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「好きな作品」と「苦手な作品」の違いを考える

手に取る本は、たいてい好きな作家のものばかりになってしまう。
誰しもがそうなのか?

ちなみに、わたしが手に取るのは、

  • めちゃくちゃ元気があるとき → ダン・ブラウン

  • 普通に元気があるとき → 松岡圭祐/米澤穂信

  • 元気がないとき → 森見登美彦/西尾維新

だいたいこんな感じ。
ミステリー大好きだけど、どんな事件が起こって、誰が、何を、どうやって解決するのかを読んでいると、やっぱり頭を使うから、余分に考える元気がないと読めない。

特に、ダン・ブラウンのロバート・ラングドンシリーズは、めちゃくちゃ面白くて時間を忘れちまうし、ヨーロッパを夢想できて楽しいんだけど、科学と宗教の対立もしくは融合の話が、なかなかに愉快だけど、最高に難解なんだ。

ダン・ブラウンの話はまた追々するとして……

もっと元気がないと読めないのが、

今まで読んだことのない作家さんの作品。

好きな作家は、「間違いない!」と思って安心して手に取ることができるけど、読んだことのない作家の本は、自分の琴線に触れるのかどうかが一か八かなのである。

だから、少し臆病なわたしは、好きなミステリーというジャンルで本屋大賞にノミネートされた作品を手に取ってみることにしたのだった。


『硝子の塔の殺人』知念実希人著

※ 知念実希人さんのファンの方は、この先読まないでいただきたいっ!!
※ この本をまだ読んでない人は、この先読まないでいただきたいっ!!!













面白かった。
特に物語の構成で一本取られた。

確かにね、読み始めたときに、「穴だらけの構成だな!!伏線わかりやすすぎでしょ!!と思いきや回収する気ない伏線もあるな!?ガバガバか!?」と思った頃もあった。

ごめんて。

それも含めて全部伏線だったとは……(それにしてもガバいところはあったが)

物語の構成に関しては、なるほどと思わざるを得なかったし、めちゃくちゃ勉強になった。

いやさしかしだ。

知念先生の文章、どうしても好きになれない点が主に2点あった。


一つ目は文の書き方におじさんがにじみ出ていたという点だ。

別にいいのさ、おじさん臭くても!!
でも、ちょうど最近知り合いと、文章に限らずありとあらゆる作品からにじみ出る「おじさん臭」の話をしたばかりだったのだ。
曰く、「おじさんの作った作品からは、おじさん臭が目に見えて表現される!」とのことだった。いやいやそんなのわかんないっすよと応戦したものの、なるほど実感してしまった。

どういう点がおじさん臭かったのか。
「誰それはひとりごつ。」という文章、つまり、「ひとりごつ」という動詞を使うところだ。(個人の感想です)
別に言葉のチョイスは個々人のセンスなので何も言及することはなくて、本当個人の好みの問題で、その好みがわたしには刺さらなかったというだけの話で、だから、その……(言い訳クソ)

なぜわたしに刺さらなかったのかというと、「ひとりごつ」を使う頭の中の架空の著者のドヤ顔が透けて見えたからだ。

あと、文章自体のリズム感がしっくりこなかったというだけの話。
「誰それはひとりごつ。」よりも「誰それは独り言を言った」の方がリズム感があって好き。その分、表現は拙くなるけども。


二つ目。これは先の知り合いも言っていたのだが、『読者に語りかける手法』が顕著に何度も使われていたという点である。

いや、メタい作品は嫌いではない(苦手ではある)けど、ちょっと寒いと思ってしまう。なぜだろう。

『読者に語りかける手法』に関しては、わたしの大好きな森見登美彦の常套手段でもある。「読者諸賢」から始まる文章なんてざらだ。
でも、特段森見登美彦のそれを寒いと感じたことは今までなかった。

知念実希人と森見登美彦の『読者に語りかける手法』は何が違うのだろう?

考えてみたら、もしかしたら最初に『読者に語りかける手法』を目の当たりにしたのが森見登美彦の作品で、「うお、話しかけられてる!」って新鮮な気持ちになったというのがある。こんな書き方があるのかと。

その斬新な手法を知ってしまったのちに、すでに既存の手法に過ぎないものを見たところで……ってなってしまった可能性。

もしくは、森見登美彦の『読者に語りかける手法』は主に「私」という登場人物が徹底して読者に話しかけるスタイルが貫かれている一方、知念実希人のその手法は「ここぞ!」というところでドカンと投げられるその感じの裏に、頭の中の架空の著者のドヤ顔が透けて見えたのが原因かもしれない。うん、そんな気がする。

だから、モヤモヤしながら読んでいたのだが、悔しいかな、読みながらめちゃくちゃ先が気になり続けて一気に読んでしまった。めちゃくちゃ悔しい。

ということで、結果読んでよかった。面白かったし、文章の書き方の勉強になりました。
でも!!わたしは!!認めない!!

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