海に触れた
海に行きたいとぼんやり思っていた。
どこかへ行きたいというより
どこかへ行ってしまいたいという感覚が強い私が、具体的に行きたい場所を想うのは珍しい。
でも知らない土地で乗ったことのない線の電車やバスを乗り継いで一人で海までたどり着くエネルギッシュさが今の私になく、結局行かないで今年を終えるんだろうなと思っていた。
だからびっくりしたのだ。
遠距離の恋人のもとへ行って
出かけていた時に
「この近くに海があるみたいよ」
と言われたときは。
「行きたい」
私は即答していた。
元々の目的地から出るバスに乗り、私は思いもよらず海にいく道にいる。
バス停で降りるとすぐ近くに、3.11で被災した校舎が保存されていた。
そのときのことは機会があればべつのnoteに書ければ良いと思っている。
とてもじゃないが校舎にカメラをむけることは、そのときの私にはできなかった。
その校舎から十分ほど歩くといよいよ海。
道の途中の大きな川で釣りをしているおじさんたち、
やたら広くて白む土地。
流されたからなのか、
もともとこういった土地なのか
とにかくこの辺り一帯が
急に広いように見えた。
階段をのぼった先はついに海。
周りには細かな砂が落ちている。
ピカピカ泥団子の最後の段階にまぶすような細かな砂だ。私は砂に足をとられながらモゴモゴと歩いた。
階段をのぼりおわった私は、
念願の海の青を目にいれた
そこはとにかく広い、海や砂浜の端が見えない、広大な世界だった。
ただただずっと大きな波の音が
私の耳に入ってくる。
美しくて、こわい。
一人だったら死んでいたかもしれない。
海の広さと大きな波の音に私は飲み込まれていた。
少し写真撮ってきてもいい?
「いいよ」
彼の声を聞いて私は現実に戻る。
そして私は彼から少し離れたところで海にカメラを向けた。
標準レンズとheliosのオールドレンズを使って一枚、また一枚と写真を撮っていく。
ここ数カ月、どうしようもなく気分が落ちていた。やらなくてはいけないことを放棄して逃げるようにして私は彼のところにきたのだ。
海が私を元気づけるなどということはなく、潮声だけの世界がより一層私を不安にさせた。
ファインダーからのぞく世界もいつもと違って見える。誰かの声や感情がそこら中に広まってレンズに写っているような。
良いものでも悪いものでもない
”なにか” がそこに或る。
不安なのに無色。
怖いのに透明。
孤独なのに澄んでいる。
海に来る前に被災した校舎を見たからだろうか。霊的な意味ではなく、ここにいる人達以外のなにかが、私の頭をぼんやりとフェードがけているように感じる。
ファインダーをのぞくうち、足下が急に冷たくなり私はウゲっと声をあげる。靴が波でぬれてしまった。
やってしまったーと言いながら帰ってきた私に、
「ぬれそうだと思ってみてた」
と彼は笑う。
じゃあ言ってくれよう!とチョップ。
少しの間一人になりたかった私に、彼は気づいていたのかもしれない。
あとがき
オールドレンズはAFが使えないため、瞬間を逃しがちで今まで上手く扱えてなかったのですが、今回は大優勝でした。太陽の光があるとこの子はピカイチに輝いてくれて、ノスタルジーな世界を魅せてくれます。とくに、今回の私の海の見え方と、このレンズの写す世界は解釈一致。より一層皆様にも雰囲気が伝わりやすかったのではないかなと思います。Heliosくんフォーカスのnoteもいつか書きたいなぁ。
オールドレンズはまだまだ勉強中なのですが、大好きなレンズです。作例見るだけでもホックホクになるので何かオススメオールドレンズあったら教えてくださいね☺
最後まで読んで頂きありがとうございました!🙇🏻♀️
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