![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97919547/rectangle_large_type_2_e64761f6fbc33251ec9384a57d5c4a3a.jpg?width=1200)
航空英語能力証明一次(学科)試験の概要
ICAO航空英語能力証明の一次試験は専らATCの聞き取り問題だけです。試験時間60分のうち、30分余りが準備と聞き取りに充てられ、残りはマークシートへの解答や見直しの時間です。聞き取り問題は、従来14のダイアログが出題され、それぞれに3つの小問が選択式で設定されています。そうなりますと、各ダイアログ当たりの時間は2分余りであり、そのうちATCの音声が30秒ほどであることから、解答時間は1分半で、1問当たり平均30秒です。
そのため一次試験に7割以上の合格点を得るためには、「ATCのやり取りを正確に聞き取ること」と、「選択肢の英文がATCの交信内容と微妙に異なる部分を正確に読み取ること」の2点が求められます。実際これは英語を母国語としている方々でも難渋する、かなり細かい内容の試験です。
そこで高得点を目指すには、ひたすら試験に慣れることが重要で、自分が最も集中しやすい解答スタイルを確立することが大切です。心に余裕を持たせるためにも、各ダイアログ解答後に十数秒の時間があると、だいぶ落着きが得られるかも知れません。その僅かな時間を使って、次のダイアログの設問と選択肢に軽く目を通しておけるからです。どういう状況のATCなのか?例えば、離陸前のエンジン不調であったり、離陸後の油圧系統の異常であったり、離陸上昇中のバードストライクであったり、着陸前の燃料不足であったりと、事前にちょっと頭に入れておくだけで、ATCのやり取りで要点となりそうな部分が思い起こされます。更に選択肢まで読み込んでおかれれば、ATCのやり取りと選択肢の細かい部分で問われそうな相違まで予想できます。その心構えでダイアログの聞くと、「そこはハッキリこう言っていた!」と少し違う言い回しの選択肢でも、自信をもって選ぶことが出来る筈です。
たまに、ATCが予想外に複雑な内容だったり、予想していなかった方向へ状況が展開していくこともあるでしょう。ですからATCのやり取りを素早くメモしておけることが重要です。その際、南西ならSW、上昇なら↗、右旋回なら®など、自分で特殊記号を決めておきます。またATCには数字が多用されますから、高度ならFL190、速度なら250kt、方位なら330°、燃料なら20Galなど、何の数値かゴチャゴチャにならないよう単位に留意してメモを取るべきです。複数の機体がATCとやり取りするダイアログも度々あるため、誰が送信したのか分かるように機番をメモする必要も出てきます。
実は、これらのメモさえしっかりと取れていれば、場合によっては全問終わってから、ゆっくり選択肢から正解を選ぶことも出来ます。実際はそこまで心の余裕が続かないでしょうが、少なくとも選択肢に迷う場合には、熟考せずとりあえず仮の解答をマークして、次のダイアログにある設問に先に目を通しておく方が有利かも知れません。解答作業がどんどん押して、次のダイアログの聞き取りまで疎かになるのは最も避けねばなりません。
ATCの聞き取りは試験会場で余程のアクシデントでもない限り、再度聞かせて貰えません。スピーカーから遠いと感じたら、試験開始前に前方の席へ移動させて貰えますので、事前に移動希望と申し出ましょう。ダイアログの中には、音声が多少ハウリングしていたり、雑音が混信しているものもあるからです。
一通りダイアログを聞き取り終えると、後は受験番号など事務的な記入部分の見直しをしますが、たぶん時間は余ります。かなりの受験者が解答用紙を提出して途中退場していきますが、最低1回は解答を総見直しすべきです。特にマークシートを1つずらして解答していないか等、悔やんでも悔やみ切れない凡ミスは必ず回避しましょう。案外と後になって落ち着いて見直してみると、不注意なミスを発見することもあります。但し再考しても正解に自信がない解答は、そのまま変えずにしておいた方が良いかも知れません。ダイアログの聞き取り直後で、記憶が鮮明な時の解答の方が正解かも知れないからです。
とにかく慣れが必要なのですから、どのようなスタイルで回答するのが最善か、自分なりに考えながら過去問を解き続けましょう。そしてLevel 5-6を目指す方々は、本番で正答率85%超(42問中36問以上正解)を目指しましょう。
一次試験問題は、以下に挙げるような14のダイアログで3問ずつ、ノンストップで続けられます。具体的なダイアログと選択肢を再現・解説した問題集は、有料ページに掲載してあります。
ダイアログ1:離陸直後の機体トラブル
Q1. 上空でのトラブル内容は?
Q2. PICがATCの提案を却下した理由は?
Q3. 着陸後のTaxiのルートは?
ダイアログ2:滑走路からの逸脱
Q4. 帯広空港の天候は?
Q5. ATCが最初に指示した事項は?
Q6. 滑走路を外れた事由は?
ダイアログ3:離陸中止
Q7. 離陸中止した事由は?
Q8. 当該機に発せられたTaxiルートは?
Q9. 当該機が指示を受け入れられない事由は?
ダイアログ4:離陸時の機体トラブル
Q10. 最初の不具合内容は?
Q11. 滑走路で停止した理由は?
Q12. ATCが調整して送った事物は?
ダイアログ5:着陸間際の機体トラブル
Q13. 当該機が遭遇したトラブル内容は?
Q14. Approachまたは着陸方法は?
Q15. 当該機がWide-patternを要求した理由は?
ダイアログ6:レーダーベクター
Q16. ATCの要求へ従えなかった理由は?
Q17. ATCがRadar-vectorした方向は?
Q18. PICが050°を要求した理由は?
ダイアログ7:トラフィックの交錯
Q19. PICが高度変更を要求した理由は?
Q20. ATCがIASを減速指示した理由は?
Q21. リポートされた機体のJA123Gからの位置、目視確認の有無は?
ダイアログ8:エンルートでの目的地変更
Q22. 飛行中のトラブル内容は?
Q23. 目的地変更の理由は?
Q24. 当初の飛行高度は?
ダイアログ9:乗客の体調不良
Q25. 現在の宮崎空港アプローチ方式は?
Q26. PICがATCに要求しなかった事項は?
Q27. 発病した乗客の病状は?
ダイアログ10:乗員の体調不良
Q28. 副操縦士の病状は?
Q29. PICが要求した着陸方式は?
Q30. 当該機がATCから尋ねられたことは?
ダイアログ11:エンルートでのホールディング
Q31. PICがANPANでHoldingを要求した理由は気象?位置?
Q32. 直近の風で風向は制限内か?
Q33. ATCがPICへ方位と高度を指示した理由は?
ダイアログ12:滑走路の閉鎖
Q34. 滑走路が閉鎖された理由は?
Q35. 当該機への指示内容はHold?Break?Divert?
Q36. 当該機の意向はLanding?目的地変更?Hold?待機?
ダイアログ13:離陸時に機体トラブル発生
Q37. 当該機の故障内容は?
Q38. 故障の原因は?
Q39. 当該機の要求内容はR/Wチェック?鳥類の駆逐?R/W変更?Ramp戻り?
ダイアログ14:目的地に急遽着陸できなくなった
Q40.問題の理由は機材の不調?天候急変?訓練生の体調不良?
Q41. ATCの通告事項は視程?雲底?
Q42. PICが意向を固めた理由は会社都合?安全運航?行先は高松か岡山空港?