井上拓真敗れる
井上拓真vs堤聖也の試合があった。遡って12年前高校時代、井上が勝って堤が負け、それ以来、堤はリベンジを狙っていたという。エリート対雑草。プロになったのも井上がなったから。井上を倒したい、それ一心でプロ生活を過ごしていたらしい。コツコツと勝利を重ねて、バンタム級モンスタートーナメントという井上が属するジムが開催した大会優勝したのが、堤だった。そして、世界バンタム級(1.2位空位)3位にのし上がり、井上への挑戦権を得た。
かたや井上は、モンスターの弟として、プロ入り、よくも悪くもいつもボクシング界の注目の中にいた。全勝で世界戦でウバーリに負けたあと、世界チャンピオンになり、3回目の防衛戦に堤と戦うことになった。
その中で中谷という長身サウスポーが、現れてあまりの強さに世界を驚かせ始めていた。井上、堤と階級が同じ彼は、ランキング1位、チャンピオンをKOで倒し、PFP9位にランクインする逸材。彼が拓真とやりたいといい、拓真も中谷と統一戦をしたいという中での堤戦を迎えた。
拓真が、圧勝します。と拓真の兄、尚弥がテレビインタビューに答えた。世界と日本の違いを見せますと。
ゴングが鳴った。ジャブの刺しあい。拓真が勝っているように見えた。
堤の手数がすごい。プレスをかけて手数を出す堤と、バックステップとボディーワークでディフェンスを魅せる井上。潮目が変わったのは5ラウンドあたりから、堤のパンチが当たる距離に拓真がいて、クリーンヒットが増えたように見えた。7ラウンドは拓真が距離を下げ、よくジャブが当たっていた。次のラウンドは堤が距離を潰して、拓真がロープを背負わされることが多くなった。
拓真は10ラウンド、時計を見たのか、セコンドを見たのかわからないが一瞬堤から目を逸らせたように見えた。猛然と襲いかかる堤。ダウン!拓真は両手を上げて、抗議するが受けいられない。そこからは、堤が攻めて拓真が受けて凌ぐ展開になった。
データによると堤が拓真の倍の約1000のパンチ数を出していたという。しかし、有効打率は拓真が上回っていたらしい。手数とアグレッシブさが技術を上回り堤の3-0の判定勝ちとなった。
根性が技術を上回ることもあるのだ。血が滲む努力の結晶だろう。拓真は、うまさを見せたい動きがあったように見えた。世界と日本の違い。それは紙一重で、徹底した作戦と熱い気持ちで乗り越えるもの可能なのだ。今回の試合で教えてもらった。2人の激闘に感謝したい。今回のAmazon興行でのベストバウトだろう。