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甲子園という場所vol.21

▶︎愛工大名電


 鳥栖商業

名電を選んで下さり、ありがとうございます。
これからは、どちらも応援して行きましょうね!

(場内アナウンス)
『愛工大名電高校。
   ノックにお入り下さい。』

選抜でも聞いたこのアナウンス。
夏は、このアナウンスから一瞬の出来事のようでした。
相変わらずバックスクリーンはデカく立ちはだかりました。
場内からも

『名電おかえりー!』
『待ってたぞー!』
『堂上ー!』

『古茂田ー!』(気のせい)

春経験させてもらった事で、意外に冷静でした。気が抜けていた訳じゃないです。

でも夏は夏の雰囲気があります。
場内の観客数も全然違いますし、集中力を奪う暑さ等、春にはなかったものが入り混じります。

変わらず難しい事は、普段の力を甲子園でも出す事が出来るかという事。
勝負に絶対はない。それが一発勝負の怖さです。
春の経験、投打のバランス、選手層、試合前の下馬評では、圧倒的に名電が優勢と言われてたと思います。

試合がいざ始まると、1点を争う攻防。
クリンナップ(3.4.5番)の前にランナーを溜める事が出来ず、徹底した堂上対策。
単打は出ても長打が出ない。
選抜と同じ流れに。
打てそうで打てない、逆に打たされてしまう場面も多く、俗に言う『ハマる。』

相手ピッチャーにハマってしまい、気づいたら1点ビハインドで迎える最終回、名電の攻撃。
バッターは、この試合、

途中出場の古茂田。

9回ツーアウトランナー1塁。

最後のバッターになるのか、はたまたこの試合のヒーローになるのか。
その初球でした。

『カキーーン!!』


古茂田の鋭いスイング、快音、観客のどよめき、今日1番の盛り上がり、ルックス、カリスマ性、女子人気、全てを超越した打球。
だったはずなんですが、

センターがこちらを向き、簡単に片手で捕球され、万事休す。

テレビで見ると、結構良いあたりだったんですよ。記録は、センターフライ。
でも自分の中では、センターライナー。
同じアウトですけど泣

テレビでよく見る、最後はファーストにヘッドスライディングでゲームセット。とはならず、
1塁ベースを軽くまわったあたりで、最後バックスクリーンを見て仁王立ち。
鳥栖商業アルプスの大歓声に包まれる中、


愛工大名電ー鳥栖商業
   1 ー 2

古茂田は、最後のバッターとなり、名電は惜しくも初戦敗退。1点が遠かった。
紫に染まった名電アルプスに一礼して、みんな崩れ落ちる選手も。
名電の夏が終わりました。

あれだけ地方大会で打ちまくって、甲子園でもその打撃が発揮されると注目されて、選抜から合わせると計3試合で、2点しか取れませんでした。
これは、今後の名電野球を大きく変える事になります。

試合も終わり、これもよく見る、負けたチームが甲子園の土を各々の袋に入れるシーン。
春は、夏また帰ってくるという思いで、持ち帰らなかった。
夏は、さすがに3年生にとっては、ラスト。
確実に用意します。

『!!??』

『....!?あれ?袋がない!!
          完全に忘れた。』

1人でベンチ内を走り回る古茂田。
そして、次のチームが来ている。
みんな、土を袋に詰め出している!

『とりあえず、みんなの所に行こう!』

どさくさに紛れ、列に加わり、隣の選手の袋に詰める古茂田。
古茂田は、カメラを横目に隣の選手の耳元でささやきました。

『帰ったら甲子園の土分けて!!』

土は目の前にあるのに、袋がない。
本末転倒でした。

多分、負けて甲子園を後にするチームの中で土を持って帰らなかった選手は、古茂田だけかもしれません。
土持って帰って来てもらった芸人。
(アメトーークで話したいよー!!笑)

1つ言える事は、
とにかく本当に観客の方々が温かった。

『また来年も戻って来いよー!!』

『名電応援してるぞー!』

『堂上ー!プロ行けよー!!』

『古茂田もなー!』(気のせい)

この年の新チーム、名電は、秋季大会も東海大会も勝ち抜き、明治神宮大会を制覇。最短で、再び聖地に戻って来る事になります。
愛工大名電初の甲子園準優勝。
とてつもない記録を作ってくれました。

甲子園の忘れ物は、優勝旗。
甲子園での忘れ物は、土を入れる袋。

代々、古茂田家に語り継がれて行く事を心から祈ってません。2番目に関しては。

最後のグランド挨拶。

堂上『気をつけ!ありがとうございました!』
  

全員『ありがとうございました!!!!!!』


最後の夏を甲子園で終われた事。
野球をやらせてもらった環境、支えてくれた方々、いろいろな人へのいろいろ思いを噛みしめながら....。

             〜つづく〜
#野球 #スポーツ #甲子園 #野球note

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