歩行者中心の道路空間づくり
国土交通省では、「2040年、道路の景色が変わる」と題して、 概ね20年後の社会情勢等を念頭に今後の道路政策のビジョンと考え方が示されています。
5つの将来ビジョン
◯通勤・帰宅ラッシュが消滅
◯公園のような道路に人が溢れる
◯人・モノの移動が自動化・無人化
◯店舗(サービス)の移動でまちが時々刻々と変化
◯「被災する道路」から「救援する道路」に
政策の方向性(いくつか抜粋)
◯マイカーなしでも便利に移動
◯交通事故ゼロ
◯行きたくなる、居たくなる道路
◯持続可能な物流システム
◯世界の観光客を魅了
◯道路交通の低炭素化
◯道路ネットワークの長寿命化
このなかで、個人的に興味があるのは、歩行者中心の道路空間づくりについてです。
国土交通省では、今の自動車中心の道路において、ベンチ等を置いて滞在空間をつくる「歩行者利便増進道路制度」(通称:ほこみち)を創設し、主に都市の中心部において、歩行者中心の道路空間づくりが進められています。
道路を造るうえで車線の数や幅から歩道の幅などは、道路に関する法令に基づいて決められますが、法令上ではベンチを置くなどで、にぎわい創出を目的とした空間の位置付けはありませんでした。
また、道路沿線の店舗が歩道に椅子やテーブルを置く場合、道路を占用する許可が必要になりますが、占用期間が限られるなど、自由度は低いものです。
このような背景から、歩行者の滞在空間を整備する歩行者利便増進道路制度が令和2年に創設されています。
有名なのは、大阪市の国道25号(御堂筋)で進めている側道の歩行者空間化かと思います。
制度により歩行者利便増進道路に位置付けた道路には、ベンチ等を置く許可が、通常の道路に比べ柔軟に認められます。
歩行者中心の道路づくりにより人の滞在が増えれば、沿線店舗等への買い物機会の創出等が期待されます。
ただ、法令整備以外にも課題はあります。
既存で沿線店舗等がある場合、店舗前の道路は荷捌き車を一時的に停める等の利用もあるため、荷捌きの代替え道路等の有無の検討が必要となります。
また、大都市では、既存の公共交通機関があり、自家用車以外で中心部へ移動しやすい環境がありますが、地方では自家用車での移動が中心なため、公共交通機関の利便性が低く、中心部へ移動してもらうこと自体が課題になると考えます。
令和6年3月時点で、制度に基づき歩行者利便増進道路に指定がされているのは、全国で139路線あります。
歩行者中心の道路づくりには、課題もありますが、道路の利活用が柔軟になり、街の賑わい創出や街としての魅力向上につながると考えます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。