ポイントと税金
お店やネットで買い物をしたり、キャッシュレス決済をしたときにポイントをもらうことが増えましたね。ポイントは次回の買い物で代金の支払に充てたり、景品やサービスと交換できたりするので、とても便利でお得ですよね。集めている人も多いんじゃないでしょうか?
ところで、皆さんはポイントにも税金がかかる場合があるのを知っていますか? 課税について詳しい方なら「そんなの常識だよ。」とおっしゃるでしょう。だけど、ほとんどの人は、「ポイントに税金がかかるの? そんなの知らない。」とおっしゃるんじゃないでしょうか。ポイントの課税関係は少し複雑です。というのも「ポイント」は、その付与の方法により、課税の対象となる所得になる場合とならない場合があり、課税されたりされなかったりするからです。難しいことはいいから、結論だけ教えてくれっていう人もいるでしょうが、少しだけ租税法の考え方などを紹介するので、お付き合いください。
税金は、担税力(たんぜいりょく)と呼ばれる税金を負担する能力に応じて課されます。端的にいえば、お金が増えたり資産を取得したときに課税されると思ってください。ただ、お金が増えるときには、それを得るための支出を伴うことがあります。これを経費といいます。租税法では、収入から経費を引いた残りを所得といいます。所得に税率をかけて納税すべき税額が決まります。つまり、収入ー経費=所得、所得×税率=税額になります。そして、所得は、その性質に応じていくつかに分類され(これを所得区分といいます)、所得ごとに課税のルールが決まっています。所得区分については、必要に応じて説明するので、今は聞き流してください。
ポイントの付与の方法は大きく以下の4つに分類できます。
① お店(ネットショッピングを含む)で商品を購入したり、サービスを受 けたときにその利用額に応じてその事業者から付与されるポイントで、ヨドバシポイントなどがこれに当たります。お店独自のポイントカードでもらえるポイントをイメージすると分かりやすいと思います。
② クレジットカードやキャッシュレス決済などの利用額に応じて決済事業者から付与されるポイントで、楽天ポイントなどがこれに当たります。楽天市場を買い物をしたときに、複数の店舗で買い物をして1か月間の利用額に応じて楽天から付与されるポイントをイメージすると分かりやすいでしょう。
③ クレジットカードの新規入会キャンペーンなどでクレジットカード会社などから付与される入会特典のポイント。これはイメージしやすいですね。
④ ポイントサイトでアンケートに回答することによりポイントサイト事業者から付与されるポイント。これもポイ活などの一環で知っておられる方も多いと思います。
これらの4つのうち、①は課税されず、②~④は課税されます。また、課税されるものでも②③と④とでは所得区分が異なるため、納付すべき税額が異なります。それでは、①から④についてそれぞれみていきましょう。
①お店(ネットショッピングを含む)で商品を購入したり、サービスを受けたときにその利用額に応じてその事業者から付与されるポイント
店舗で1万円の商品を購入して、購入額の10%に相当する1000ポイントを付与され、次回の買い物の際に1ポイントを1円に換算して代金の支払いに充てることができるとします。この場合、代金は1万円であるが1000円の値引きを受けたため、実質的な負担額は9000円であったとみることができます。値引きは飽くまでも値引きであり経済的利得を生むものではありません。したがって、この場合は、収入があったと認められず、付与された1000ポイントについては非課税になります。
②クレジットカードやキャッシュレス決裁の利用額に応じて決済事業者から付与されるポイント
この類型は楽天ポイントをイメージすると分かりやすいでしょう。この類型のポイントは、クレジットカードの1か月間の利用額が10万円で、利用額の1%に相当する1000ポイントが付与され、これを利用額の支払に充てたり、次回の利用時に代金や料金の支払に充てることができるといものです。このポイントは商品やサービスの提供を受けた事業者から付与されるのではなく、クレジットカード会社から付与されます。楽天市場を経由して楽天カードでふるさと納税をした場合、利用額に応じて楽天ポイントが付与されますね。この楽天ポイントはふるさと納税をした自治体ではなく、楽天から付与されています。ということは同じポイントでも値引きとはいえず、ポイント相当額の贈与を受けたとみることになります。この場合、所得区分は「一時所得」とされます。一時所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではなく、また労務や役務の対価や資産の譲渡による対価でもない一時の所得とされます。クレジットカードでの支払は「営利を目的とする継続的行為」でもないし「労務や役務」でもないし、「資産の譲渡」でもないので、クレジットカードの利用額に応じて付与されるポイントは一時所得に分類されるわけです。一時所得の金額は、収入合計-経費(収入を得るために支出した金額)-特別控除額(最高50万円)で計算されます。そして、一時所得は、その金額の1/2を給与所得などの他の所得の金額と合計してその年の所得合計を計算し、所定の税率をかけて税額を計算します。なお、ポイントは付与されても使わなければ期限切れで消滅する場合があるので、付与された年分の一時所得になるのではなく、実際にポイントを使用した年分の一時所得になります。今年もらったポイントを来年使用した場合、ポイント使用による一時所得は、今年ではなく、来年の所得になります。なお、マイナポイントもこの類型に当たるので、一時所得になります。また事前チャージをした際に付与されるポイント(1万円をチャージすると1万10000円利用できるなどのサービス)も一時所得に当たります。
③クレジットカードの新規入会キャンペーンなどでクレジットカード会社などから付与される入会特典のポイント
クレジットカードに新規で入会するとボーナスポイントで5000ポイントプレゼントというキャンペーンをやってたりしますが、キャンペーン申込は「営利を目的とする継続的行為」ではなく「労務や役務」でもないので、この場合に付与されるポイントは一時所得になります。一時所得の課税ルールは②について説明したのと同じです。
④ポイントサイトでアンケートに回答することによりポイントサイト事業者から付与されるポイント。
ポイントサイトでアンケートに回答した場合や友人を紹介した場合などに付与されるポイントがこれです。この類型のポイントはアンケートに回答する、友人を紹介するなどの一定の「労務や役務」に対する対価という側面があるので一時所得ではなく、雑所得とされています。雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも当たらない所得をいいます。雑所得の金額は、収入合計額-必要経費=雑所得額となり、これをほかの所得の金額と合計して、その年の所得合計を計算し、所定の税率をかけて税額を計算します。ただし、年末調整を受けた給与所得以外の所得が年間20万円であれば確定申告は不要になります(地方税については要申告)。
今まで述べてきたことをまとめると以下のようになります。
いかがだったでしょうか? 一口に「ポイント」といっても、性質や課税上の取扱がずいぶん違うと驚いた方もおられるのではないでしょうか? Twitterでは税金についての話題の多々ありますが、正確な情報かどうかを吟味する必要があります。今までにいくつか、不正確なものやなかにはこうなってほしいという願望をあたかも現在の課税実務の取扱であるかのようにツィートしているものもありました。税については知らなかったではすまされないので、正確な情報が必要な場合は最寄りの税務署に相談されることをお勧めします。もちろん、知っている税理士がいるのであれば、そちらに相談してもいいと思いますが、税務署と税理士との見解が異なる場合もあるので、気を付ける必要があります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?