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私のプレイリスト 踊ってばかりの国

踊ってばかりの国(おどってばかりのくに)

2008年に神戸で結成された日本のバンド。
バンド名は「ハバナ・エキゾチカ」が発表した同名曲から命名。
メンバーの脱退と加入、活動休止を経て、現在は唯一のオリジナルメンバーである下津をフロントマンとした5人体制で活動を行っている。
左から大久保(Gt.)、坂本(Dr.)、下津(Vo,Gt)、谷山(Ba.)、丸山(Gt.)

下津光史(しもつこうじ)
・ギター、ボーカルを担当(2010年1月まではボーカル、ベースを担当)
・1989年6月15日生まれ(34歳)
・兵庫県尼崎市出身
・ソロでもアルバムを出している

谷山竜志(たにやまりゅうし)
・ベースを担当
・1988年3月21日生まれ(36歳)
・熊本県出身
・2013年4月加入

坂本タイキ(さかもとたいき)
・ドラムを担当
・1993年1月12日生まれ(31歳)
・北海道札幌市出身
・2015年11月11日加入
・THE★米騒動、中華一番にも在籍

丸山康太(まるやまこうた)
・ギターを担当
・1985年7月4日生まれ(39歳)
・2017年1月8日加入
・元ドレスコーズのメンバー

大久保仁(おおくぼじん)
・ギターを担当
・1997年生まれ(26歳)
・東京都出身
・2017年3月26日加入

略歴
 2008年、神戸にて『踊ってばかりの国』が結成される。うたと3本のギター、ベース、ドラムで構成された5人組のサイケデリックロックバンドとして、フルアルバムを含む数枚のアルバム発表、大型フェスへの出演、全国ツアー敢行と活動の幅を急速に広げるも、2012年にベースの柴田が脱退することで一時活動休止となる。翌年の春に神戸のフェスで活動を再開した後、バンド経験もベース経験もなかった谷口が正式に加入する。その後、ドラムの交替(佐藤↔︎坂本)やギター林(現カネコアヤノバンド)の脱退など、幾度のメンバーチェンジを経て、2017年に現在の5人体制となる。以降、積極的なライブ活動やフェスへの出演を通して、現在までに8枚のフルアルバムをリリース。FIVELATER(遅れた5人組)という自主レーベルを立ち上げる。





Boy

寝癖つき髪の毛 煙の中掻き分け
衛星の電波から 走ってきたあのビートは

 アルバム『君のために生きていくね』の一曲目に収録されている『Boy』は、どんな時でも優しく平等に、かつて少年時代に経験した宝物のような日々を120%の輝きで想起させてくれます。私はこの歌を聴いて、踊ってばかりの国の虜になってしまいました。

「脱げたサンダルこの恋よForeverあのチャンネルには映らないようにね」
 繊細かつ壮大なイントロが誘う美しき原風景。細部は違えど、酸いも甘いも味わった「あの頃」の思い出は誰の記憶にも残っているものです。永遠に続いてほしいと感じたあの少年時代の燦めきと儚さを表すような『Boy』のアウトロは音楽史上最高傑作といえます。
 2019年10月13日、SHIBUYA WWWにて行われた全感覚祭で踊ってばかりの国が演奏した『Boy』は伝説となりました。YouTubeに無料でアップロードされているこのライブ映像は、現代にも正しくロックンロールが継承されていることを証明する最高の映像です。




よだれの唄

死んでね 笑われると殺しそうだ
夢で出逢う時は可愛いのに君も

 2ndミニアルバム『グッバイ、ガールフレンド』は、踊ってばかりの国の主要テーマであろう“生と死”を痛々しいほど鮮烈に歌い上げています。『よだれの唄』は、当アルバムに収録された代表曲の一つです。

「消えてた人にはあなたが見えてた ほらね血だね」「忘れたのは僕の方 まさか本当にやるなんて」
 生物の宿命と人生の命題に音をもって真っ向からぶつかる踊ってばかりの国。初期の楽曲は今より荒削りな面が多い分、リリックと音により血腥さをまとっています。
 死生観を表現する方法はいくつもありますが、ロックンロールはその内もっとも素直な表現方法なのではないでしょうか。「死ぬ」「生きる」といった直接的な言葉が陳腐に聞こえることなく響くのは本物のロックンロールの中だけであり、踊ってばかりの国は先人から継承されたその役割を全力で果たしているように見えます。





SEBULBA

小さな島から来たって女が、僕の時間を止めてる
君が思うまま、君の想うまま
踊ればいい 歌えばいい SEBULBA

 『SEBULBA』(セブルバ)は、1stアルバムのタイトルにもなった初期の代表曲です。
 本アルバムは、前作『グッバイ、ガールフレンド』に較べ、「愛」を前面に出した曲が多く収録されているように感じます。

「キャラメルをください 気分が気分が」「君が生きた四半世紀の唄 嘘まみれ綺麗だね」
 『SEBULBA』は下津いわく、初めて書いたラブソングらしいです。スターウォーズ好きはぴくっと反応してしまいそうなこのセブルバという言葉は、どうやら奥さんのことを歌っているそう。
 ちなみに、下津光史は20歳の時に結婚しており、21歳の時には1人目の娘さんを授かっていました。世間的には早婚と言われるような時期に守るべきものを背負った下津の書く「愛」はどこまでも深く、特に私は『SEBULBA』のサビのフレーズが大好きです。





世界が見たい

アナタになって 世界を見てみたいよ
今のボクは 人を妬んでばかり

『世界が見たい』は、私が踊ってばかりの国で最も好きな同タイトルのアルバムに収録された一曲です。
 このアルバムに収録されている曲はみな、踊ってばかりの国というバンドの中のバランスが絶妙で、音楽に対してとことん真面目なミュージシャンの面と、少年のようにひたすらふざけ合うのが大好きな彼らの素の面がうまく混ぜ合わされているように感じます。

「音達を超えて声達を超えて」「マチュマチュピチュピチュやってる 長髪の悪魔」「交じりっ気のないアナタとアナタに」
 汚れた自分を卑下し、生まれ変わりたいという願望が切切と感じられる歌詞。誰もが抱く悩みや欲望を毒々しくも切実なリリックとバンドの遊び心が昇華させているように感じます。

 ちなみに、歌詞に長髪の悪魔という言葉がありますが、今の下津光史しか知らない人は、金髪ロン毛時代の彼を見たら驚くでしょう。誰ですか、と。昔もかっこいいのですが、私は圧倒的に短髪派です。というか、あの髪型は下津さんしか似合わない。





ほんとごめんね

明け方の街 薄れる意識の中
いつも浮かぶのは あなたの寝顔だけ

 『ほんとごめんね』は、アルバム『SONGS』に収録された一曲です。
 ギターの歪みが悲しくも美しいこの曲は、独白調のリリックで愛の懺悔を歌っています。

「今日の月が儚くて歯痒くて悲しいだけ」「待ってるから 当然の報いだね」
 愛する人を裏切ってしまった時の悲しみと遣る瀬なさは想像を絶するものです。ましてや謝っても取り返しがつかないような場合は、謝る側も謝られる側も深い悲しみで覆われてしまいます。
 下津は、愛の儚さと思い通りにならない難しさを、「ほんとごめんね」というシンプルな告白に詰め込みました。パートナーとの間にトラブルが発生した時は黙ってこの歌を聴きましょう。





ghost

Ghost 乗っ取って 僕を乗っ取って
身体はいらないから...

 『ghost』は、アルバム『光の中に』に収録された一曲です。
 踊ってばかりの国らしい、ゆらゆらと揺蕩う世界の狭間のような繊細なイントロと、口に出せば本当に乗っ取られてしまうのではないかと思えるほど力強いサビは、大切なものを忘れてしまうほど忙殺される私たちを、がっしりと救い上げてくれます。

「自負心自尊心両肩に乗せて 行ったり戻ったり忙しい人へ」「疲れたよ ホントに疲れたよ」
 楽曲自体もそうですが、下津光史は歌い姿も魅力的で、ライブに行くと、本当に音楽を愛していることがその姿勢からよく伝わり、心から元気をもらえます。
 よく、踊ってばかりの国のボーカルは頭がおかしいとか、狂ってると言う感想を耳にしますが、ある意味当たっていると思います。彼は頭のおかしくなるくらい音楽と人に真剣に向き合い、愛しているのです。





I was dead

この星にはたくさんの秘密がまだ隠されていて
僕たちはその半分も知らない

 『I was dead』は、アルバム『moana』に収録された一曲です。
 ロックバンドらしいタイトルが冠されたこの曲は、語り手がアコギで人類の物語を説いているように聞こえます。

「隣の誰かをあなたがただただ守り抜けるように」「人を殺す為に武器があるように 人を救う為に唄はあります」
 退廃的な匂いのするこの曲ですが、同時に音楽の希望に満ち溢れていると感じます。
 ライブで観客一人一人に語りかけるように唄う下津光史の姿を見ると、本当に救われたような気持ちになるのです。





         ***

 踊ってばかりの国というバンドは、何もかもを無条件に許してしまう現代において、真実の愛をもって真剣に怒ってくれる貴重な存在です。
 このバンドだけはロックンロールの役割を見失うことなく輝き続けてくれる。そう信じることができるからこそ、ファンは心から音楽に熱狂できるのだと思います。




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