知財に問題が発生する原因~昔からの慣行を放置~

知財に関し、例えば、他社の権利を侵害してしまわないか?というような何らかの問題が発生する場合、そこには大きな原因が存在しています。

その原因の1つとして、昔からの慣行を放置していることが挙げられます。

例えば、これまで知財について何も問題が生じたことがないからこれからも問題ない、と考えたくなる傾向が人間にはあると思います。

特に、同じ企業や同じ業界で長年働いてきた人は、意識して企業や業界の外の情報に触れない限り、これまでと同じように過ごすことができると考えがちです。

そして、その企業や業界において、これまで特許や商標等の知財権を取得しなくても特に問題なくビジネスをすることができてきた慣行があるとすれば、今後も知財権を取得しなくても大丈夫だろう、と思うかもしれません。

しかし、いまや従来は縁遠かった分野が自分たちのビジネス分野と融合することは珍しいことではありません。また、人々の知財に対する意識も年々高まりつつあります。

特に情報通信技術(ICT)や人工知能(AI、特に生成系AI等)の発展により、これまで思いもよらなかった分野の企業が当該企業が有する知財と共に、自分たちの市場に参入してくることがあります。

しかも、そのような知財(例えば、特許)を見ると、パッと見は「大したことがない」とか「これまでやってきたことと似ている」と思うような知財であることもあります。ただし、本当に「大したことがない」かといえば実はそうではなく、他業界の人間だからこそ気が付く点に特許等を用いた知財網を構築した上で市場に参入してくることもあります。

また、「似ている」場合は「異なる部分にポイントがある」ということが往々にしてあり、その「ポイント」が、その業界において肝となる部分であることもあります。

そうなると従来からその市場にいた企業が慌てて対策を練る事態になります。

ついつい人は、いまいる立ち位置や立場が変わらないと考えがちですが、実際は常に変化していきます。昔からのしがらみや慣行が将来もそのままである、という保証は全くなくなっているということです。

そのため、時間の流れに応じてこれまでの常識が非常識になることや、これまでの慣行が通用しなくなる事態もあり得ることを頭に入れて知財を扱っていくことが重要になります。

by 今 智司

※今回の記事は今知的財産事務所のコラムからの転載です。

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