彼女からのお知らせ 作:Erin

今日は彼女とお家デート。
俺の彼女、マリアのキッチンは日本に売ってないであろうシリアルやカラフルなお菓子が並べられていた。おそらく実家からのものだろう。
いつもはその溜まりに溜まった甘いお菓子たちを俺に押し付けているのに、今日はいつもよりお菓子が倍あるのに、全然押し付けてこない。
むしろあの明るいマリアが大人しいなんて。
おかしい。おかしすぎる。
そう思ってマリアをじーっと見つめると、その視線に気づいたのか、気まづそうに俺を見る。

「マリア、大丈夫か? 具合でも悪いのか?」

「うん、そうみたい。ちょっとトイレ行ってくる」

お腹を抑えてマリアは立ち上がった。その手に何か体温計のようなものを持っていた。熱でも出たのか? それなら俺が責任持って看病しないといけない。そしてあわよくば……。

「よし」

ちょっとした下心を持ちながらも、お粥が作れないかと冷蔵庫を開ける。運良く材料は用意されていたが、甘いものが出来上がりそうなのは何故だ。とりあえず材料を並べてみる。

「三太……」

すると、いつの間にか後ろにいたマリアが、青ざめているような、でも嬉しそうな顔をしている。

「寝とけ。お粥作ってやるから」

「熱じゃないの」

マリアが俺の袖をキュッと引っ張る。なんだその仕草は! 俺の理性が保たんぞ!
ついに涙目になったマリア。

「赤ちゃんが……できたみたい」

「……えっ」

頭の中が真っ白になる。だって、だって……

「俺まだお前に手出してねえぞ!?」

「キスしたじゃない!」

「キスで赤ちゃんができるかよ!」

声を張り切りすぎたせいでお互い息切れになる。

「キスはただの冗談よ。でも覚えてないの?」

「何を?」

「前、飲み会で酔っちゃって、帰った後勢いで……」

俺は記憶を辿ってみるが、飲み会に行ったことすら思い出せなかった。

「しょ、証拠は!?」

とある名探偵アニメの犯人のセリフのようなことを言
うと、マリアは持っていた体温計のようなものを突き出した。

「みて、ここ。赤い線があるってことは、妊娠してるって証拠なの」

「ほ……ほんまや……」

あまりの驚きに、ストンと腰を抜かしてしまう。
ああ、親にどう言えばいいのだろう……。
まだ大学生なのに、結婚はまだ早すぎる。
ぐるぐると悩んでいると、

「くすっ、あはは!」

頭上からマリアの高笑いが。

「三太信じすぎ!」

マリアは俺の隣でしゃがみ、スマホのカレンダーを開く。

「今日は、何月何日ですか?」

こんな時だけど、マリアの無邪気な笑顔が可愛い。
カレンダーを覗くと……

「4月1日……エイプリルフール!?」

「せいかーい!」

「じゃ、じゃあ、嘘なのか!?」

「そうだよ」

一気に重かった体が軽くなり、悩みもどこかへ飛んでいってしまった。

「もー!」

俺はとすんとマリアの肩に頭を置いた。
マリアが優しく抱きしめてくれる。

「わかってるよ、三太はタイミングを計らってるんでしょ。私、待ってるから」

「うん……ありがとう」

お互いの距離が、より深くなった日だった。