「一万円選書」当選物語:#4『チーム』
私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。今までのnoteはマガジンにまとめていますのでよろしければどうぞ。
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4冊目は堂場俊一著『チーム』。テーマはタイトルの通り、『チーム』について。文庫本の紹介文を引用します。
箱根駅伝出場を逃した大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツと言われる駅伝で、いわば"敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。
超インドア派かつ、ひとりの時間がすきな私にとって、チームスポーツ、特に駅伝はこの本を読むまで、とても遠い世界の話でした。ところが。読み進めるうちに、この小説に出てくるひとりひとり、そして出来上がったチームの迷いや葛藤がとてもまるで自分のことのように感じられるようになりました。
同じ大学のメンバーでずっと箱根を夢見てきたメンバーたちが、個々人のタイムがよかったからという理由で、まるで新しい顔ぶれでチームを組む。「このチームで勝ちたい」というメンバーもいれば、「今までのチームメンバーに申し訳ない」と参加をためらうメンバーも。はたまた「チームの結果はどうでもいいから自分が区間ベストを出すために、このチームに参加してやる」というメンバーも。
そして、自分が現役の時は叶わなかった箱根駅伝出場・優勝という夢をどうにかして託したい監督。キャプテンとして、各メンバーの希望をどこまで尊重するか、チームをどうまとめたらいいか、何が「正解」なのか四苦八苦する者。
いろんな人物の思惑が交錯する中、本番に向けて時間は過ぎていきます。そして迎える箱根駅伝。ランナーたちの息づかいや鼓動がリアルに感じられ、それを見守る監督や他のランナーたちの焦燥や緊張感がピリピリと伝わってくる。果たして、"敗者の寄せ集め"のチームはどんなゴールを迎えるのか…。
「チーム」はこの世界のいたるところにあります。例えば、家族、恋人、友人、学校のクラス、サークル、職場。より範囲を広げれば、住んでいる市町村や都道府県、国。「チーム」として自覚していなくても、何か共に時間を過ごすということは、ある意味「チーム」としての時間。それは決して自分の思い通りになることばかりではなく、だからこそストレスを感じたり、思いがけない楽しさや達成感を感じたり。
「チーム」とは何なのか?箱根駅伝関係者になりきって、きっと何かを感じられるそんな一冊です。