「ぼくらに嘘がひとつだけ」
7月は久しぶりにビジネス書以外のものを読みました。
将棋をテーマにしていた本なので前から気になっていたのですが、ざっくり言うと奨励会(プロ棋士になるためのリーグ戦が行われる日本将棋連盟のプロ養成機関のようなもの)にいる二人の少年と出生時の取り違え疑惑についての物語。
ここからはネタバレ含むので、読んでない方はご注意を。
感想としては、物語としては終盤も二転三転して面白かったと思います。ただ、個人的には思うところがいくつか、、、、。
物語のはじめは、冴えない女流棋士Aの視点で描かれているのですが、とある大会で本戦まで勝ち進んだら、引退をやめて好きな人に告白しようと考え、友人でもあり同じく実力もない女流棋士B(父親が有名な棋士で、彼女自身は実力も才能もないが、すごく性格が良くて美人という設定)も同じく、負けたら引退と息混んで大会に出る。
結果、棋士Aは棋士Bに予選であたり勝利するのだが、Aが想いを寄せていた男性棋士がBを慰めているところを見てしまうという。そしてAは兼ねてから考えていたようにその大会を機に引退してしまう。
ここら辺まではなんか少女漫画にもありそうな展開。。
その後、AとBはそれぞれ子供を妊娠している時に再開するのだが、Aは夫の浮気で離婚した後に、彼との子供を身篭っていることがわかりシングルマザーに。片や、BはAが好きだった男性棋士と結婚して順風満帆。
その後の内容はすっ飛ばしますが、何が気になったかというと、物語のはじめAの視点で描かれているのに、Aはとことん可哀想で読んでて辛かった。実の子には「母親とは思えない」なんて言われるし。(A自身も取り替え後も実子にはそんなに愛情も見せなかったから原因はあるが)
自分が育てた子は、本当の家族のもとで実験的に暮らし始める。誰もAを気にしている人がいなさすぎて辛いww
もう一方の母親のBは、なんというか完璧な人の設定なのだ。将棋は全然才能無いけど努力家で、美人で、明るくて、、、(自分の妬みも入ってそうw)。Aの視点で先に読んでるから感情移入しているのもあるけど、Bのキャラクターは現実には存在しない人の気がする。女性の世界、特に勝負のつくような世界はもっとドロドロしてて、清いままの完璧な人なんていない(笑)。男性の理想の女性像を絵にした印象を受けた。
まぁ物語の主人公は彼女たちではなく、二人の子供たちのBが結婚した男性棋士なので、上記が気にならない人も多いかも。
もう一つ気になったことを書いておくと、物語には七冠の棋士とかが出てくる。モデルは羽生さんだろうと思うのだけれど、漫画や本になりそうなありえない強さのキャラクターが本当にいるのだから、羽生さんがすごすぎてやばい。(語彙力ないw)
少し嫌だったのが、実際に私の大好きな棋士の先生が最年長で悲願の初タイトルを取ったのだが、物語のBと結婚した男性棋士が最後に最年長で初タイトルを取るのだ。。私の推し棋士の初タイトル獲得は本当に感動するもので、ファンとしてとても大切に思っているから、物語でさらっとなぞって書かれているのがちょっとうーーーーーーーんとなった。最年長で初タイトルは物語に加えなくても良い要素だったと思う。
物語の中には、年齢制限で奨励会を退会し夢を断たれたキャラクターが、編入試験の権利を得て再度チャレンジするところが描かれているのだが、実際にもその制度はあって、現在はプロ棋士の瀬川先生も編入試験を受けた一人で物語と同じく、因縁というかエピソードになるような相手が試験官となって対局している。
(瀬川先生の一局目の相手は、フリークラス(順位戦には出られないがプロになれる権利)入りの権利を蹴った佐藤天彦先生と、どうしても棋士になりたかった男vsプロ棋士になる権利を蹴った男という組み合わせにされていた。
天彦先生は特にそういう周りの声などは気にならなかったらしいwww
この本の作者と天彦先生が話している動画があるので、ぜひ見て欲しい。先生の言語化する能力が凄すぎて、、、、。この人何者なんだと思ってしまう。そして将棋も強い笑
観戦しているこっちは、「ドラマだ!」と思ってついつい楽しんでみちゃうけど、当の本人はすごく複雑なんだろうなと本を読んで思った。(その人の人生を左右するような勝負に関わるのは結構想像すると辛い)
作者自身も仰っていましたが、実際の棋士の先生のエピソードがフィクションよりも面白いというのは本当だと思う。
上記のように、狙って対戦相手が組まれていることもあるけど(多分米長先生のしわざ笑)、本当に感動する話や、ドラマだなと思うことが多い。
本の感想というより、最終的には将棋棋士愛の話になったけど、もっと多くの人に将棋棋士について知ってもらいたいなと思いました。