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ウマ娘熱狂にみるギルガメッシュ分析

何でこんなタイトルで記事を書いたかと言えば、
前々からある日本市場の独特さというか、CS文化に引っ張られすぎた危うさが、顕著に表れてしまっている事例がこのタイトルで頻出しているから。
というかですね、同じ業界の人間ですら「ウマが原神に勝って世界一だ!」と熱狂してる様をみて「やべぇ・・・」となったからです。

敵は正しく恐れよう

そもそもで、この話題が業界人から出た発端は以下の記事が発端でした。

【売上情報】ウマ娘リリース後1ヶ月の売上は約143億円!原神を抜き中国以外で売上世界一に

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これを見て、もう敵に勝ったかのように浮かれているのを見て「いやいや・・・」と。なぜならこの記事は「事実だが本質ではない」からです。

まずはデータだけで見ていくと、
原神の初動売上は約255億円記事)です。「どうせ中国でばかり売れてるんでしょ」と思われるでしょうが、中国を除いた額だと168億円以上記事)です。つまり、同条件だと勝てていません。
また、2ヶ月でおよそ4億ドル(記事)で、2ヶ月目は1億4,800万ドルほどということなので、大体163億円ほど。Sensor Towerの報告なので中国を抜いたAppとGoogleの合算でしょう。(半年の合算を6で割った平均より下ですし)
となると、初月と翌月でほとんど落ちていないことも分かります。
また、海外売上の上位占有率が、日本(35.6%)、米国(27.4%)、韓国(11%)と日本偏重でもなく結構バランスよく売れているようです。

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少し話が逸れましたが―
つまり、「原神を抜いて1位」を正しく見れば「半年経過後の原神を、ご祝儀期間(後述)のウマ娘が抜いて1位」となります。
さらに原神の3月は新規キャラ1と復刻キャラ1、あとは中旬にイベントが実装されたくらいで、いわゆる新マップなどはなくオンラインゲーム的に言えば「隙間期間(大型アップデートの合間)」になります。
それを踏まえ、さらに正しく見れば「半年経過後で隙間期間の原神を、ご祝儀期間のウマ娘が抜いて1位」となるわけです。
正しくリリース月で比較するならば「原神には届かなかったが、国内タイトルの中では圧倒的1位のローンチ」と称賛されるべきなのです。

個人的には、逆にこの条件差で中国を除いた売上が10億円しか差のつかない134億円を売り上げている原神の強さにも驚きます。
長期維持こそがオンラインゲームの価値であり、また最も困難で、最も重要なことだからです。

ユーザであれば「俺のやってるゲームが1位だ!すごいぜ!」だけで良いのですが、業界の人間がそれでは困るわけです。
何があったか、お互いの持つ環境はどうか、お互いの正しい時期の比較ではどうか~etc.etc.多角的に見なければ敵(別に悪い意味ではない)を見誤るわけです。

商品性を踏まえて見る商品価値

先ほどから「ご祝儀期間」と言う単語を使っていますが、リリース直後の非常に高い売上が出る期間をこう呼ぶことがあります。特に日本特有の高ARPPU依存型(後述)は、2倍以上になることもザラ。
投じている額も非常に大きく、この期間をもってオンラインゲームを評するのは非常に危険とされています。オンラインゲーム(長期的にサービスをして売上を立て続けていくゲーム)は、長期的に売上を維持し、伸ばしていく商品なので大体3ヶ月は静観し、4ヶ月目からの予測をつけていくことで正しい評価が出来るので、初動は立ち上げの成功失敗以外の評価基準にはならないわけです。

初動で語っていいのは売り切りのCSゲームですが、これをオンラインゲームにも当てはめてしまう。長らくCSゲーム大国として君臨してきたこの国では、人材の価値からタイトルの品評まで、全てが未だに「CSゲーム基準」となっている人が多いのです。
つまり、初動で数字があるか。最大瞬間風速の順位がどれだけ高いかが評価の最たる基準となるわけです。
端的に言えば、この国の業界権力者たちから見ると1年間ずっと4000万売り上げて利益が毎月1000万、年間1.2億出ているタイトルよりも、初動で1億2億出してその後3ヶ月もせず半減以下となって投資額が大きい分、利益は年間で2000万円ほどだったタイトルの方が評価は高いのです。もちろん、人材もこれを基準に価値が図られます。
その為、初動だけとにかくデカい数字を出そうとするPも少なくなく、結果としてあっという間に落ち込んでいくタイトルが乱発されているわけです。

この理由は、大手だと株主に見栄えがいいかが重視されるからというのもありますが、残念ながら中小にまで蔓延しているので株主どうこうとは違う理由で蔓延している病なのかもしれません。
まあ、CS出身というだけで飛びついて上層部に採用してしまう企業体質のところが多いのが原因かもしれませんが。

端的に言うと「CSゲーム」と「オンラインゲーム(スマホゲー含む)」は、同じゲーム分類ですが、商品としては全くの別物です。これを理解していないと、短命で運営が叩かれがちな商品を作ってしまうわけです。
どこに行っても何度言っても「なるほど」と言いながら理解してもらえない悲しみ。そして案の定、失敗する。

ARPPU型とMPU型

先ほどの項目にあったARPPU型とは何か。
これは日本のゲームに多く見られる「ごく少数に高額な客単価を支払ってもらうことで成立する収益タイプ」を指します。
やけに絞ったガチャや、期待値で数万かかるガチャで重ねが必須な仕様にする、ガチャ以外のマネタイズがロクにないといったタイプは、まさにこれです。
日本を除く国は客単価がそこまで大きくなることはありません。なぜなら経済格差もあって日本人ほど裕福な人が多くないからです。(日本は貧乏だと言われるかもしれませんが、平均的に皆が裕福な国なのです)
メリットとしてはガチャ1発での収益が非常に大きく、月末付近でも一発逆転を狙いやすいこと。デメリットとしては依存率が高すぎて運営コスト(特に企画)が非常に大きいこと、当たり外れの差が大きく収益の安定性に不安があること、顧客不満が出やすいことなどが挙げられます。

一方、ガチャで搾り取ることが良しとされない国々が取るのがMPU型です。
これは「多くのユーザにそこそこの額を支払ってもらう仕組みで成立させる収益タイプ」を指します。
スタミナの従量制課金やVIPシステム等、あちこちに安価なサービスを設置して時間や効率をお金で買ってもらうタイプ、要するにF2Pの基本理念をそのまま体現したタイプのもので、
メリットとしては売上が安定しやすく、比較的想定しやすいこと、母数を増やすほどARPPU型を引き離す売上効果を生むこと、不満が出にくいこと。デメリットとしてはゲームそのものによる満足度を維持する必要があること、設計(構想)難易度が高いこと、PRやコラボがARPPU型ほど劇的に売上に結びつかないことが挙げられます。

今回の記事が比較している対象で言えば、ウマ娘はARPPU型、原神はMPU型です。
サイゲは元々中国のマネタイズを真似というか研究していて、それを取り入れた課金方式を多く採用しています。その一方で日本式のガチャ依存も加えており、ハイブリッドな課金形式をとっていました。
ただ、ウマ娘のマネタイズは結構ARPPU型に寄ったなぁという印象を受けました。いや、よく考えるとグラブルもそうだったので、プリコネだけが特別だったのかもしれません。まぁ、あれはゲームシステムも中国のを真似てゲフンゲフン

このARPPU型とMPU型では、売上の予測も少し変わってきます。
先に3ヶ月静観し、4ヶ月目からを予測と言いましたが、ARPPU型は特に3ヶ月での落ち込みが激しいので初動で評価するのはとても危険なのです。
MPU型は2ヶ月目に安定していれば、恐らく4ヶ月目も似たような数字だろうと予測できる分、楽といえば楽です。
これを踏まえずに数字を見てしまう人けっこういるのですが、その場合は「ほとんどプレイも分析、研究もせず数字だけで比較している」ことが大半です。

マーケやアライアンスにもいます。外部に投げて出てきた数字を会議に持ってきて「〇〇のタイトルは今月〇億円、順位は〇下がりました」みたいに見れば分かる数字だけ口頭で長々と話す人が。
「で?そのタイトルは先月比でなぜそんなに落ちたの?」と聞くとしどろもどろになったり。
売上が上がった理由はガチャが上手くいったとかコラボが良かったとか抽象的なことをサラっと言ってくるんですが、「なぜ」が圧倒的に足りない。
特にマイナス要因はちゃんと見ている人じゃないと答えられないのです。
こういう情報を見る力がない人ほど、今回の記事を表面で見て騒ぎ、その本質を理解しないのです。(記事が悪いわけでなく、見る側の問題です)

ギルガメッシュ分析(タイトル回収)

聞いたことないぞ、なんやねんそれと思われることでしょう。
まあ、書き始める前にパッと思いついた造語ですから。

CSゲーム時代の風潮をオンラインゲーム市場にも色濃く持ち込んだ業界。
情報を一元的に受け取ってしまう業界人。
真っ当な分析の出来ない業界人。
結果として、大局の中にある1戦の勝利に沸き立ち、もう勝った気で物事を判断していまう・・・察しのいい人はそろそろタイトルの意味を理解したのではないでしょうか。

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そう、彼です。
そういう慢心の過ぎて目が曇ってしまっている人の行う分析を私は「ギルガメッシュ分析」と呼ぶことにしたわけです。
過去(CS王国時代の)の栄華に~とか何とかいうと、「いやギルガメッシュはもっと賢いぞ」と言う人いるでしょうし、その通りなんですが慢心しすぎて相手が強敵だったのだと認めた時には取り返しがつかないって点で、広義の意味で、ね?許して。

ちなみに私は別にFate信者でもFGO信者でもないです。
むしろキャラクター設計まわりの人たちは優秀だけど、それ以外は酷いと思ってますし、某社と仕事で関わったことでなおさらその気持ちが強くなったくらいです。

情報を見る時は「ホントに?」「なぜ?」を必ず念頭において、自分でも調べる努力をするべきだということです。
特に自分の仕事に関わることを他人の出した結論そのまま鵜呑みにするなど、こんなに危険なことはありません。そのつもりがなくても、今回の記事で踊った人は、全員「そう」なのです。
慢心ダメ、ゼッタイ。

技術的には周回遅れにされ、組織力でも負け、キャラクターやシナリオのセンスも中国が追い縋り、下手すると追い抜くところが出てきている中で、日本は奥州藤原氏のように過去の栄華に縋って内需という手軽で甘い蜜を吸ってる場合じゃないのです。
「どうせ勝てない」「だって金が」とか言いだす業界人(特に上層部)の多いこと多いこと。私がPMはもうやりたくないと言うのは、まさにこういう人たちと会話が全く噛み合わずにストレスばかり溜まるからですし。
恐らく今回のもこれを見たところで「でも原神は100億かけたじゃん」とか言い出す可能性はありますが、開発期間とその間に作り直しまで入れてることを考えるとウマ娘の開発費も結構えらいことになってると思いますし、何より「そこじゃない」のです。かけた金でなく、どうかけたかですから。
幾らかけてもその後のコストを下げる効率化や環境作りなどにかけたか、ただただグダって金が嵩んだかは全くの別。102億かけても30億かけてもどこに使われたのか分からない・・・みたいなことだって起きてるわけですし。アチコチで。

日本にはまだまだ優秀な現場が多くいます。蓄積量が違います。
素晴らしい発想力や分析力を持った人、類まれなセンスをもつ人もいます。
ですが、上に重用されるのは何かのガワ替え(本質の理解も出来ていない)を売り込む人や、CS時の肩書や、初動の大きさという肩書を持って売り込んでくる人ばかり。
オリジナルを生み出す人、0→1の出来る人は「不安材料」と見なされることも少なくありません。なぜなら「判断つかないから」です。

非公開記事でも少し触れましたが、自分の才能を大きく超える才能は評価できません。その際、「しかし才能はありそうだ。任せてみよう」となるか、「何言ってるか分からん。無能」と見なしてしまうかで命運は分かれます。
圧倒的に後者が多いので凋落していく企業も多いのですが・・・

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こうなる前に、恐れるべき敵を真っ当に恐れて対抗措置を講じられるように自戒を込めて記事にしておきました。

だいぶ危険域に突入していますが、まだ間に合う・・・はず。

2021/03/30 13:44
さすがに引用元の記事と同じ画像がトップにあるのは(気持ち的に)いかんでしょって思ったので、画像差し替えました・・・が、引用時の画像は切り替わってくれなかったので、引用元を尊重してそのまま画像残しましたorz
2021/03/30 14:00 追記コメ
本記事はスマホのシェアだけで語っています。
タイトルそのものの純粋な数字でいえば原神はPCとPS4がシェア半分近くと言われていること。ウマ娘のDMM版はプレイはされるが課金はスマホでという層が多いので1億ちょっとだろうと従来の計測から予測されていることなどは考慮に入れていません。
入れると大差ついちゃうんですが、元記事はそこに触れていないので。

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