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航空機事故から学ぶ:70代のエアマンが70代のマスタングで駆けて

米国Nevada州Renoでは、1964年からair raceが開催されている。2011年9月16日の16時過ぎ、Reno Stead飛行場(標高5,046ft)で最後にUnlimitedクラスに6機が参加してレースが開始された。全周8mileの楕円コースである。

Florida州Ocala在住のエアマンはP51 Mustangの改造機(NX79111)で30年来参戦しており、74歳で最古参であった。同機はGalloping Ghostと命名され、時速450mileの高速度で飛行できた。レースでは2周目の終わりで4位から3位に追い上げ、地上200ftの高さでpylon#11を通過している際、突然機首上げして80-90度外へ向けて上昇して制御不能となった。上空から真っ逆さまに落ちてきた機体は、飛行場rampに特設されたVIP席脇に猛スピートで墜落した。機体は木っ端微塵となり、燃料と潤滑油が周囲に散乱した。機長のほか、観客10名が死亡し、62名が負傷した。

このレースにはNTSBスタッフがスタンバイしており、ベテラン調査官が墜落現場の数百yard先にいた。直ちにvolunteerとsecurity guardを動員し、飛散した機体を回収した。pylon#9と#1の中間に、オイルが付着していない大きな部品が見つかった。地元テレビ局は左trimが機体から外れる瞬間を報道しており、これは外れたtrimであると判明した。

レースチームが記録していたテレメトリデータではエンジンの油圧に異常はなかったが、突然G-levelが9Gまで上昇していた。この状態で機長は失神し、それも制御不能となった一因と考えられた。機長の航空身体検査記録では、高血圧の既往があったものの適合しており、検視では心臓発作は否定的であり、遺体一部の筋肉片から検出されたethanolとmethalnolは死後の化学反応によるものと判定された。

2番機からのwake turbulenceも考えられたが、レース状況からは否定的であった。Galloping Ghostは第二次大戦時から70年余り経った老朽機で、主翼を8ftと尾翼を1ftずつ短くする改造が加えられていた。elevatorは改修されておらず、1985年時点で塗られた黄色い塗料がネジに残っていて、金属疲労が認められた。レース前に左側尾翼の点検が欠落しており、高速飛行中に振動でネジが外れて、左側のtrimが脱落したことが事故の直接原因と結論された。

RenoのAir Raceはplace planeの右側に横並びとなった参加機が同時にスタアートして順位を決めるので、2007年には接触事故でパイロット3名が死亡する事故が起きています。インディー500に並ぶレースイベントですが、VIP席に機体が墜落して観客が多数死傷した本事故は、さすがに全米へ衝撃が走りました。

NTSB調査官が(お忍びで?)レースに来ていたのは、事故発生を予想していたのでしょうか?エンジンのクランクケースも割れるほど、墜落した機体は地上に激突して粉々になりましたが、TV中継の画像があって、左elevatorからのtrim脱落と判明したのは幸運でした。

それにしても機長の心臓発作説を検視で否定したとのことですが、遺体も当然バラバラになった筈で、どうやって否定したのかは理解できません。

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