人生は物語だ
昔、漠然とそんな事を思いました。でもそれは冗長で退屈な、読む(見る)価値のないストーリーです。
あらゆる物語の主人公たちは、次々とやってくるトラブルに対して、気力を振り絞って根性で乗り切り、ある者は高い知性でスマートに乗り越えます。
でも僕の現実はそんなうまくいかなくて、「あ〜だめだ、しんどい、むいてない」と逃げ出す。
僕は高校を中退して、社会に出ました。同じ年齢の人も何人かいて、それなりに居心地のいい職場だったのですが、しばらくして気付きました。どうやら僕は他の人と比べて劣っている。
周りの人もわかってるっぽいけど、そんなものだと受け止めているようでした。
別にずっとここで働く訳じゃないから。
やりたい事見つけたら本気出そう。
そんな言い訳を並べ、現実から目を背けていました。
無知で逃げ癖のあった僕の目には、世界がとても難しくて、生きづらいものに見えていました。
ふと、本を読もうと思いました。
本を読めば、わかる事が増えて上手に生きられるかもしれない。
とりあえず簡単そうなやつを読もうと思って選んだのは、ハリーポッターと賢者の石でした。平積みにされていて、ちょっと分厚かったけど絵本みたいな表紙だったので、僕でも読めそうだと思いました。
そこから冊数を重ねていき、小説、ビジネス書、自己啓発、エッセイなど、あらゆる本を読んでいきました。
10年くらいたって、たぶん2000冊くらい読んだ時、10年の経験も相まってだと思いますが、点と点が線を結んで面を作り、いろんな事が府に落ちて、生まれ変わったような感覚を得ました。
見ている世界が白黒からカラーに変わったようなインパクトでした。
脇役Aの物語が、主人公の物語になった気がしました。
とても苦しい10年でしたが、それが主人公っぽくて良いなと思っています。
世に出ているスポーツ選手や起業家やインフルエンサーの人たちと比べれば、凡庸なストーリーでしょうが、僕は僕のペースで面白い物語を紡いで行きたいと思っています。
コロナもそうでしたが、何か大きな壁にぶち当たった時、精神的な弱い部分が出てしまってゲロ吐きそうになったりしますが、心のどこかでワクワクしています。某マンガの主人公のように「のぞむところだぁ!!」と叫んでいます。それは僕の物語に新しいエピソードが追加される喜びと、この壁を超えてまた一段強くなるぞ、と言う誓いの叫びです。
面白い小説を読んだ時、終盤に差し掛かると終わって欲しくなくて寂しい気持ちになりますが、ページをめくる手は止められません。ほどなくエンディングを迎え、心地よい満足感と名残惜しさの中で本を閉じます。
僕の物語もそんなふうに終わりたい。
100歳まで生きるつもりなのでまだ半分以上残っていますが、これからどんなストーリーになるのか、続刊を待ちわびるような気持ちで生きていきたいと思います。