コンサルタントの需要

前提として「全てがこう」というわけではなく、長い業界経験の中でそれなりにアチコチの役員経験もして、自身もコンサル業を経験したことがある上での体験談になります。そのつもりで読んでいただければと。

いわゆる「コンサル」需要というのは、斜陽になりはじめの企業や業界で高まる傾向がある。

第1に「まだお金がある」こと。
第2に「失敗が続いていて、どうにかしたいこと」が挙げられる。

しかし、
外からコンサルを雇うという決断をする場合、その企業は大抵「自社の社員を信用していない」という状態にある。
なぜなら、社内で正しく分析し、原因を見つめて対策を立てる方が圧倒的に安価で現実的だから。(内部の環境も事情も分かっているので)
でも、そうしない。なぜなら信用していないから。

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すべてにおいて社員を信用してないというわけではなく、稀に面倒事を全部押し付けたい(違法含めて)ってのもあったりはします。

雇いたがる人たちとは

マネージャー会議や役員会議に出たり、役職員だけの飲み会に参加している人はよく分かると思いますが、基本的に「うちの社員はダメ」という話をしています。
賢い人は「お前だよ」と思いながら、それは口にせず同意したフリをする。稀に正義感のある人が「そうじゃないですよ。原因は~」と正論を言ってしまい、気付いたら干されてたりもしますが。

とかく、プラスを求めてチャレンジする人よりマイナスにならない立ち振る舞いをする人の方が上へ行きやすいのですが、なぜプラスになっていないのに上へ行くのかという疑問も生まれるでしょう。
これは簡単で、プラスは奪えばいいからです。現場能力が高い人ほど政治力は低い傾向がある為、これは良心さえなくせばワリと簡単にできます。

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ゴマすりでも手柄泥棒でも、何とか上へ行ったら次に行うことは「部下や社員のせいにする」こと。こうすることで失敗が起きてもクビになるのは下になります。本当は誰が問題かと犯人捜しをするときも、みんなそうやって登ってきた同じ穴の狢なので「あのチームにはやる気がない」「覚悟が足りない」などと、良く分からない理由をつけて原因を押し付けるわけです。

その会社、本当に現場に問題があるの?

ですが皆さん知っての通り、
大抵の企業では上司が決定権を一手に握っており、現場に裁量権があることは稀有です。
どうしろこうしろ、これじゃダメあれじゃダメ、環境変えたぞ組織を変えたぞ目的を変えたぞ目標を変えたぞと、決定権をもってアレコレ手を加えるのは全て上の人間です。
その結果、部下がやりにくくなったり目的がズレて目標達成が困難になったり、予算と工数だけ削れて全く前に進めていなかったりしてプロジェクトが破綻していくわけですが、その原因は「社員の力不足」「現場の責任感」といったところに集約されていくわけです。
少なくとも上の脳内では。

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こういった人たちは、言ってるうちに次第に「本当に現場がダメなんだろう」と考えるようになります。ガチで堂々とそれを口にし始めます。
”斜陽になりはじめの企業や業界で高まる傾向がある”と言いましたが、要するに失敗が続くと押し付ける先も減るし、幾らなんでも上が全くすげ変わらず結果が出ないのが常に部下のせいでは成立しなくなってくるわけです。
そこで彼らが陥るのが正常性バイアスです。

正常性バイアスにかかる役員たち

正常性バイアスとは認知力に関する問題の一種で、自分にとって都合の悪い事柄を無視したり、過小評価したりしてしまうというものです。

俺は悪くねぇっ!

簡単に言えば、上にいる人は斜陽になって立場が危うくなってくると誰かに「アナタが悪いんじゃないよ」と言って欲しいわけです。

上は上で傷の舐めあいをしているオトモダチなので、ある程度まで上がると(大体、部長あたりから)早々互いを陥れるようなことはありません。
あるとすれば都合が悪い人、つまり「正しい認識をもち、それを言動に移す人」です。こういう会社にとって本当に大事な人物ほど凄い勢いで潰されます。正直者は馬鹿を見るとはよく言ったものです。

ともかく、
この正常性バイアスにかかっている人たちは自分や仲間たちの為に、どうしても自分のせいではないという担保が欲しくなる。
リーダーは部長に、部長は執行役員に、執行役員は社長に、社長は・・・と誰かに間違ってるのは自分じゃなく他人と言って欲しい。
そんな時、「外から来た何か肩書のある人」に「アナタが原因じゃないよ」と言ってくれるコンサルタントはニーズに対して非常にマッチした存在になるわけです。

「うちは社員がさー」「どうもやる気がさー」「俺たちの頃はさー」といった生産性のない愚痴に「どこの会社さんも似たような悩み持ってますよw」と軽口叩いてくれる存在。それこそが理想的なコンサルなわけです。
当然、打ち出す施策もそれに倣って「社員をもっと酷使する」「無理難題を強いる」「とりあえず組織をクラッシュ&ビルドする」といった手法が多く見受けられます。
必殺技として、とにもかくにも支出を抑えまくって一時的に見た目上だけ利益を上げるという手もあります。
ゲームの場合ですが、こんなことをすれば将来性は断たれ、寿命はマッハで失われます。また、社員のヘイトも加速度的に貯まり、賢い人材から順に消えていきます。

じゃあコンサルには何をさせたらいいの

コンサルを雇う前に、まず社内でやれることあるんじゃないの?というのが本音ですが、もし雇ってしまうことが確定しているのであれば売上やイベントの「資料の構造」を見直し、どう変えるか具体的なフォーマットを提示してもらう。これはちゃんと能力がある人しか出来ません。
自動化であったり、データとの紐づけであったりです。資料の効率化は確実に将来の工数を増やし続けるので是非ともお願いするべき。

もう1つは「組織フローの具体的な見直し案の提示」です。
どん詰まりになって失敗を繰り返す原因は、権限が集中していたり現場に裁量権がなかったり、上の誰かが「僕がやらなきゃ」と抱え込んで処理できずにいるかのいずれかです。大抵は。
誰が何を提示し、誰か何を決定し、誰が何を達成するのか。
これを明確に組織として分担し、各所で各々が裁量権をもって自分の責任を果たすようにすれば「誰のせいだ」とか「社員のやる気が」などといった意味不明なことを言うまでもなく、明確にどこに原因があってどうすべきかが明らかになるわけです。
「これは誰が決めるんですか?」と言うと「この人かな」「いや、その人じゃなくて~」と大体モメます。要するにちゃんと決まってないんです。
この時、ちゃんと現場にもヒアリングをすることが大事です。上の発言はアテにならないとは言いませんが、バイアスにかかりすぎてて正解が見えません。人数が少ないなら1人ずつ、多いところなら現場、リーダー、役員は分離してそれぞれに聞く。
ちゃんと追っていくと「この人が全部勝手に決めてるじゃん」だとか、「大体この人がちゃぶ台返してるじゃん」みたいなのが出てきます。
そうなったら権限と責任と役割と目標を各々に分担すればいいわけです。

裁量権集中の何が問題なの?

サッカーだっていちいち監督やコーチがピッチに許可出さないとブロックもシュートも出来ないなんてありえないでしょう。組織力がないというのは、要するにそういうことです。
また、その人の回答待ちになることが増えることで遅々として進まない、進んだと思ったら相談もなくどんでん返しを食らうといった事態も招きやすくなります。
その人がオールマイティな知識と技量を持ち、決断も早い聡明な人物であれば良いですが、そんな人物は早々いません。
むしろ暗君である確率の方が高いので困ったことになっているわけです。

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もし良いコンサルを引いたとして、その言うことだけ聞いて正しても結局はそう遠くない未来に元の組織に戻ってたりもします。責任逃れや任せた相手を信用しない姿勢、自分にとって痛い提言を聞かない姿勢というものが改善されなければ抜本的には何も変わらないのです。

要するに?

コンサルが悪いのかについては、
知る限り、雇い主である上役たちの耳触りが良い言葉だけ返してソレっぽいことをやって破壊神となってしまう悪いコンサルも多いと思います。
しかし、それ以上に雇う側に問題があるよというのが素直な感想です。

なぜコンサルを雇ってしまうのか。
それはコンサルを雇うような企業体質になっているから。

うちの会社がそうなら、どうしたらいいんだと思われるでしょうが、どうにもなりません。会社は社長のもの(株主のものという人もいますが)なので、社員のアナタに出来ることは「偉くなること」だけです。
偉くなるにはどうしたらいいか。それなりに自分を殺し、どうしようもない相手でも機嫌を取って取り入り、マイナスになりうる要素はどんどん他人に擦り付ける。上手くいきそうなプランがあれば飛びついて我が物顔で手柄を手にする。
・・・というのが、まあイージーモード。イージーと言っても人並みの良心があると怒りとストレスで胃に穴が開きそうになります。

正しいことを口にし、自己犠牲的に努力して実力で成果をあげ、成果をあげて会社が成功するなら手柄は誰のものになろうがどうでもいい。
・・・というのが、ルナティック。ルナティックが生易しく感じられるかも。
部下や同僚には好かれ、上司には嫌われます。
気分はいいでしょうが、いずれ食いっぱぐれます。それが現実です。

そういう人は起業した方が人生楽になるかもしれません。
起業すればリスクも手柄も全部自分のものですし、間違ったことをせずに済むので心にも優しいです。
そういう愚直な生き方をする人はサラリーマンをしていても常に大きなリスクを抱えます。同じリスクなら自分の身になることの方がいいかも。
とはいえ、まずは経験してみることは重要ですけどね。
間違わなければ学べることはないのです。
本や文、人の話だけ聞いて「分かった気になる」人が一番危険です。
「体験せよ」と言わない人は全員詐欺師だと思っていいです。

知識からだけ得て結論づけようとするのは、旅行に行く前に地図を見て旅行の醍醐味や風土を全て知った気になるのと同じです。
体験した上で覚悟が決まったなら、起業も1つの手ですよという話。

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