「フットボリスタ・ラボ」インタビュー記事がWeb公開されました(という告知と,インタビューに入れなかった自分語り)
サッカー雑誌「フットボリスタ」で昨年受けたインタビュー記事がWeb公開されました.
インタビュー記事内でも話している通り,スポーツデータの分析とか予測モデルの研究をしばらく前から行っています.そこで目にしたデータ分析特集(第71号)がとても印象的でして,オンラインサロン(「フットボリスタ・ラボ」)に入会することとしました.
大学教員というフックもあってか,インタビュー対象として選んでいただきました.インタビュー記事にRoboCup(ロボットにサッカーを行わせる大会)と思しき画像が採用されていて,あぁ懐かしいなぁ,と思い本稿を書くこととします.
サッカー研究と私
RoboCupは懐かしくはあるのですが,公式大会などに出たことはありません.卒業研究で配属された研究室で,若気の至りの思い付きで自ら提案したのがサッカーの研究でした.確かRoboCupの日本大会が名古屋であって,研究室関係なく見学に行った結果,かなり強く影響されていたのだと思います.
今になっては「だったらRoboCupやってる研究室行きなさいよ!」と思うのですが,先生先輩方が寛容でして,RoboCup serverを利用して,研究室の研究プロジェクトに関連付けられるような卒論の方向を誘導してもらいました.
(RoboCup server:正式名称は失念しましたが,ロボット1台ごとにエージェントプログラムを起動してサーバに接続し,環境情報を取得して…という仕組みだったと思います)
始めてすぐに,「あ,これは時間が足りんな」と気づきまして,まともにサッカーなどはできるはずもなく,2対1でディフェンダーをかわしてシュートする行動計画をどうするんだ,みたいなところに落ち着きました.データの精度を変えて探索時間を一定にする,みたいな技術を論文の中心に据えていました.ですので,公式大会に出なかったのではなく,出れるようなレベルに到達できなかったんですね.
大学院進学後は卒論で行った内容を全く引き継がず完全に新しい方向(最適化を伴うシステム制御)で研究を始めました.そちら方面も広くて深くて興味深く,大学院や現職赴任後しばらくはシステム制御系の研究テーマで頑張っていました.今でも制御関連の研究は続行中です.
二十年前のアイデア
卒業研究をサッカーで行おうという(約)二十年前のアイデアは結構しっかり覚えていて,というか最近サッカーデータを触っているうちに明確に思い出しました.
・サッカーとラグビーはオフサイドの概念が違うので異なった戦略が生み出されている.このように,ルールの拘束条件を組み込んで評価を繰り返すことで最適な戦略が生み出されないか?
自己申告かつ記憶が捏造されている可能性があるので割り引く必要はありますが,アイデアとしては強化学習ベースの戦略設計法を志向していました.実際,Q学習の論文を読んだんですが,読んですぐに「あ,これは今の計算機では無理だな」と気づいたのが二十年前です.状態爆発どうすんねん.卒論では強化学習はあきらめています.
ニューラルネットワークも3層のものをスクラッチで書いて簡単な学習はできるようになりましたが,こちらも「あ,これは今のレベルでは無理だな」と気づいてしまいました.ニューラルネットワークをちょっと知っていたことで,深層学習の出始めに過小評価してしまったことは悔やまれます.ただ,若いうちにちゃんと勉強しておいてよかったのは確かです.深くないニューラルネットワークはぼちぼち研究でも利用しています.
今ならどうなんだ,と考えてみると,今でもそんなに簡単にはうまくはいかないプロジェクトのような気がします.ただ,囲碁・将棋のAIやイベントベースのサッカーのプレイ評価(ゴール期待値,アシスト期待値,...)の開発状況を見ると,方向としてはそこまで間違ってなかったんだ,と答え合わせをしている感じです.とはいっても自分が先見の明があったと言いたいのではなく,ちょっと勉強した人は大体そのアイデアを思いつけているはずなんですよね.同時多発的に科学的発見が独立にされていたとかその辺と似ています.その後実装方法などを粘り強く研究できていたか,の差だと思います.自分はあっさりと降りてしまってほかの分野に行ってしまった後,たまたま答え合わせができているだけですね.
アイデアは持っていたけど実行していなかったツケみたいなものは確実にあって,今から深層学習・強化学習系のスポーツデータ分析に行くのはちょっと慎重になってしまいます.そうでない方法でどんな成果が出せるのかなぁ?というのは日常の問題意識でもあります.
オチとかまとまりは特にないのですが,2000文字に近くなってきたので切り上げましょう.この記事で知っていただいた方も,前から見ていただいている方も,今後ともよろしくお願いいたします.