変わらないでいること
この世の中は目まぐるしく変わっていく。
変わらないでいることは難しいと思う。
変わることが要求させることが多いと思う。
変わっていくものばかりの世界でいつまでも変わらずにある優しさに救われる瞬間も確かにあるのだと思う。
時間が止まったような空間にしたいと店主さんが言った。その喫茶店の中にはゆったりとした時間がながれている。その店をオープンした当初から飾ってある時計も家具もきっと変わってない。時計が一度壊れたことがあったそうだけれど新しく買い替えるという選択肢は取らず修理に出したそう。店主さんが亡くなるまできっとその時計はそのお店にあり続ける。
そのお店には訪れた人たちが考えたことを書き残すノートがあった。日々は忙しないけれどこのお店はいつも変わらないで温かいから安心する。止まり木のような存在だと書かれてあった。生きていると何かしらのメリットがないと心地よく存在することが難しいと感じることもある。そういう時に変わらないでいつも帰れる場所があると思えることは支えになるのかもしれない。
わたしの中のスピード感と世間のスピード感は違う。わたしの中のスピードのまま生きれていると思う時は少ない。公園のベンチに座って木を眺めている時、目的地も帰る時間も決めないでふらふらと散歩している時、キャンドルの火を眺めている時。日々大学やアルバイトで忙しなく過ごしているけれどわたしの持つスピード感は本来こういうものなんだと確かめる。心を癒すのである。
元の話に戻るとその喫茶店の中に流れる空気感はわたしの中のスピード感と合致していた。そのお店は丘の上にある。風が吹くと葉っぱの揺れる音が聴こえる。忙しない日々から現実逃避できるような空間である。わたしのこころがグラグラしてしまう時にまたここへ行きたいと思った。わたしの帰りたいと思える場所が増えたような気がしてこんな素敵なお店に出会えたことがとても幸せだった。
生きるのは難しいと思う。
苦しい時もたくさんある。
しかしわたしの世界にはやさしくてきらきらしたものも確かにあって、そういう小さなときめきを抱きしめて生きていくのです。
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