ぺんだんと 第二章 作:Erin

「ちゃんと成績上げなさいよ!」

「はいはい、わかってるって。行ってきまーす!」

 今日から三日間、中学校初めての期末テストが始まる。このテストが終われば、短縮授業。

早めに帰れるし、夏休みが近づいてくる。やっといじめから解放されると思うと、うれしくなってきた。

「はじめてください」

珍しく、今日は誰も私に手を出してない。テストだからそういうことしている場合じゃないしね。

(余裕余裕~)

すらすらと問題が解けた。このとき、ちゃんと勉強していてよかったって思う。

まあでも、スマホがほしかっただけなのかもしれないけど。

三日後

「……はい。鉛筆を置いてくださーい」

「やった~おわった~!」

期末テストからやっと解放された。あいかわらず、みんなはまだ私に冷たい。

家の玄関の前、久しぶりに拓斗とあった。

「ひ、久しぶり」

「おお……」

「は、話が、あるの」

あたしは拓斗を家に入らせ、別れ話を切り出すことにした。

「あのさ、由梨って知ってる?」

「ああ、うん。それでさ」

「なに?」

次は拓斗が話し始めた。しかも私の話を聞こうとせず。

「俺たち、家が近いって言っても、めったに会うことないし学校も違うし、だから……その……別れよう」

私が別れ話を切り出そうとしたのに、結局先に言われるのか。よくわからない悔しい気持ちが湧き上がってキツ気味に言ってやった。

「私も別れるつもりだったから別にいいんだけど、理由は違うでしょ」

「えっ」

拓斗がビクッと体を揺らす。やっぱりね。

「好きなんでしょ、由梨のこと。私が由梨の名前だした瞬間顔赤くなったし、私の話はまだ終わってないのにそれを遮ったから、なんとなく分かっちゃった」

これを女の勘って言うのかな、なんつって。

でも、明らかに図星だということはわかった。自分の顔を手で覆って照れているから。

なんだろう、逆に応援したくなってきた。

「じゃあ、これからはただの幼馴染ってことで」

拓斗の前に手を出す。

「ああ」

拓斗も手を出し、お互いに握手をした。

拓斗と別れ、自分の部屋の明かりをつけた。
ごろんとベッドに寝転がり、今の自分の気持ちを確認する。

拓斗と別れてから、水で綺麗に洗い流したようにスッキリした気持ちになった。

重い荷物が取れたような……。

次の日、朝起きたら目が少し腫れていた。

朝ごはんを食べに下へ降りるとお母さんが朝ごはんの仕度をしていた。

「あら、目がちょっと腫れてない? 昨日泣いたの?」

「え、泣いてないはず……」

でも起きたとき枕が濡れてたような……。

もしかしたら心の奥底では悲しんでたのかな。

「それより早く食べなさい、あと三分で遅刻するわよ」

「嘘でしょ !? 行ってきます!」

あたしは大慌てで家を飛び出した。

この後、あんな人にぶつかることなんて知らずに——。