさを売る春おんなと買うおとこ渋沢栄一の顔が哀しい
衝動で買ってしまった一冊の洋書を不思議な顔で眺める
ひと匙の人の心があるせいで苦しみ悶える悪魔のわたし
熱いのでお気をつけての親切を肉と一緒に呑み込んで火傷
地が消えて奈落に落ちる夢を見たベッドの上で蝶が舞ってる
くだらない表現ばかりが浮かぶ夜今のわたしは誰より孤独
「何食べたい?」「お肉とお米とパンケーキ」どうやら今夜は手こずりそうだ
助けてくれてありがとうところで一緒に死んでくれない?
五七五七七で動く健康な心の持ち主ですよあなたは
似合わないWinstonふかす君の目を想像して僕は、僕はため息
マルボロの匂いは僕にロマンスのかけらも思い出させてくれない