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🎬 「私、失敗しないので」 ドクターXを見て医者が考えたこと
外科系ドクターのじーちゃんです。
先日、劇場版ドクターX Final を観てきました。脚本が良かったのか、ドクターX 大門未知子ファンの私にとっては見応えがある作品でした。感想は⬇︎にあります。
さて、今回は、大門未知子先生の決めセリフ「私失敗しないので」について医師の立場で書いてみたいと思います。
あ、その前にあの決め台詞、私も言ってみたいです。note上ならいいかな…。
「私、失敗しないので!絶対、大丈夫!」😊
はあ〜スッキリしたー♪
臨床の現場では「先生、私、手術が怖くて仕方ないんです。先生は失敗しませんよね?絶対に」と、問われても
「大丈夫、私失敗しません。絶対に」と答えられる外科医はいません。
もしそう答える医者が居たら、
詐欺師か、サイコパス、
あとは頭がお花畑の先生かな?
と、思います。
なぜなら外科手術に「絶対安全」とか「絶対に失敗しない」はないからです。
真面目な医者ほど、腕に自信があってもこの言葉を患者さんに向かって言えないんです。
外科手術に絶対安全はない?
手術を含めた外科的な処置全般に、絶対安全はありません。
「絶対安全がないってやばいじゃん?」と言う声が聞こえてきますね🤭
もちろん、外科医は常に完璧な手術を目指しています。そのために、スタッフを含めたチームのレベル向上にも努めています。
外科手術は「患者を今よりベターな状況に導くための治療を目的とした外傷、言い換えれば、行う行為そのものが身体を傷つける傷害行為」の意味をもつので、いわゆる失敗は許さないです。
一般の方が、他人に傷害を加えたら、訴えられて罪に問われます。しかし、医師は治療目的の範囲ならば傷害を加えても、罪に問われることはありません。当たり前ですがもし、ある医者が治療を目的にしない傷害を他人に加えたら、罪に問われます。
また、治療を目的とした行為であっても、それを医者でない者(無資格者)が行えば、医師法違反で罪に問われますし、それが身体を傷つける行為であれば、立派な傷害罪が成立します。
外科医は患者の身体を傷つけてでも患者を治せると思えるから、手術に挑戦するのです。
外科医の二つの免罪符
医師は原則としてその行為が「治療を目的とした」ものであれば結果がどうであろうと罪に問われない、という免罪符を持っています。
さらに、外科医は治療目的であれば、患者の身体に傷をつけても構わない、という免罪符も持っています。
しかし、この二つの免罪符も、原則としては「患者の同意を得て」いなければ無効です。
現代の医療では、医師が説明をし、「患者側が説明を理解した上で、同意した」という証拠を残していなければなりません。
治療計画書や手術の同意書にサインしてもらうのは、治療に同意しましたと言う記録を残しておくためなんです。
少し外れましたが、治療を目的とした医療行為であっても、「効果が得られない」とか、「逆に悪化」する可能性があります。これは、治療の結果としては失敗になりますが、罪に問われることはありません。
それは、医師が事前に患者さんに対して「治療が成功しない場合もある」と説明した上で、これに同意を得てから手術に臨むからです。
この「同意を得たという免罪符」を手放してしまったら、外科医は手術治療に取り組むことができません。なぜなら、手術が成功しても治療効果が現れずに結果的には治療としては失敗に陥る可能性があるからです。
だから、外科医は「絶対に失敗はありません」とは言いません。いや、「失敗はあり得ません」とも言えません。
言えないんですよね。
「私失敗しないので」と言えないのは、手術が下手だからではなく、失敗する可能性や術中のトラブルが発生する可能性も含めて、患者さんに事前に納得しておいてもらう必要があるからなんです。
「私失敗しないので」は格好いいけどドラマの世界だけのセリフです。
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