八ヶ岳エンデュランス・ライド大会(秋季JAPAN CUP)2024年を見学してきた記録と感想
この記事の内容
2024年11月2日@山梨県馬術競技場
八ヶ岳エンデュランス・ライド大会(秋季JAPAN CUP)にて
レースで重要な役割を果たしているクルーの仕事を中心に見学してきたので、メモを作った
当日の天候:本降りの雨で、時に強く降る悪天候 風が弱いため雨が止むと霧が出る状況
この天候は、八ヶ岳エンデュランスライド競技会史上最も過酷な状況だったようだ
昨晩、長野県富士見台のペンションに宿泊したが、夜中から強まった雨は今朝6時になっても収まる気配がない。これは熱帯低気圧化した季節外れの台風の影響らしい。この日の東海道新幹線も集中豪雨で一時運休したという。雨具を持たないと、ほんの短時間でもびしょ濡れになるおそれがある。かなり厳いコンディションだが、大会は決行。
昨日、外乗でコースの一部を走ってきたが、この雨だと走路はかなり泥濘んでいると思った。
0645 ペンション
出場する選手たちはそろそろ山梨県馬術競技場に集合し始めている頃だろう。
早々に朝食を済ませ、出発することにした。
0730 山梨県馬術競技場
山梨県馬術競技場駐車場に到着。雨は強いが傘は使用できない(馬を驚かせる可能性がある)ので雨具のカッパを着込んで、厩舎を目指す。
厩舎内のカナディアンキャンプ八ヶ岳チームの区画を見つけた。通路を挟んで向かい側はアラブ馬でエンデュランスに力を入れているサニーフィールド乗馬クラブさんのチームのエリアだった。
クラブのスタッフさんと昨日カナキャンで準備をしていた選手とクルーの方達に挨拶する。
皆さんは殆ど顔見知りのようだ。
0800 インスペクションエリア
インスペクション( 獣医検査)が始まるということで、厩舎より上の方にある障害競技練習場に向かう。
赤いロゴでVETと書かれた白いベストを着用した獣医による検査が行われる。その結果はVETカードに記入される。もし怪我や体調に問題が見つかれば、この段階で失格となる場合もある。
この獣医検査には馬の健康状態を確認するためのバイタル測定などの検査の他に、往復40メートルの歩様検査が組み込まれている。歩様の一貫性や、前脚への負担を減らすために頭を上下する動き(点頭運動)が出ていないかのチェックも含まれる。安定しない速歩は跛行の危険性を示唆しているので、専門の獣医のチェックは大切なのだ。
獣医検査の詳細については、改めてノートを作成しようと思う。
0830 リカバリーエリア
雨が一層強くなった。獣医検査エリアがある障害競技練習場の北側の埒沿いのリカバリーエリアへテントを運び、設営するのをお手伝いした。ここへは、クルーに引率された馬がピットインしてくるのだ。
このエリアでは馬と同じゼッケンナンバーをつけたクルーだけがその馬の世話をすることができる( 違うゼッケンのクルーが馬に触れてはならない)という規則なのだ。
リカバリーエリアに入ってくる馬が重なるとここは忙しくなる。
1030 スタートエリア付近
40キロ群のスタートをスタートエリア近くで見学。スタートの邪魔にならないように、このエリアの植え込みに隠れて見学した。
スタート直後に馬が暴れてしまい、コースへ誘導できない馬がいた。乗ったまま宥めようとするのだがどうしても制御できず、その選手は一旦下馬したが、なかなか馬の興奮はおさまらなかった。結局その選手は馬を引いて徒歩で出発して行った。この馬の騎手はベテランの選手のようだったが、やはりスタート時の興奮状態の馬の制御は難しい場合があるのだろうか。
馬は慣れない環境下では怯えたり興奮しやすくなるので、このような状況に対処する能力も必要がありそうだ。
1150 厩舎内
今年から、走行中の馬の位置をGPSを用いてチェックできるアプリが導入された。コース上のどこにどの馬がいるのかがわかるようになった。この取り組みは、落馬や放馬の事故に対する対策の一環として始まったと聞いた。このアプリを使うと、その時点での順位や所要時間なども確認できるようだ。
各チームのクルーはこれをみている。
事故防止や事故の対策にも役立ちそうだが、選手のチェックポイント(CP )への到着のタイミングが分かるなどクルーの仕事の効率化にも効果がありそうだ。
他の地域での競技でも使用されているのか気になった。
チーム監督へ選手の携帯からコールが入り、「鐙革が切れて、鉄蹄が脱落したので片足の鐙でCPへ向かっている。鐙革を取り替えたい。現在は片側の鐙が外れた状態で乗っている」とのことだった。
スタッフがCPの手前のコースの傍に替えの鞍を置いておき選手が自分で交換する事を選ぶのか、CPまで片足鐙で騎乗を続けて辿り着き、クルーに交換してもらうか、という判断を求められている場面だった。
「クラブに連絡し、クラブのスタッフがクルーポイントよりも手前のコース上に鞍を置いて対応すること」が決まったのだが、その後、再度選手からのコールがあり、「鐙革が切れたわけではなく、留め具が外れて鐙が脱落しただけだったので、レースを続ける」と報告があった。
海外のエンデュランス競技者のYouTubeを見ていたら、競技の際の持ち物を紹介しているものがあった。その中には、競技者本人のための痛み止めの薬とか、栄養ドリンクなどまであったが、馬具の破損に備えた補修用のテープなども含まれていた。
長丁場の競技で完走するためには、いろいろなアクシデントに自力で対応できる能力を備えていないといけないようだ。
また、別の選手からは「右前脚の蹄鉄が外れたので、獣医検査の前に装着したいので準備をしていただきたい」と知らせが入った。監督と一緒に厩舎から蹄鉄セットを運び、獣医検査エリアで待機することになった。
このようなアクシデントに選手とクルーが一体となって対処するので、完走に向けてレース中のクルーの働きも大切だということを実感した。
1200 インスペクションエリア
雨が止むと一時的に霧が濃くなってくる。時間差で短い距離の馬群がゴールしてきたり、次の周回のための獣医検査を受ける馬たちが入ってくる。
霧で獣医検査のテントも霞んで見える。
馬と選手たちは下にある厩舎で鞍を外し、このエリアに上がってくる。インスペクションエリアのクルーは入場してくる予定の馬のナンバーをアプリで確認し、その番号のゼッケンに取り替えて馬場に入り待機している。
馬が到着するとクルーは馬場の中に入り、脚の腱に水をかけてクーリングしたり、馬の泥を拭いたり、心拍数を測定したりする。心拍数が規定値以内に下がったことを確認すると、獣医検査エリアに引率していき、検査を受けることになる。ここでの作業はクルーが選手に代わって行うようだ。
何頭かのケアと獣医検査が終わった頃、厩舎のカナキャンチームの本部に落鉄の連絡があった馬が入ってきた。馬のケアを行うクルーが作業を進める中、監督が蹄鉄の打ち直しを始める。
並行して行われた馬のケアは終わっていて、心拍数も回復してきているので、装鉄が完了するとすぐにVETに向かっていった。
ここで獣医検査に馬を連れて行けるのは選手かその他には1名のクルーだけという規則になっていた。
殆どの選手は、クルーに引率と歩様検査を任せていた。
今回は獣医検査とスタートの見学だけの予定で正式にクルーとして参加したわけではなかったので、途中までで帰途につくことにした。しかし、クルーワークの重要性を認識できたことは良かった。次回までにクルー講習会を受講し、クルーとして参加できるように勉強をしようと思う。
また、選手はレース中のアクシデントについては、クルーポイント以外では自力で対処することが求められるため(クルーポイント以外で援助を受ければ失格となる)、応急処置ができる装備を準備してレースに臨む必要性を実感した。
最後に、選手とクルーの皆様、そしてお馬たちお疲れ様でした!
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