Nitecore MH2A ~2AAリチャージャブルマルチタクティカルフラッシュライト~ 【偏見で語る懐中電灯】
唐突に始まってしまったシリーズ「偏見で語る懐中電灯」。発想は面白いんだけどちょっとね……な懐中電灯の魅力を悪意をもって掘り下げていくよ。単発で終わるかもしれないよ。
今回ご紹介するのはこちら「Nitecore MH2A」。
メーカーHP:http://www.nitecore.com/
製品紹介ページ:http://flashlight.nitecore.com/product/mh2a
MH2Aは単三電池2本(2AA)で点灯する いわゆる2AAライト。2AAライトは電池の入手性と手軽さから家庭用にも業務用にも人気があり、懐中電灯メーカーの多くがラインナップしている。しかしこのMH2A、ただの2AAライトではない。言うなれば「2AAリチャージャブルマルチタクティカルフラッシュライト」なのである。
……主に突っ込みどころで構成されている。タクティカルという点はさておきリチャージャブル、つまり充電式という点についてだ。MH2AはマイクロUSBを挿すだけで装填中の電池を充電できる、一種の充電器としての機能を持っている。
単三電池で充電池といえば、エネループなどのニッケル水素電池が思い浮かぶかもしれない。しかしMH2Aはニッケル水素電池の充電には対応していない。じゃあ14500のリチウムイオン電池か?……というと取説には非対応の旨が記載されている(※スペーサーを使えばイケたりしたりしなかったりするかもしれない)。では何を充電するのか、実はNL1427という専用のリチウムイオン充電池が存在するのである。
単三電池を2本つなげてフィルムしたような外観をしている。表面の表記によるとスペックは1500mAh 3.7V 5.5Wh。これとCree XM-L U2との組み合わせによって発揮される光束は600lm。1000lmの懐中電灯が普及した2018年現在においてはそこまで強烈な数字に感じないが、2AAライトとしては今もなおトップレベルの明るさだし、登場当時はそれなりにインパクトがあったものと思われる。まあ、NL1427を使わなければ普通の2AAライトと同じくらいの明るさなのだが。
普段はパワフルなリチウムイオン!
非常時は単三電池!
14500よりも大容量!
強い!
……というコンセプトだったのだろうが、対抗馬も後継機種も登場していない状況を見るに市場の反応はいまひとつだった模様。そもそもアルカリ電池ユーザーはリチウムイオンを使わなければ真価を発揮できないやたら高価なだけのMH2Aを買う理由がない。リチウムイオン電池ユーザーは他の懐中電灯に使い回せない、しかも汎用充電器にも対応していない専用充電池を必要とするMH2Aをわざわざ買おうと思わなかったのだろう。南無三。
日本の代理店でも取り扱いがあったが、あまりに売れなかったのか、昨年2980円と定価の半額以下まで値下げされて電池ごと特価品にされていた。ちなみに国内ショップで普通に買おうとすると10000円近くする。いや高ぇよ。
こちらの「NL1427充電器」!!
なんと600lmの懐中電灯としても使えるんです!!
しかもIPX8の防水性能を搭載して、
お値段!!
なんと!!
2980円!!
さらに今回NL1427を無料で1本お付けさせていただきましてですね、
とてもお買い得となっております。
ぜひこの機会をお見逃しなく!!
なお、発売当時の日本代理店の商品説明には……
「NL1427は扱いが難しいから単3電池で使ってね☆」(※大幅意訳)
とあった。今ほどリチウムイオン電池が一般的ではなかった当時の国内市場を思えば安全性に配慮した良心的な表記と言えるが、結果的にMH2Aのキャラクターを潰してしまっている。たぶんMH2Aくん日本に来たこと後悔してる。
さて、ここまでMH2Aの残念な感じを紹介してきたが、優秀な点もある。ボディとヘッドの中間地点にあるコブにお気づきだろうか。これは充電用のマイクロUSBポートを保護するための金属製カバーである。両端はOリングによってしっかり防水されている。このやたら気合の入った防御機構はMH2AやMH25GTなどのMHファミリーの特徴で「ポートが濡れた状態でUSBを接続してブッ壊れ」という悲劇をかなり避けられる。なんといってもこのコブが大型のクリップと相性抜群。独特なシルエットがとてもイカすのだ。
UIも評価しておきたい。MH2Aはヘッドを完全に締め込んだ状態ではターボモードでのみ点灯、緩めた状態では半押しで3段階の明るさ+オートストロボ+SOS発光に切替可能という独特のUIを設定されている。間欠点灯メインの600lmシングルアウトプットとしてタクティコーな運用にも、深夜徘徊のお供にも災害時の限界電池サバイバルにもバッチェ柔軟に対応できる。まさしくマルチタクティカルフラッシュライトと言えよう。
ただまあ多少設計が古いからか、締め込んでターボ点灯させた後で緩めてMidを点けようとすると一旦ピカッとターボを光らせてからMidに移行するというちょっとしたポンコツ属性持ちでもある。「くらえ600ルーメ……あれMid!?」とかいちいち言ってんだろお前仕舞いには自分が情けなくて泣きだすんだろお前かわいいなお前。
この他にもXM-Lを搭載した2AAというこれまた微妙な変態性を持っていたりする。が、中途半端にまじめな仕様が実用品としてもネタライトとしても扱いにくいキャラクターを醸成してしまっている。一言にすれば
「別に使えなくはないがあえて選ぶ気になるかというと微妙」
な懐中電灯である。思いついたコンセプトをとりあえず製品化している感のあるNitecore製品らしいといえばNitecore製品らしい。恐らく後継商品が出ることはないと思われるので地味にユニークな懐中電灯をお探しの方は某ホルスターキングダムの特価情報に注目してみるのもいいかもしれない。セール価格なら十分な買い得感があるし、使おうと思えば使える一本だ。
……使おうと思えば。
ところでウェブ上でMH2Aを検索してもヒット数は多くない。特に日本語の記事は壊滅的である。今後MH2Aに興味を持つ方が現れた時、この記事が貴重な情報源となってしまうことだろう。なんか忍びないね。
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