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閏年2月24日、横浜の森

あれ、まだ書いてなかったのか、あの日のこと。
じゃあ書きます。覚えているうちに、忘れないように。

 12月1日、私の一番好きな人間である小林賢太郎さんが表舞台から引退したことを発表しました。ツイッターのトレンドには賢太郎さんやラーメンズに関するワードがたくさん並び、情緒をぐちゃぐちゃにかき乱された私は課題のレポートを一文字も進めることができず、もうとにかく大変なことになっていました。ちゃんと出したけど。

 彼が最後に舞台に立ったのは、「うるう」という演劇作品。4年に1度、うるう年にしか上演されない、特別な作品です。これまで2012年、2016年に上演され、3回目の公演である2020年の「うるう」が、舞台上で活躍する小林賢太郎の最後の姿となりました。
 実は私、「うるう」を劇場に見に行ったんです。ここではその時のことを書きます。もっと記憶が新鮮なうちに書けばよかったのに、あの日から約10ヶ月も経ってしまいました。

 「うるう」の存在を知ったのは、今年2月の始めあたりだったかな。好きなバンドのライブが2月の中旬にあったので、そのチケットの確認をするためにイープラスのアプリを見ていた時でした。当時は今ほど賢太郎さんやラーメンズにハマっておらず、「へ〜舞台やるんだ、行けたら行ってみるかな」ぐらいの感覚でした。

 チケット販売のページに飛んでみると、静岡公演のが少しと、横浜公演のが割と残っていました。私は愛知在住なので、行くなら静岡公演に行こう!と意気込み申し込みページへ。遠いよりは近い方が、圧倒的にいいもんね!私はクレジットカードを持っていないのでコンビニ決済にしよう、と思いながら手続きを進めていきました。が、支払い期限の関係でコンビニ決済では申し込みができないということが発覚。嘘やん。親のクレジットカードを代わりに使ったりできるんだろうか?などといろいろ調べているうちに、まんまと静岡公演はSOLD OUT。あ〜〜〜……。

 この時点で私の中のストッパーが外れてしまいまして、なんかもうヤケクソになって「どんなに遠くても絶対絶対絶対見に行ってやる〜〜!!!」という思考に至りました。残りは横浜公演のみ。横浜公演は静岡公演より後の日程だったためコンビニ決済の期限に少し余裕があり、スムーズに申し込むことができました。よかった〜。
 本当にこの時ヤケクソになった自分に惜しみない賛辞を贈りたいです。よくやったな、私。
 関係ないですがチケットの申し込みをしたこの日は私の誕生日でした。

 いろいろあって当日、2月24日。公演は14時からだったので、当日の朝新幹線で向かいました。思えば1人で新幹線に乗るのはこの日が初めてでしたね。
 車内で新幹線のめっちゃ硬いアイス(ピスタチオ味)を買ったのですが、それについてきたおしぼりが『月桂冠』の『大吟醸』でした。賢太郎さんの作品に、「月桂冠」「大吟醸」という名前の人物が登場するのです。写真を撮りながらものすごいニヤニヤしてしまいました。

↑偶然ってすごいですね。オタク、歓喜。

 会場は横浜中華街のすぐ近くにあるKAATという劇場でした。新幹線から降り、電車で中華街の方へ。開場時間よりかなり早めに着いたので、観光がてら角煮まんを食べたり、可愛いチャイナ服のお店を見たりして過ごしました。

 そろそろ時間になるので、劇場に向かいます。道には迷いませんでした。思い返すと劇場という場所に行くのはこの日が初めてでした。「本日の催し物」の所にうるうのポスターが表示されていて、「ああ、今日あの人を見られるんだ」という実感がじゅわっと染み込んでくるような感覚がしました。初めての場所、初めての経験にワクワクと緊張を隠せないまま、周りをキョロキョロ窺いながら足を進めていきました。

 開場時間になり、物販のところで絵本「うるうのもり」やクリアファイル、しおりなどのグッズを購入しました。ほっくほくです。
 迷ったけどポスターも買っちゃった。A2のでっかいやつ。額縁に入れて、今は私の部屋に飾ってあります。宝物です。

 開演前の舞台には賢太郎さんが描いた森の絵が描かれた緞帳が降りていて、客席の方は少し薄暗くなっていました。どこからか鳥のさえずりも聞こえてきて、席についた瞬間から森に迷い込んだ感覚になったのがすごかったです。まだ幕は上がっていないのに、既に物語の中にいるようでした。

 私の席は3階席の1番後ろ。つまり舞台から最も遠い席でした。チケット代の支払いが遅くなってしまったので仕方ないですね。みなさんも支払いはすぐにしましょう。
 双眼鏡とか持ってくるべきだったかな…と思いましたが今からではどうすることもできないので、しっかり自らの肉眼に焼き付けようと心の中で小さく誓いました。
 開演まではもう少し時間があったので、さっき買った「うるうのもり」を読みました。この物語を今から見るのか…と震えたのを覚えています。

 絵本を読み終わり、余韻に浸りつつ周りの様子を見てみると、徐々にお客さん達で席が埋まっていくのが見えました。小さな子どもから大人まで、まさに老若男女。絵本になっているだけあって、思ったより子ども(というか親子)が多いんだな〜という印象でした。
 ちなみに私の隣の席に座った人は、左右とも私より少し年上ぐらいの女性でした。右の方はお友達と来ていたらしく、2人の会話から楽しみな気持ちが伝わってきて思わずニコニコしてしまいました。特に「賢太郎さんの舞台に来るのが人生の目標だった」と話していた所では、(私もだよ……)と無言のまま頷いてしまったり。盗み聞きしてしまってすみません。
 とにかく、私以外の人たちも今日をすごく楽しみにして来たんだなあ…こういうのも生の舞台ならではだなって。なんか…すごい良いなって思いました。

 作品の内容については書きません。ネタバレへの配慮ももちろんありますが、私の拙い言葉では言い尽くせないほど素晴らしい作品なので……。書かない、というより書けない。
 見ればわかります。見なきゃわからないんです。ほんとに。絶対に後悔しないので円盤を買ってください。

 舞台が終わったあと、アンケートを書きました。ぼろっぼろに泣いたので感情も思考もぐっちゃぐちゃで、ガタガタ震えた手で書いたアンケートはなんかすごいふわふわした感じの内容になってしまいました。これ書いときゃよかったな…と思うことが次から次へと湧いてきます。

↑実際に出したアンケート。言葉は少ないですが感情は人一倍こもっています。

 劇場から外に出てもなんだかうわの空で、でもとにかく満たされた気持ちでいっぱいでした。空がいつもより青く澄んで見える気がして、なんかもう全力でスキップとかしたかったです。舞台の力ってすごい。
 私は集中すると息を止めてしまう癖があるらしく、実は舞台の終盤あたりから頭がかなり痛くなっていたのですが(たぶん酸欠)、それすらも幸せな痛みに思えるほど。読後感というのか、「良い物見たな〜っ!」って気持ちで、すごく幸せでした。

 帰りの新幹線までは結構時間が空いていたので、中華街でふらふら食べ歩きしたりしてから帰りました。1回ぐらいやってみるかな、と占いに行ってみたのですが、あんまり当たっていませんでした。私は長女じゃないしアレルギーもないよ。
 途中で揚げパンみたいなやつを買って食べたらめちゃくちゃ体調が悪くなってビビりました。あれはなんだったんだ。

 「うるう」を見に行って、確実に私の人生は変わったと思います。あれからもっと賢太郎さんの世界を知りたくなり、ラーメンズ、ポツネン、KKP、KKTV、その他いろいろな賢太郎さん関連の作品を見たり読んだりして、賢太郎さんがつくり出す素敵な物語がもっともっと大好きになりました。もしも万が一、万が一ですが私に子どもが生まれたとしたら、毎晩「うるうのもり」を読み聞かせたいです。

 初めて舞台のチケットを買って、初めて1人で新幹線に乗って、初めて劇場に行って、そして初めてのスタンディングオベーション。2020年2月24日は、私の初めて尽くしの一日でした。

 本当に本当に、見に行くことができてよかったです。幸せだなあ。

 
 
 
 
 

ここから下はおまけです。横浜で撮った写真を載せておきます。

↑中華街

↑武器屋。本当に武器屋でした

↑横浜の鳩。シュッとしててかっこいい

↑角煮まんおいしかった

↑塩を盛りました

↑劇場。広くてきれいでかっこよかったです

 

以上で終わりです。ありがとうございました!

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