保育園、園長先生のお仕事 ~「保育園の実地検査 急減」のニュースから考える~
令和4年11月8日の朝刊記事
保育園の現場確認「すべては難しい」 安全や質の確保へ試行錯誤
記事の概要
本来、行政は保育施設に対し、1年に1回以上の施設監査が義務付けられています。ただし、コロナ禍の影響もあり、書面での監査で終了している場合が多く見られます。
私たちの施設も書面で行政監査が終了しています。
その点について、「保育の質の確保は大丈夫なのか」という趣旨です。
保育園側の姿勢が問われている
結局、「保育園が世の中から信頼されていない」その一言に尽きます。
保育園が、真に世の中から信頼されていたら、「行政監査が書面で終了しても、保育の質は確保されているから、問題ないでしょ?」となるはずです。
むしろ、「行政がそんなことばかりにコストをかけるから、財政の負担が酷くなるのではないか」という批判さえ出ても、本来は良いはずです。
そのはずなのに、保育園側の不祥事が続いています。
昨年の福岡、今年の静岡の件は、結果として極端な結末になってしまった、非常に悲しい事件ですが、その原因にあたる部分は、実はあちこちの保育施設等で頻出しているミスです。
そのほとんどは、大きな影響を与えることがないため、報道にも出ないに過ぎません。
そのため、私たち、保育園の職員は、大切な子どもたちの命をお預かりしているという事実を再認識し、襟を正して、世の信頼を回復させる努力が必要です。
また、大切な公的資金(税金)を主として運営していることも考えると、子どもの処遇だけでなく、各種コンプライアンスの向上も当然、必要な事項に当たります。
保育園側の事情
では、なぜこのように「不祥事」が続くのか。
一つには業務の複雑化、増加があげられます。
もう一つは、頻繁に指摘されていますが、人手不足です。
保育士は、0歳児3人に一人の配置です。
「一人で保育できる限界が3人」と理解されると、やや異なります。
「0歳児が3人集まると、ようやく保育士一人分の給与が支給される」が正解です。
では、0歳児が2人だけだったら?
他の保育年齢に割り当てられた職員が一緒になって保育に当たる、という給与上の計算になります。
また、「0歳児」には別の「落とし穴」があります。
保育園で、〇〇歳児という言い方をする場合、その時点での年齢を指しません。毎年度、4月1日時点での年齢で1年間、固定です。
7歳の誕生日を迎えたから、年度途中で小学1年生が、2年生のクラスに進級するわけではない、と考えていただければ、分かり良いかもしれません。
小学校の学年へ、無理に例えるとすると、、、
5歳児・・・小学0年生
4歳児・・・小学ー1年生
3歳児・・・小学ー2年生
2歳児・・・小学ー3年生
1歳児・・・小学ー4年生
0歳児・・・小学ー5年生
となります。
かえって分かりづらくなりますか??
ここで、「0歳児」の「落とし穴」ですが、実は、0歳児のみ2学年を指します。「小学ー5年生」と「小学ー6年生」、つまり、ー1歳児です。
「マイナス1歳児?」不思議に思われるかもしれません。
4月1日時点で、まだ生まれていないお子さんが年度途中で入園される場合に、0歳児として入園されます。
「0歳児クラス」の年度末は、極端な話、2か月の赤ちゃんから、間もなく2歳の誕生日を迎えようとする乳児までが混在した世界です。
そのクラスに対し、配置される大人(保育士)は、3対1です。
どれほど大変か、ご理解ただけるでしょうか。
「保育園側が負担して、給与を出せばよいのではないか」と考えられるかもしれません。
保育園は営利事業ではありません。非営利です。
不要な負担を保護者に求めてはいけない、と定められています。
お金を別途儲ける手段がないのです。
また、コンプライアンス関係も膨大な業務負担になっています。
例えば、名古屋市の保育園に関する施設監査事前調書ですが、名古屋市HPにて公開されています。
保育以外の書類関係が如何に多いか、ご理解いただけるかと思います。
出来ることからコツコツと
出来ない理由を探し始めたら、進化が止まります。
出来ることから、一つずつ、進めなければいけません。
私たちの法人では、施設監査の事前調書、自己チェック形式となっていますが、基本的に「疑われている」という姿勢で取り組み、正しく行っていることを示す確認資料をそれぞれ提示できるよう、整備を進めています。
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