株式市場と、46億年史に見る地球クライシス(後半)
新型コロナの最初の症例が見つかってから、まもなく1年半が経とうとしていますが、依然として感染拡大が続いています。感染症やウイルスを通じた経済へのショックは、ほとんどの投資家に取って予期せぬ「ブラックスワン」で、株式市場に大きなショックをもたらしましたが、 5億4100万年前からの、地球上に肉眼で見える生物が生息した「顕生代」で起こった5つの大絶滅「ビッグファイブ」のうち、4つがマントル対流など地球の内部活動に伴う火山活動であったと推察されている旨を前半で書きました。
けれども、実は「ビッグファイブ」最後の、恐竜を絶滅に追いやった中生代末の巨大隕石衝突は、デカン高原の超巨大な火山活動を引き起こし、絶滅の一つの原因になったとの論文が、米プリンストン大学ブレア・ショーン教授らによって、発表されています(2015年1月)。
3.中生代末(約6600万年前)~巨大火山活動を起こした隕石衝突
恐竜を絶滅に追いやった巨大隕石衝突説ですが、今では誰もが知るところとなりました。1980年にノーベル物理学賞を受賞したルイス・アルバレッズが、その専門以外の分野で、子の地質学者ウォルター・ アルバレッズ と共に提唱し、1991年にはメキシコ・ユカタン半島にその痕跡のチクシュルーブ・クレーター(Chicxulub crater)が発見され、今では確実視されています。中世代白亜紀6604万年前、直径10~15kmのチクシュルーブ小惑星 (Chicxulub asteroid) が地球に衝突し、地球の表面を覆う地殻を軽く突き破り、海底に160kmの穴を開けました。1500km先まで火の被害が及び、高さ数百メートルの津波が発生したと推定されています。
隕石衝突説が優位になる前は、富士山2千数百個分もの溶岩を吐き出し、地球史上でも稀に見る巨大なインドのデカン火山が、300万年近く活発化と沈静化を繰り返し、決定打には欠くものの、原因だと考える学者が多くいました。けれども、先述の2015年に ショーン教授らが発表した論文では、超巨大地震の1,000倍にも及ぶ隕石衝突のエネルギーが、地球表層を伝わって、隕石落下地点の反対側(対極点)に集まり、デカン高原下の膨大なマグマが一気に上昇し、超巨大な火山活動を引き起こしたとしています。隕石衝突や火山活動で、約10年間、煙霧や煤が太陽光を遮り、地球の気温は10度近く低下し、植物は光合成が行えず死滅し、食物連鎖の頂点に立つ恐竜も死に絶えました。最後の「ビッグファイブ」では、地球上の生物の75%が姿を消したと見られています。
以上、 5つの大絶滅「ビッグファイブ」 の全てにおいて、マントル対流など地球の内部活動に伴う火山活動が関係していたと結論付けられそうです。
4.人類の今後と、株式市場
地球の生命体を少なくとも5回の大絶滅へ追いやってきた、地球の内部活動に伴う火山活動ですが、人類は依然として無防備で、太陽光の長期間の遮断や、メタンガスの発生による酸素欠乏などが生じれば、他の生物と同様に、人類も滅亡の危機に晒されるでしょう。
ただ幸い、生命の大量絶滅を起こしてきた、破壊的な上昇流であるスーパープルームなどを伴った巨大な火山活動は、現在のプレートテクトニクス運動によって進行中であり、ユーラシア大陸やアメリカ大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸などが一つに合体する2~4億年後の超大陸の誕生までは、その可能性も高くはなさそうです。
株式市場での株価の上昇も、人類が経済活動を継続できる事が前提での話になりますが、過去46億年の地球史で、地上の生命を大絶滅に追いやってきた5つのビッグファイブを前半と後半に渡って振り返ると、マントル対流やプレートテクトニクスなど地球内部の活動に伴う巨大な火山活動が、地球の生命を危機に追いやり、今後も最も高いリスクであり続ける事を、念頭に入れておきたいものです。