なぜ地方議会のDXは進まないのか
本記事をご覧いただき、ありがとうございます!
元公務員ライターの 稲井 亮介 です!
私のnoteでは、「地方議会」に焦点を当てた記事を配信しています。
私は約10年間、地方の県庁職員として働いていました。
そして、退職1年前に配属されたのが、議会運営に携わる部署。
恥ずかしながら、それまで公務員でありながら議会のことなんて、これっぽっちもわかっちゃいませんでした。。。
ただ、地域にとってめちゃくちゃ大事なことが地方議会の場で決められていく、それを間近でみたときに「議会に無関心でいることはあまりに危険」だと気がつきました。
議会に無関心でいることは、自分が住む地域の未来に無関心でいることと同義なんですよね。
なので、
できるだけたくさんの人に地方議会の重要性を知ってもらいたい!
この一心でnoteの投稿を続けています。
なぜ地方議会のDXは進まないのか
さて、本題に入ります。
今回のテーマは、「なぜ地方議会のDXは進まないのか」。
いうまでもないですが、世の中、便利になりましたよね。
スマホ一つあれば、生活に不便することなんてほとんどありません。
ご飯も自宅まで届けられるし、映画だってみられるし、買い物だってできる。
新しい技術を生活の中に導入することで、生活は確実に豊かになっています。
そしてそれは、私たちの個人に限った話ではなく、自治体にとっても同じことがいえます。
自治体の業務に「デジタル」を取り入れることができれば、サービスの質を向上させることができるわけです。
とりわけ近年では、新型コロナウイルス感染症の拡大も後押しとなり、行政のDXは急速に進められています。
そして、それは、行政と表裏をなす地方議会でも同じことがいえます。
地方議会もDX化せねば!!!
そういう動きが全国各地で出てきました。
ただ、現状、地方議会のDX化はかなりスロースピード。
なかには、完全に停滞している自治体も少なくないでしょう。
これだけ、世の中がDX!DX!!DX!!!と騒いでいるものの、地方議会のDX化が遅れているのには、訳がありそうですね。
ここから、その謎を深掘りしていきます。
「デジタイゼーション 」と「DX」
そもそも 地方議会のDX とは何を指すのでしょうか。
たとえば、ここ数年の間に、多くの地方議会がタブレットを導入し始めました。
これまで議場に置かれていた紙の資料がなくなり、議員は議会中にタブレットを眺めることになったのです。
これによって、全員が閲覧できるフォルダにデータを入れておけば、わざわざ資料を印刷する手間も省けるし、資料を議員ごとに仕分ける必要もなくなります。
どうでしょう。
なんとなく今っぽい感じになっているように見えるかもしれません。
でも、これって、紙が電子的ななものに置き換えられただけなんですよね。
アナログ(紙)をデジタル(タブレット)に変換することは「デジタイゼーション」とも呼ばれ、DXとは差別化されています。
デジタイゼーションによる変革は、単なる業務効率化にとどまる傾向にあるので、本質的な変化をもたらすのは難しいんです。(もちろん悪いことではないのですが)
では、DXとはなにか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル化によって業務そのものはもちろん、組織自体のあり方や提供するサービスの質を変えるものでなければなりません。
地方議会でいえば、
住民の生活が便利に、豊かになる
議員と住民とのコミュニケーションが活発になる
議員の活動が透明性を高める
たとえばですが、このような変革をもたらすデジタル化こそがDXと呼べるのではないでしょうか。
地方議会のDXが進まない4つの理由
現状、議会のデジタル化は「デジタイゼーション」が精一杯。
「DX」には、ほど遠いと言わざるを得ません。
では、なぜ地方議会のDXは進まないのか。
それには、いくつかの原因があるのでいくつか例を挙げていきますね。
1.法的整備が追いついていない
現時点ではどうしようもない問題ですが、法的整備がDXの波に追いついていないのが、地方議会のDX化を妨げる要因になっています。
たとえば、議会の場にオンラインで出席することができるかどうか。
答えは、NOです。
多いところだと100人を超える議員が集まるのが地方議会の場。
コロナ禍で人の移動が制限され、密が禁じられるようになったころ、当然、地方議会をオンライン開催にできないかという議論が巻き起こりました。
そのようななか、国が法律に基づいた見解を示したのです。
以下が抜粋です。
つまり、
本会議とは別に開催される小規模な話し合いの場「委員会」はオンライン出席を認める。ただ、議場で全員が集まる「本会議」はオンライン出席は認められない。
ということらしいです。
あっちはOKなのに、こっちはNG、みたいなことが起きてるんですよね。
なんとも中途半端な状態だなと個人的には思わざるを得ません。
国の見解は、あくまで技術的助言ではなく、法的拘束力はありません。
ただ、地方議会に対して与えたインパクトは大きかった。
地方議会のDXは難しいかも・・・みたいなイメージができてしまった出来事です。
議会運営は、自治体にとって、日本にとって非常に重要なこと。
法律でガチガチに固められるのも、仕方がない部分はあります。
ただ、少なくとも現状では、
法律のせいで地方議会のDX化はできない
という一面があるのは確かです。
2.財源不足・人材不足
これもなかなか解決しづらい問題なのですが、財源不足がDX化の大きな障壁となっています。
というのも、自治体は目の前の火を消すことでいっぱいいっぱいな状況です。
たとえば、少子化対策、防災減災対策、地域活性化・・・自治体の存続を左右するような、お金をつぎ込むべき対象は無数にあるのです。
そのようななか、DX化はどうしても+αの事業としてとらえられてしまいます。
新しい考え方ですし、敬遠されてしまう場合もあるでしょう。
なので、DX化に十分な予算を充てることは、財源に乏しい自治体には少々ハードルが高かったりします。
また、金はあっても人材が不足している場合もあるでしょう。
地方議会のDXを進めようとしたとき、誰がやるのってなりますよね。
地方議会の知識ももちろん持っていることが前提で、さらに、デジタル技術や業務改革に精通した職員が必要になるんです。
ようやくWi-Fiが整備されてきたような職場で、そんなハイスペックな職員が育っているわけがないですよね。
なので、今は、どの自治体もIT人材の育成に力を入れています。
ただ、それはかなり長期的な取り組みになるので、取り急ぎは、外部から有識者を呼んでくるほかないのが現実でしょう。
その予算があればですが・・・。
3.デジタルよりもアナログがふさわしいこともある
あまりにもDXに固執しすぎるのも、よくないんですよね。
デジタル化するよりも、アナログのままでいたほうがいい場合もあるので。
例えば、議会のオンライン開催が可能になったとして、確実に円滑な議論が進められるかというとそうではありません。
システムにログインできない人がいるかもしれない、通信環境が乱れるかもしれない、画面操作がわからないかもしれない、、、
そんな心配をするとキリがないのは確かですが、そんな心配をしなければいけないほど、議会運営は重要なのです。
議論が遮られるようなことがあってはならないのです。
なので、今までどおり、議場に集まってもらったほうがいいじゃん。っていう考え方もあるんです。
こういうことっていっぱいあるんですよ。
慣れでなんとかなる部分もありはするでしょう。
ただ、デジタル化するべきところと、アナログを維持すべきところを慎重に見極めていかないと、DXによって、地方議会の質が低下する可能性もゼロではありません。
4.アナログ信者の存在
年配者はやっぱりアナログ派が多いです。
これは紛れもない事実。
で、事業の方針を最終決定するのは、役職の高い年配者です。
そりゃあ、スピード感のある改革は難しいでしょう。
もちろん、50代の職員でも、DXの必要性を理解しようとしている人はたくさんいます。
ただ、アナログで生きてきた人は、アナログが使いやすいって感じちゃうんですよね。
そういう私も、今30代ですが、例えば、資料を見るのでもやっぱり紙を好みます・・・。
特に、自分が作った資料をチェックしていると、パソコンの画面では見つからない誤りが、紙で印刷すると見つかるんですよね。
紙の視認性の高さは認めざるを得ず、職場にタブレットが導入される際もちょっと不安だったのを覚えています。
また、デジタルは効率化ばかりを重視する冷たいもの、アナログは丁寧で気遣いが感じられるもの、という価値観が形成されているのも事実です。
成果が出なくても一生懸命がんばる行為が称賛される、あれと似たような、日本人の美学があります。
例えば、
格式高い議会にオンラインで出席するなんてあり得ない!
そう考えている人も少なくないと思いますよ。
実際、議会のオンライン化が認められても、わざわざ議場に足を運ぶ人もいるでしょうね。
そんな感じで、脳に染み付いたアナログへの安心感みたいなものを、取っ払っていかないと、積極的なDXは実現できないのではないかと思うわけです。
まとめ:地方議会のDXにはまだまだ時間がかかりそう
地方議会のDXが進まない理由は、今回書いたもの以外にもたくさんあります。
もどかしい気もしますが、それだけ、地方議会は重要な存在であるということ。
地方議会は、地域の将来を動かす力のある機関です。
簡単に変革できるようじゃ、逆に、不安ですよね。
ただ、そうは言っても、優れたデジタル技術は積極的に取り入れていくべきでしょう。
世の中の変化に合わせて、地方議会も進化していかないといけません。