なぜ、ひょろひょろくんこそが相方なのか
アイドルの活動を追っかけていると、いわゆるマスコット性を帯びるに至った何らかの何かを目の当たりにすることがある
生きてるものから空想上のものまでそのバリエーションは様々で、例えば、大園桃子さんのぬいぐるみ "ガル助"、北野日奈子さんの愛犬 "チップ"。与田祐希さんのリアルヤギ "ゴンゾウ"、そしてかの有名な、西野七瀬さん謹製 "どいやさん"。あるいは日向坂46の "ポカ" のように、グループ単位のマスコットも存在する
そのアイドルの活動の中にちょくちょく登場して皆にしあわせを与える何者か。それぞれに個性があったり逸話があったり名場面があったりで、長い付き合いの中で愛着を持ったファンも多いと思う
我らが寺田蘭世さんにもそういう存在がいる。それもそんじょそこらのやつじゃない。2021年9月25日の時点で、のべ23年間も連れ添った本物の相方だ
寺田蘭世の相方、それこそがひょろひょろくんだ!!
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なにこれ
絶妙にコメントしづらい。確かに、リアルヤギやどいやさんに比べると遥かに常識的なハズなんだが、初見での対応に困るヤツだ。むしろリアルヤギの方が「マジのヤギかよ!」などと気軽にツッコミを入れられるので受け止めやすいまである。アイドルがこれをスッとお出ししたとき、ちゃんと丁重に扱うべきか、「なんだよそれ!」から入るべきか、絶妙に迷う造形をしているのだ
参考資料:横から観たひょろひょろくん(写真集発売記念ポスター企画)
アトリモさんが描いたイラストだが、横から観ると絶妙に奇妙な面白味がある。一目見てこれが何のぬいぐるみかわかる人は少ないと思う
ひょろひょろしてるからひょろひょろくんなのはわかる。パッと見ではそれしかわからない。青いクマらしいが、そもそもクマなのかどうかもよくわからない。首にスカーフっぽい布を巻いているうっすら青くて細長いクマらしき何か
このひょろひょろくん。他の乃木坂メンバーからはそこまで可愛がられてない。単なる事実だけで考えた場合、時代遅れで汚れの目立つカチカチのぬいぐるみなので仕方なきことかもしれない。ただこの時、メンバーから「それ汚くね?」と素朴な疑問をぶつけられて、洗濯機にかけたことはないが一緒にお風呂に入ったことはあると返すあたり、寺田蘭世さんはタダ者じゃない
そんなひょろひょろくんだが、私は大好きだ。私以外の寺田蘭世ファンとて、ほとんどみんなそうだと思う。↑の写真集ポスター企画をやるにあたっていくつかの案で投票を行った際、2位にダブルスコアでひょろひょろくん入りのイラストが勝利した。全体のクオリティは五分五分だったので、それだけひょろひょろくんへの皆の愛着が大きかったのだろう。もし寺田蘭世さんがひょろひょろくんを無くしたって言おうものなら私は三日三晩ショックを受けると思う。何を間違えたのか完全に情が移ってしまっている。本当に大事にしてほしい
なぜか
1つ目は、寺田蘭世さんがコレを23年間大事にしているという事実そのものだ。一緒に連れ添い、一緒にお風呂に入って、一緒にベットで寝て、屈託のない笑顔で相方と呼ぶ。この世にそんな可愛いことありえる?とは思うのだが、ひょろひょろくんをアップで見ると、その年季の入り具合に納得せざるを得ない。単なるキャラ付けでやっているならもう少しポップなぬいぐるみを使うハズだ
そして2つ目の理由は……
なんか途轍もなく既視感がある。いた。こんなヤツがいた。私は知っている。誰かに何かを問い質される度、筋金入りであることを証明してきた1人のアイドルを私は知っている。昨日今日タピオカを飲み始めたと思いきや、それよりずっと前から飲んでいて、目から闘志がはみ出してきた人間を私は知っている
寺田蘭世さんのお母さん曰く、蘭世の持ち物はみんな蘭世に似るという。そしてひょろひょろくんは、寺田蘭世さんの相方だった
寺田蘭世だ。寺田蘭世の相方だ。幼稚園児の頃、小食で身体の細かった蘭世さんの瞳に映り、「お前も一緒だな……」という、漫画の回想シーンでしか観たことがないやりとりをして仲良くなったそうだ
私はこの逸話が日々好きになっていた。いつぞや、後輩の梅澤美波さんがラジオでおっしゃっていたのだが、(一回り身体の大きい梅澤美波さんがちょっと驚く程度には)今の蘭世さんは良く食べる。それでいて今も細い。さらにさらに、寺田蘭世さんは極めて健康体だ。それはどういうことなのか
寺田蘭世さんは今も昔もベストウエイトで生きているということだ
乃木坂46は人気アイドルグループだけあってみな身体が細い。ズラリと並んでいるメンバーを細い・普通・太いの3グループに分けたとき、一番太いグループでも外の番組に出演したときは細く映ったりする。そういうほっそい集団の中でもひときわ細い寺田蘭世さんは、本当にひょろひょろだ。だがベストウエイトだ
痩せ型という個性をわかってもらえない。この世の不幸話の中ではちょっとしたちっちゃいことかもしれない。しかし、その1人にとっては切実なことである。コンプレックスの問題はいつだってそういうものだ。ひょろひょろくんをかたわらに置いて、寺田蘭世さんはその1つ1つと向き合ってきた
寺田蘭世さんは多彩であり繊細であり、何かと絶妙な個性の持ち主だった。個性というものは難儀なものだ。生きていく上で強力な武器となる一方、一歩間違えれば足枷にもなりかねない。細身という個性はチヤホヤされることもある一方、好奇の目に晒されて辛い思いをすることもある。そして他にも、幼き日の寺田蘭世さんにはコンプレックスがあった。生まれついて揺るぎのないものだ
名前
「蘭世」という自分の名前に一悶着がある。名前そのものは好きとのことだが、名前にまつわるトラブルが幼い頃から絶えなかった。初対面の人に「寺田蘭世です」と挨拶しても十中八九わかってもらえない。男子の名前と勘違いされてお道具箱が男子仕様になる。誕生日ケーキのネームプレートの名前を間違えられる。名前という個性1つとっても、ろくな目にあっていない
前回、寺田蘭世さんは "個性" にこだわる人だと書いた。誰も同じ人はいない。唯一無二の自分と向き合い、前へ前へと歩んでいくのが寺田蘭世さんの在り方だ。しかし、その道のりは今も昔もそう平坦なものではなかった
幼少期の寺田蘭世さんの逸話からは、大きな枠から外れてしまった孤独な人間の哀しみが伝わってくる。制度に馴染めず、友達も中々できず、特徴的な名前や体型を汲んでもらえず、小さなことから大きなものまで辛い思いをしていたようだ
寺田蘭世さんは生まれつき個性的だった
具体例をいくつか挙げると、寺田蘭世さんは3歳の時点でパーマをかけている(※リンク先は4歳)。自分から言いだして美容院に赴き、パーマ完了までの2時間微動だにしなかった人だ。幼少の時点でファッションに目覚めていた人であり、それは同級生からすると奇異に映っていたかもしれない。また、そんな人なので制服を着るのを嫌がっており、幼稚園には1ヶ月に数回しか通っていなかった
小学生に上がると(インフルエンザを除き)皆勤賞だったが、学校に行くのが憂鬱な少女だった。第1回でも述べたが、学校に上手く馴染めず、小学2年生までは誰とも口をきかなかったと語っている
ファッションの方も独自路線だった。最初はピンクでフワッとしたかわいい系だったが次第に違和感を抱き始め、小学校低学年のころ(母親に似合わないと言われたこともあって)自分自身のファッションを一度見つめ直し、黒を基調に髑髏や十字架を集めて「服が黒いのに髪が黒いと真っ黒だから」という理由で小学生ながら髪を染めたりもした。小五のときは迷彩柄を試したことさえあったという(その一方で、ひょろひょろくんと一緒に寝てるのが愉快な人だ)
そして中学に上がると、制服に甘えることなく日々是挑戦で好きなジャンルを拡張していく。ここまでくるともうなんでもありであり、ジャンルやブランドに囚われず独自のファッションを構築する現在の寺田蘭世さんへと繋がっていく
個性に悩みながら、個性に生きる道を拓いてきた人だった
そして、寺田蘭世さんはアイドルになった。個性が重要視される世界であり、その意味で、寺田蘭世さんは個性に対して前のめりになる道を選んだ
寺田蘭世さんは、世の中には個人差があるという事実(あるいは現実)をたびたび語っていた。人と人との間にはいつだって溝がある。わかってもらえないことが、わかりあえないことが、沢山あると幼少期からよく知っていた。その上で、寺田蘭世という門を決して閉じない人だった
人として大事なことを守り、相手のことを思いやり、できる限りの言葉を尽くして、わかりあう為の努力を欠かさない人だった。わかってもらうのみならず、わかってあげようともする人だった。↑で挙げた「みんなどこかでいっしょ」という一言を、疲れを吹っ飛ばす言葉の例として挙げるところにも、寺田蘭世さんの人となりがほんのりうかがえる。他人は他人でありそれはどうしようもないとしつつも、「仲良くしてください」と一言添えるような人だった
寺田蘭世さんという人は、唯一無二の個性を持って生きていくことの哀しみと、それを上回るほどの喜びをきっと知っている人だった
私は寺田蘭世さんの自己発信が好きだった。前回も触れたが、その気になれば誰でも発信を行えるこの御時世。ひとえに自分を知らしめる行為というと、気が滅入るあれやこれやを思い浮かべる人も多いと思う。ただ……、これは単なる私の印象なので絶対とまでは言えないが、それでも言いたい
寺田蘭世さんの自己表現にはいつだって健気でひたむきな何かがあった
人間としても、アイドルとしても、 "自分を伝える" ということに対して鈍感ではいられなかった。意外と伝わらない言葉を尽くし、1つ1つの行動で自分の在り方を示し、"寺田蘭世" を伝えることに一生懸命だった
自分が何者であるかを伝えてわかりあう。そのささやかで難しい行為について、寺田蘭世さんほど正々堂々としていて、寺田蘭世さんほど誠心誠意を尽くして、寺田蘭世さんほどひたむきにぶつかってきた人はそうそういないと思う
パッと見でなんなのかよくわかってもらえなくても、自分の個性を貫き、それでいて、他者と分かち合う心を持つ寺田蘭世さん。そんな人だからこそ、ひょろひょろくんを今も大事にしているのだと思う
次回は、そんな寺田蘭世さんの個性の伝え方について。テーマは #本心
以下、Twitterでグラビアアイドル化が著しかったひょろひょろくんの抜粋集
ヤツは生きてる!(母親談)
このひょろひょろくん。↓の寺田蘭世1st写真集にもチラッと出てくる。主役を喰いすぎないマスコットキャラの鑑。是非どうぞ!
寺田蘭世1st写真集『なぜ、忘れられないんだろう?』
前回⇒なぜ、ブランコは前へ前へと歩き続けるのか
次回⇒なぜ、嘘っぽい言葉はいらないのか
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