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本にまつわるエトセトラです。
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2019年8月の記事一覧

「一万円選書」当選物語:#3『昨夜のカレー、明日のパン』

 私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。今までのnoteはマガジンにまとめていますのでよろしければどうぞ。 ***   3冊目は木皿泉著『昨夜のカレー、明日のパン』。2014年、本屋大賞第2位。NHKでドラマ化もされています。ドラマの出演陣も豪華。仲里依紗、星野源、鹿賀丈史などなど。  ちなみに「木皿泉」というのは夫・和泉勉、妻・鹿年季子による夫婦脚本家の名前だそう。夫婦で何か一緒に作品を作るって、い

言葉の宝石がつまった絵本『誰も知らない世界のことわざ』

『翻訳できない世界のことば』という本を知っている人もいるかもしれない。詳しい紹介は以下の記事に譲るとして、この本には、世界中の様々なユニークかつ「そうそう!」と共感できるような言葉たちがきらきらと散りばめられている。 何十もある言葉の中には、日本語の「コモレビ(木漏れ日)」や「ツンドク(積ん読)」もある。どれも世界共通で存在している事象だけれど、それを単語として切り取るかどうかは各言語によるのだろう。 *** 今回紹介したいのは、同じ著者による『誰も知らない世界のことわ

「一万円選書」当選物語:#2 『あん』

 私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。  前回からは私が実際に選んでいただいた10冊の本をそれぞれ紹介しています。今までのnoteはマガジンにまとめていますのでよろしければどうぞ。  2冊目に紹介するのは、ドリアン助川著『あん』。  町の小さなどら焼き屋さんから始まるストーリー。さえない店長・千太郎と、突然バイトにやってきたおばあさん・徳江による、「あん(餡)」の製造工程が丁寧に描かれていて、地元の

「一万円選書」当選物語:#1『夏への扉』

 私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。  今回からは私が実際に選んでいただいた10冊の本をそれぞれ紹介していきます。今までのnoteはマガジンにまとめていますのでよろしければどうぞ。  記念すべき1冊目はロバート・A・ハインライン著『夏への扉(原題:The Door Into Summer)』。ちょうど夏ということもあってまずはこの本から。  主人公は牡猫ピートと暮らす技術者ダン。彼を「技術者」と呼

種をまく人

 子供のときに読んだ本の記憶はやけに鮮やかだ。  その本を通して初めて知った世界や感情があるときは特に。  『種をまく人』という本がある。子供のときに読んだ淡い緑表紙の薄いそれの内容を、大人になった私はほとんど覚えていなかったけれど、その本を読み終わったときの、あたたかな気持ちだけは覚えていた。  一ヶ月前に近所の八百屋兼花屋で朝顔の苗を買おうと思ったとき、同時に思い出したのは『種をまく人』のことだった。  自宅に苗を持ち帰ったあと、近所の図書館で『種をまく人』を借りた

「一万円選書」当選物語:序章後編

私が「一万円選書」に当選するまでとその後、選んでいただいた10冊の本について紹介していくシリーズ物note。 今回は私が「一万円選書」に応募・当選して本が届くまでのお話です。 前回のnoteはこちら。 なんとなく知っていた「一万円選書」にノリで応募してみた。私は「一万円選書」については以前からなんとなく知っていました。きっかけはなんだったかよく覚えていないのですが、確か母からの情報だったと思います。 私の両親は本好きで、子供の頃は毎週のように図書館に連れていってくれま

「一万円選書」当選物語:序章前編

「一万円選書」当選物語、始めます。数年前、いわた書店さんの「一万円選書」に応募し、初めてにも関わらずビギナーズラックもあってか当選。その後、いわた書店さんとやりとりを重ね、計10冊の本を選んでいただきました。せっかくなのでこの体験についてシリーズ物として書いていこうと思います。 こういった問いには、下記にとっても詳しく載っていますので、こちらではさっくりとした説明だけにとどめておきますね◎ いわた書店とは?北海道砂川市にある1958年創業の書店。現在の店主は二代目の岩田徹

「依存症ビジネス」についての依存症になるほどおもしろい本

名前負け、してません。今年読んだ本の中で暫定トップ5入りする本に出会いました。その名も タイトルに惹かれて手に取る本は数あれど、400ページ超えで一気に読ませるような本はそうそうないのでは。もしかしてこれも「依存症ビジネス」…?軽い冗談はさておき、早速中身について書いていく。 ジョブズは自分の子どもにはApple製品を与えなかったまずプロローグからしておもしろい。現代人の多くが馴染み深い製品やサービスをあげ、開発者たちや専門家たちのほとんどは、実際には自分や家族はそれを使