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私のプレイリスト リーガルリリー

リーガルリリー

2014年に結成されたスリーピースガールズバンド。
2015年に行われた「未確認フェスティバル2015」で準グランプリを獲得。
バンド名の「リーガルリリー」は、辞書を引いて見つけた花の名前にちなんでたかはしが命名した。


左からゆきやま(Dr.)、たかはしほのか(Vo./Gt.)、海(Ba.)



たかはしほのか

・1997年12月10日生まれ(26歳)
・東京都出身
・ボーカルとギターを担当
・絵本と編み物が好き
・サンドイッチとコーヒーも好き

ゆきやま

・1997年10月24日生まれ(26歳)
・東京都出身
・ドラムを担当
・絵を描くのが好き
・踊ることも好き

海(うみ)

・1998年7月2日生まれ(25歳)
・東京都出身
・ベースを担当
・小説が好き
・食べることも好き


略歴

 「女の子とバンドを組みたい」と思っていたたかはしが、高校時代に対バンで出会ったドラムのゆきやまとリーガルリリーを結成する。

 バンド初期はベースに白石はるかを据えて活動を続け、カナダでの海外公演も成功させた。

 当時はメンバー全員が高校生であり、学業との兼ね合いもあって、サポートメンバーを迎えてのライブ活動を行なっていた。
 サポートメンバーには現「羊文学」のドラムを務めるフクダヒロアも参加しており、その頃から黒髪ロングであったフクダに、女の子と勘違いして声をかけたというたかはしのエピソードがある。

 2017年にベースの白石はるかが体調不良を理由に活動休止、脱退を発表する。リーガルリリーはたかはしとゆきやまの二人となるが、サポートメンバーとともに活動を続ける。
 なお、白石は「メレ」というバンドで現在も音楽活動を続けている。

 2018年、当時大学生であった海は、リーガルリリーの世界観に惚れ込み、公式ホームページから逆オファーをかけて自らを売り込む。数ヶ月のサポート期間を経て、2019年に正式メンバーとして加入する。

 再び3人体制となったリーガルリリーは、海外も含めた勢力的なライブツアーを行い、ますます活動の幅を広げている。





リッケンバッカー

 初めてリーガルリリーと出会ったのは、友人の家で流れていた『リッケンバッカー』を聴いた時でした。

リッケンバッカーが歌う
リッケンバッカーが響く
リッケンバッカーも泣く
音楽も人を殺す
____
ニセモノのロックンロールさ
ぼくだけのロックンロールさ


 リッケンバッカーとは、ギターを作るメーカーの名前です。音楽に救われたと語るたかはしほのかが、あえて音楽の残酷さを歌い上げる力強さに、大きな衝撃を受けました。

 初期の曲であるリッケンバッカーのMVでベースを弾くのは白石はるかです。たかはしほのかはこの頃から裸足スタイルでした。

 ちなみに「ASIAN KUNG-FU GENERATION」の『ムスタング』もギターのことで、この曲はリーガルリリーによってカバーされています。


          *

 一瞬のうちにリーガルリリーにハマった私は、曲を聴きまくります。その頃はアルバムとEPをひとつずつ出しているだけでしたが、独特の歌詞と世界観の基盤は、すでに完成されていました。

 たかはしほのかの歌詞には現実に即した描写が少なく、誰も見たことのない絵本のような世界を、儚くも力強いリリカルな言葉で表現しようとしている様子が伝わってきます。
 居場所を求める言葉たちは、切れば鮮血が迸るような激しい生命力を持っているようです。

 どことなく、ナチスから逃れるため外界との接触を絶ったアンネ・フランクの手紙のような趣を感じます。
 自分の目に映る光景と脳内の全く違う光景が混ざり合って、1つの生命を生み出すような感覚です。



魔女

1人で描いた黒紙にこれから先を見据えた
僕の嫌いな人間は全部全部壊したいよ
そんなのあっという間さ 一瞬にして終わるさ
そんなこともできやしない僕は 弱虫さ


 『魔女』は、「未確認フェスティバル2015」でリーガルリリーが披露したオリジナル曲です。
 あどけない女子高生が放つばちばちのロックンロールと、誰も聞いたことのない強烈な歌詞に、会場は衝撃を受けました。

 後にこの曲は、玉城ティナがヒロインを務めた『惡の華』の挿入歌に使われます。『魔女』がかかる教室でのあのシーンは、思わず鳥肌が立ってしまいました。

 たかはしほのかは学生時代、弦楽合奏部に所属していましたが、あまりうまくいかず、すぐに辞めてしまいまいました。さらに、学校生活にも馴染めないと感じ始め、いじめも経験します。
 そんな彼女のバックグラウンドを知ると、初期の曲からは特に、たかはしが音楽に救いを求める叫びや呻きを強く感じます。比喩的にではなく、文字通り死ぬほど思いの込められた曲だからこそ、聴くものの心を揺り動かすのでしょう。





トランジスタラジオ

愛をちょうだい、
愛をちょうだいよ。
そっちじゃないよ。


 『トランジスタラジオ』も初期の曲で、MVでは、血を流して倒れながら「愛をちょうだいよ」と歌う姿が印象的です。

 たかはしほのかの詩作は、外で見る風景をヒントにすることもあります。

 2019年にリリースされた『GOLD TRAIN』は、地元多摩川の河川敷で川面に映る電車の明かりが宝石箱に見えたことから作られた曲です。
 「ぼくは夜空の先で魚釣り 水面には光行くダンスショー 目を開けて眠るきみの顔に見えました。」という『トランジスタラジオ』の歌詞も、どことなく夜の河川敷を連想させます。

 この曲が流れるとライブ会場はすごい盛り上がりを見せます。カナダのライブでも、かなり激しめのモッシュが起こったらしいです。






せかいのおわり

サーチライトが夜の街の光を吸い込むので
街中の人々は目が悪いの。
移住する人たちの行列 月へ向かった。


 『せかいのおわり』は、終末が近づき人々が月へ逃げていく中、六畳一間の部屋に一人ぽつねんと残った主人公を歌う、まさに絵本のような曲です。
 
 曲名の『せかいのおわり』は、「SEKAI NO OWARI」と同じで、リーガルリリーのリスペクトが込められています。
 彼女たちはアーティストである一方、他のアーティストたちの大ファンであり、セカオワもそのグループのひとつです。

 彼女たちの公式SNSアカウントは、多くのアーティストをフォローしています。ちなみに、たかはしほのかのTwitter公式アカウントは、中学生の時から続けているものらしいです。

 なお、リーガルリリーは後に、セカオワの『天使と悪魔』をカバーしています。




1997

降り立った東京 1997年の12月
始まった東京 1997年の12月
私は私の世界の実験台 唯一許された人


 海のベースが印象的な『1997』。たかはしほのかの誕生月である1997年12月を歌詞に入れ、自らを勇気づけるような一曲です。

 「私は私の世界の実験台」は、シンプルですがとても力強く、救われる人も多い言葉だと思います。

 『1997』は、曲の終盤に、詩を朗読するような箇所があります。
 たかはしほのかの声は詩を届けるのにとても適していて、聞いている人の頭には驚くほど正確に言葉が入ってきます。

 ちなみに『1997』の他にも、『bedtime story』、『蛍狩り』に朗読箇所があります。



教室のドアの向こう

教室を出たら、あなたの笑顔がすぐそばに感じた。
今日は一緒に帰る日だ。
中央線は今日も人が死んでしまったね。
あなたはどこにも行かないでね。


 『教室のドアの向こう』は、学生時代に書いていた自らの詩を、大人になったたかはしがリメイクしてできた曲です。

 たかはしほのかの歌詞ではほとんどの二人称を「きみ」と呼んでいるのですが、この曲では数少ない「あなた」となっています。

 普通、「きみ」を含む歌詞は恋愛の色が濃く出てくるものですが、彼女の詩には不思議とそのような甘い印象がなく、特定の一人ではない象徴的な存在に向けて語っているような雰囲気があります。
 しかし、二人称が「あなた」である曲では、同じく濃い恋愛色はないものの、たかはしの「ほのかな恋心」を感じる気がします。
 「あなた」という響きが彼女のファンシーなキャラクターと相まって、純粋な女の子の気持ちを想起させるのでしょうか。もしくは、彼女が実際に恋をしているときに書かれた詩であることを示しているのかもしれません。





ノーワー

ノーワーノーワーのごり押しで
対立 対立が始まって
不和 不和の始まりで
あまりに あまりに あまりに


 たかはしほのかの歌詞には、戦争に関する言葉が度々登場します。『ジョニー』、『overtune』、『そらめカナ』、『9mmの花』、『ノーワー』、『明日戦争が起きるなら』にはいずれも、戦争や死を連想させる言葉があります。

 彼女の地元である立川のとなりに福生の米軍基地があったことで、幼いころから戦争に敏感な感性が形作られていたのかもしれません。『overtune』には、「アメリカの基地、チャリで行けるね。生きた福生は、最高にロックだった」という歌詞が登場します。

 ウクライナに対してロシアが行った侵略戦争は、彼女に大きなショックを与えました。昨年リリースされたEPである『恋と戦争』からは、少なからぬその影響が伝わってきます。



     

         ***

 リーガルリリーの魅力は、たかはしほのかが作り出す言葉の世界観と、彼女たちのギャップにあると思います。

 リーガルリリーの3人は、いかにも女の子らしい、ゆるく楽しげな雰囲気を持っています。そのせいか、ライブ会場には年配のお客さんが多い気がします。彼女たちのどこか頼りなげなほんわかした空気が、娘を応援しているような親心を呼び起こすのでしょうか。

 アップルミュージック上では、リーガルリリーの音楽ジャンルはロックに分類されています。確かに、彼女たちの演奏はとても激しく、普段の長閑な様子からは想像できません。口角を上げる独特の歌い方と激しいギターで高音の叫びを届かせるたかはしほのかと、全身を使って強く叩く姿が見ていて気持ちいいドラムのゆきやまに、髪を振り回して文学的かつ情動的に低音を奏でるベースの海。彼女たちのギャップにやられてファンになった方は多いはずです。

 たかはしほのかが「yonige」の牛丸ありさと対談する動画がこちら。彼女の惹き込まれるようなふんわりとした喋り方がよく分かると思います。



60W

 2月1日に、新曲『60W(ろくじゅうわっと)』がリリースされました。

 前アルバム『Cとし生けるもの』のテーマであった「光」について、ツアーやいくつかの新しい経験を踏まえ、改めて感じたことを言葉にしたようなこの曲。
 一人一人が持つ小さな光に焦点を当てていて、アイデンティティって何なんだろうなと、アスファルトに咲く花から銀河まで視点を変えて考えさせられます。


 とにかく、ライブでめちゃくちゃ盛り上がりそうな曲です。




 デビュー当時から多くの人の心を救い続けているリーガルリリーの活躍に、今後も注目していきたいと思います。




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