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相手を理解しようとするなら事実だけでなく、「真実」を知る努力が必要なんだ。私たちは事実だけで相手を知っているつもりになっている。

今日は少し前に話題になった「流浪の月」を読了した。本屋大賞になった本だったためとても楽しみにしていた一冊。読み終わった時、「今の世の中の生きづらさ」と「今の世の中を生きやすくするための優しさ」が詰まっている本だと感じた。

今の世の中は“情報”が容易く手に入る。ネットニュース、SNS、アプリ等方法も様々。溢れている情報と比例して、「真実」が語られている情報はごく僅かになったのかもしれない。

芸能人のゴシップやスポーツ選手の話題なども、日々溢れんばかりのニュースになっている。しかし、内容は事実だとしても、事実に至る背景や心境については真実ではない事が多い。本人からすればとてつもなく迷惑だし、そのことによって傷ついている人が沢山いる。

「流浪の月」でもそのような事が描かれている。

あらすじに少し触れてみる

主人公である小学生の女の子は、従兄弟の男の子に性的暴行を受け家を出る。今まで暴行を受けたことを誰にも言えずにいた。恐怖心や羞恥心で言えなかったのと、言っても信じてもらえる人が周りにいなかった。むしろ、親戚は男の子が加害者であることに目を瞑る解釈をする。それらの経験により、主人公の女の子は自分の本心すら打ち明けられない、偽りの自分で生きていくことになる。

そして、女の子と出会う大学生の男性。こちらも子どもの頃から抱える病気(性の未発達)を打ち明けられずに大学生になり、主人公の女の子を家に連れて行き一緒に暮らし始める。

2人は同じ境遇同士だからこそ分かち合える部分もあり、信頼し合いながら暮らしていく。けど、いく月か経った後、大学生の男性は警察に捕まり、女の子は叔母さんの家に戻される。

2人の間には何もなかったはずなのに、世間では大学生の男は「少女誘拐犯」。女の子は大学生から性的暴行を受けたけど、トラウマで打ち明けられない可哀想な被害者との解釈になる。確かに女の子を連れ去ったと言う事実や何週間か一緒に暮らしていたという事実は間違っていない。けど、2人の間では“何も問題がなかった”という「真実」は誰も信じない。

この事件により2人の人生は世間の虚像に苦しめられ、世間の解釈に無理やり合わせながら生きていくことになる。(最終的には良き結論で終わるのだが、あらすじは一旦ここまでにする)

私たちは真実を知らないのに、事実だけを切り取って他人を傷つけている

今の世の中も小説と同じなのかもしれない。
私の会社でも社員同士がSNSで繋がっている。SNSで発言した内容や見た内容により、必要以上に誰かを傷つけたり、自分が傷つく事がある。

「本当はそういうつもりで書いたわけではなかったのに…」

テキストで書かれたことは事実かもしれないけど、その裏側にある当事者しか知らない真実は伝わらない事が多い。真実を知れば「何だ、そういうことだったのね!」と思えることも多い。

けど、“真実が不明確な事実”が不特定多数の人に届くのが今の世の中だ。

直接話せない人が多いのだから、本人しか知らない真実が理解されないままにその人に関する情報が伝わるのだ。特に著名人の方の場合は日常茶飯事かもしれない。

個人的な意見だが、「たった一つの情報で人を生かすことも殺すこともできる」のが今の世の中だと思う。

そして真実とは異なる解釈がうまれることでその人の人生を180度変えてしまうこともある。(プラスの方向であればいいけど、マイナスの方向にしてしまったらとても悲しい)

今私たちにできることって何だろう?

小説を読んでいて私はこのテーマについて考えていた。
ネットの誹謗中傷もだけど、直接的に知らない誰かを世の中に出回っている情報だけで印象つけてしまっている。

例えばさんまさんのように人前ではいつも明るく喋りまくっている人がいる。(そのような事実が情報としても出回っている)

そのことにより、「プライベートでも明るく喋りまくる人」との印象を持つのは違う。プライベートでもテレビの前の姿と変わらないかもしれないし、全く逆かもしれない。テレビの前での姿は真実ではない可能性もあるから。

一つの事実を知ったからといって“全てを知ったつもり”にならない事が私たちの生きている世界を生きやすくするするのではないか。
偏った解釈により相手を傷つける行為が少なくなれば、この世の中はもっと優しさに溢れ生きやすくなるのだと思う。

情報が手に入りやすい世の中は便利な側面が多い。けど、人の事に関して言えば、容易に間違った方向へその人を定義づける事ができてしまうようになった。そして、その事により心に傷を負ったり、他者が作った虚像に縛られながら生きていく人も増えている。

私たちにできることは一つの事実だけで、その人なりの全てを知ったつもりにならないこと。その事実に至るまでの背景や他の一面があることを理解すること。

この事によって私たちは、表には現れていないその人なりを理解しようとするし、理解する事で容易に他者を傷つける事が減るのではないか。

「流浪の月」は今の時代だからこそおすすめしたい本。私もnoteで書いたことを大切にしながら日々を過ごしていきたい。

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Yuki
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