生きもののえこひいき、していませんか?
はじめに!
この記事は「生きものの好き嫌いが悪い」という内容ではありません!
好き嫌いは誰にでもありますし、毒を持つ種類がいるヘビや虫を警戒するのは生物として当然ともいえます
(あぐりは全ての生きものが大好きですが!)
ただ、好きや嫌いは置いておいて、生きものや自然に人が関わることは多いです
その際に、今回あぐりのするお話しを思い出していただければ嬉しいです!
きっかけは”荒川のシカ”
2020年6月3日、東京都足立区の河川敷にて1匹のシカが捕まえられました
このシカは何度も目撃されており、区は地域住民が襲われる可能性もあるという理由で”害獣駆除”として許可を東京都から得ていました
あくまで害獣駆除、本来であれば殺処分となるところでしたが、ある芸能人の方をふくめた一般の方々がSNSでかわいそうだと拡散
最終的に【市原ぞうの国】という動物園に引き取られました
一見、美談に思えるこの出来事ですが、見方を変えると別のものが見えてきます
荒川のシカの裏にあるもの
なぜ今回、シカを捕まえる際に”害獣駆除”として許可を得たのか
そして、逃がすわけではなく殺処分となる可能性が高かったのか
それは実際に、シカによる様々な被害があるからです
【シカによる被害例】(データは平成30年度のもの)
・シカによる1年間の農業被害、54億円※1
・野生鳥獣による樹皮や枝葉を食べるなどの森林被害約6千ヘクタールの内の7割がシカ※2
・シカが増殖したことによるマダニ等の吸血動物の増加、感染症の媒介のリスク
・シカの食害による山の下草、および土壌表面の消失
このように田舎では人にも自然にも被害が多く出ており、大きなほ乳類なので攻撃されてしまえば人が大ケガをする可能性もあります
それらの被害防止などを目的に、シカはなんと1年間に約56万1千頭も捕獲されています※3
さて、この農業被害、林業被害、マダニによる感染リスクについてどう感じられましたでしょうか?
そして、1年間に約56万1千頭が捕まえられている現状で、そのシカ全てを殺処分せずに対応できるでしょうか?
今回、1つの先例を作ってしまったことで、今後この件を駆除の度に抗議として持ち出されて現場が混乱する可能性は十分にあります
目の前の命だけを見て抗議をすることは一見、とても正しく思えます
ですが、駆除などの野生生物への対応の裏には実は様々な”理由や被害”があること
知らずに行った行動が裏にある被害を拡大させることを、多くの方に知ってもらえると嬉しいです
感情によるえこひいき
感情や、命を大切にしようという気持ちは本当に大切なものです
ですが、これがシカ以外、たとえば虫やヘビ、ダニであっても今回のようにたくさんの方々が声を上げたでしょうか?
人はほ乳類や鳥のような、人に近いものほど感情移入をします
それは悪いことではありませんが、野生生物に関わることは感情で判断してよいものではありません
人に嫌われやすい生きものたちが自然の中で大切な役割を担っていることもあれば
一般的にかわいいとされるシカなどのほ乳類が人にも自然にも被害を多く出していることもあります
命に関わる大事なことだからこそ、調査をし、データをそろえ、個人の好き嫌いではなく科学的根拠にもとづいた判断をしていかなければならないのです
守るべき生きものはえこひいきされづらい
これは、あぐりが活動するにあたって感じている大きな課題です!
なぜなら、守るべき生きもののほとんどがふだん会えない希少種、多くの人にとって見ることのない生きものです
そして、一般的に嫌われやすい虫、は虫類、両生類も多く含まれています
感情移入やえこひいきは、ほとんどされません!
日本最大の水生昆虫タガメ、昔はたくさんいたが今は限られた場所でしか会えない
ですが、彼らがいることにより食いつ食われつの生態系が成り立ち、彼らの生活によって土や空気や水のほか、人や野生動物が生きるのに必要な様々なものが作られます
えこひいきで守る守らないが決まると真っ先にこれらの生きものが消え、大きな影響が人にも自然にも現れると予想されます
だから、えこひいきはいけないのです
実は、えこひいきされやすいのが…
外来種!
外来種はペットとして輸入されたもの、飼育されている頭数の多いもの、釣りなどで利用されているものが多く、また身近な自然に生息しているものが多いです
代表的な種はアメリカザリガニ、ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)、ブラックバス、アライグマなど
これはカムルチー、大きいので釣ると楽しいらしく、川にはなされてしまって野生化したもの
人気な種が多く、人が住む場所の近くにも多く生息する彼らは、とてもえこひいきをされやすい…!
なので、しばしば外来種の駆除には批判がよせられます
たとえそれが日本に元々いた多くの生きものを守る為であっても、農業被害などの人への被害を起こしていても、当事者以外の方にえこひいきされやすいのは身近にいる外来種なのです…
この状況を変えていかないと、人にとっても自然にとっても良くない方向に行きかねない
だからあぐりは、生きものをもっと身近にしたい!という思いをもって、今の活動を行っています
えこひいきはしかたない!でも!
生きもの好きの中でも、えこひいきはあります!
虫好き、鳥好き、海好き、それぞれが特に好きな生きものに対して肩入れをしてしまうのはしかたないことです
ニホンアマガエル、えこひいきしたくなるかわいさ
ですが、人が自然に関わるときに感情的なえこひいきをすれば、結局守りたい生きものや自分たち自身にそのつけが回ってきます
感情に流されず、様々な被害、利益、物事が行われる理由を調べ、わからないことは複数の専門家、ないし専門家に通じる人に話を聞く
色々な角度から見ることで、はじめは見えなかったものが見えてきます
むずかしい事ですが、行動を起こすにあたってこれらはとても大事なことです
さいごに
ということで、今回は生きもののえこひいきについてでした!
今回お伝えしたかったのは、以下の3つです
・裏にある行動の理由や被害などの情報を調べる
・野生動物の問題に好き嫌いや感情を入れて判断しない
・はじめに見えた点だけでなく、様々な角度からものごとを見る
野生動物との距離感、判断を間違えることは人と動物、両方の命に関わるリスクをうみだしかねません!
特にふだんそれらに関わらない方は、何か行動を起こす前にまず調べてほしい…!
わからなければ、専門家や環境保護、普及啓発に関わっている生きもの好きにきいてほしい…!
もしみなさんがそのようなことを知り、調べたい、行動したい、と思われた際に周りに上記のような方がおられなければ、ぜひおきがるにあぐりにご連絡くださいなのだー!
あぐりのわかる範囲で調べ、お答えしますっ
※1 捕獲鳥獣のジビエ利用を巡る最近の状況. 農林水産省.
https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/attach/pdf/suishin-140.pdf
※2 野生鳥獣による森林被害. 林野庁
https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/tyouju.html
※3 ニホンジカ・イノシシ捕獲頭数速報値. 環境省.
https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/sokuhou.pdf
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?