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わかりづらさに抗いたくて、編集者からSmartHRのUXライターに
X(旧Twitter)のプロフィール欄には無邪気に「new」などと書いていますが、いつのまにか入社して2年近くが経ちました。
ようやくnoteのアカウントを作ったので、初投稿となるこの記事では、私がなぜSmartHRのUXライターになったのか、入社してみてどうだったかを書いてみようと思います。
いったい誰がこれを? 憤りながら調べた結果
SmartHRに入社する前は、出版社で編集の仕事をしていました。
編集とは、ざっくり言うと書籍や雑誌、ウェブ記事などのコンテンツを作る仕事です。
まずは企画を立てます。
企画が通ったら、書籍であれば著者に執筆依頼をしたり、雑誌であれば取材や撮影をしたり。カメラマンやデザイナーなど関係者を巻き込みながら、コンテンツの形に仕上げ、世に送り出します。
編集の業務の幅は広いので、編集者の仕事のスタイルも多様です。広く交友関係を築いて情報を集めてくる人、センスを活かして素敵なビジュアルを作る人……自分の「得意」を活かして活躍している人がたくさんいました。
私の場合は、これといって誇れる特技はありませんでしたが、1つだけ、人よりも得意だなと思えることがありました。それは、取材して集めてきた情報を整理して、取捨選択をし、読み手に伝わるよう構成を考えて、文章にまとめるという作業です。
ウェブメディアを担当していたので、イチから取材するだけではなく、すでにある雑誌の記事をウェブ用に再構成したり、ライターの方々が書いた記事を調整したりといった機会もたくさんありました。そのなかで、読み手は誰で、この記事をどう読むか、何を伝えるべきか、どうすれば伝わるかなどを考えて、試行錯誤してきました。
そんな仕事をしていると、自分が作るもの以外でも、そこに文字があれば良しあしが気になるようになってきます。職業病ですね。
広告コピーや書籍の帯を見てツッコミを入れたり、これは上手いなあと感心したり……なかでもよく気になっていたのが、ウェブサービスやアプリに表示される文言でした。わかりづらいなあ、自分ならこうするのに、と思うことがたくさんありました。
とうとうある日、とある手続きのためにウェブサイトを見ていて業を煮やし(笑)、「いったい誰がこれを作っているのか」と調べ始めました。
その勢いで出会ったのが、UXライターという仕事です。
まだまだ日本には少ないけれど、編集スキルで、サービスやアプリを「わかりやすく」しようとしている人たちがいる。その事実に希望を感じ、感激すらおぼえました。
これは私がやるしかない!という謎の使命感(?)に駆られ、応募し、気づけば今に至ります。
振り返ってみれば、プロダクト開発の知識なんて何もない(むしろ苦手意識すらある)くせに、よく応募しようと思えたな……と呆れてしまいますが、何も知らないからこそ気軽に一歩を踏み出せたのかもしれません。
文化は違えど、仕事の本質は変わらない
入社したのは2023年4月。
超アナログな出版業界からの転職だったので、GitHubが何かも知らないド素人でした。
開発関連の知識がないだけでなく、IT業界ならではの文化や言葉遣いにも、最初は戸惑ったことを覚えています。そもそも面接の時点で、
面接官「入社後にキャッチアップが必要なことは何だと思いますか?」
私(キャッチアップ……勉強ってことかな?)
面接官「書いたものをレビューしてもらった経験はありますか?」
私(赤入れのことで合ってる……?)
こんな調子でした。IT業界、カタカナ語多すぎ。
そんなわけで入社後は、同僚たちから「業種も職種も変わって、大変じゃないですか?」と気にかけてもらっていたのですが、自分のなかでは案外すんなり馴染めた感覚がありました。入社半年後に書いた社内資料には、こう綴っています。
材料の毛色は違えど、集めて編むという仕事の本質は何も変わらない。これは、入社前から考えていたことだし、入社後のギャップも感じなかった部分です。
こんなふうに思えたのは、ひとえにSmartHRの人たちが優しくて、立ち上がりが遅くても急かさず見守ってくれていたから(あるいは自分が何も見えていなさすぎて、大丈夫な気がしていただけ?)ではあるのですが、実際「変わらない」のは本当だと思います。
出版社時代に、読者の方との会話などさまざまな情報を集めて企画を考えたり、1つの記事を読者目線・ライター目線・ビジネス観点…と視座を切り替えながら吟味したりした経験が、UIテキストの検討やサポートコンテンツの制作に役立っています。
たとえば、開発チームから「ここのUIテキストに悩んでいて…」と相談を受けたとき。正しく議論するには、以下のような情報収集が欠かせません。
開発ドキュメントや、ユーザーからのお問い合わせに目を通す
プロダクトを実際に操作してみる
ほかの機能やプロダクトで考慮すべき箇所がないか確認する
ヘルプページなどのコンテンツを調べる
関連するガイドラインを把握する
こうして自分なりにザーッと情報を集めたうえで、改めて開発チームからの相談を見ると、たいていは、決めるために何が足りていないのかが見えてきます。
足りない情報をさらに探したり、開発チームに深掘りしたりして結論を導くのですが、この、言葉を決めるために必要な情報や観点が出揃っているかを見極める感覚は、編集の仕事を通して磨かれたものだなーと思います。
(もちろん、情報を集めたうえで「これは確かにむずいわ……(絶望)」となる場合もあって、そのときは開発チームと一緒に頭を抱えます。わりとよくあります)
世の中の「わかりづらさ」を減らすために
最近は、プロダクト基盤と呼ばれる領域の開発チームを担当しています。
チームを横断する複雑なプロジェクトが多いなかで、UXライターとして力を入れているのがユビキタス言語の定義です。
プロダクトに関わる全員が共通言語で会話できる状態を作り、円滑に開発できるようにする取り組みなのですが、書き始めるとさらに長くなるので、具体的なことはまた改めて。
ほかにも、日本語が不得手なユーザーに向けたやさしい日本語プロジェクトに参加したり、社内の開発者を対象としたライティング講座の運営に携わったり。
いろいろな角度からSmartHRの「わかりやすさ」「使いやすさ」に貢献できて、ありがたい環境だなと思っています。実際にユーザーや社内の関係者からポジティブなフィードバックを得られたときは、とてもうれしいです。
(ポジティブなフィードバック……すっかりカタカナ語文化に染まっていますね)
でも同時に、UXライターになるきっかけとなった「わかりづらいサービスやアプリをなんとかしたい!」という理想を叶えるには、まだまだ遠いなと思います。
SmartHRだけを見ても課題は山積みですが、将来的にはSmartHRだけでなくさまざまな「わかりづらさ」を減らして、世の中の役に立ちたいという気持ちもあります。
その第一歩として、SmartHRでの取り組みを社外に知ってもらえるよう、発信していくぞ〜〜というわけで、重い重い腰を上げてこの記事を書きました。
仲間ももっと必要です! これを読んで、もしUXライターの仕事に興味を持っていただけた方がいらっしゃいましたら、ぜひカジュアル面談へお申し込みください。
長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。