若大将、仕事辞めるってよ。
六月30日、2019年
日本の家から徒歩一分のところにあるBistro Syriaという店の若大将が最近仕事をやめた。
若大将は毎日、昼から深夜まで働きづめだった。
本来の営業時間を過ぎても、店を開けていることがほとんどで、腹をすかせた夜光虫どもがこぞって押し寄せるのだった。
Eisenbahnのマスコットキャラクターと言っても過言ではない、みんなから愛されるぶっきらぼうの若大将。空腹に耐えきれず、パーティーから抜け出した時、もしくは空腹に耐えきれず、日本の家から抜け出した時、何度もここでお世話になったものである。
私のお気に入りはトシュカ、パンに肉をぎゅうぎゅうに押し込むタイプのものではなく、薄いクレープに近い生地で包まれているタイプのものだ。
そもそも深夜に食べるトシュカは、麻薬並みの中毒性を秘めていると私は思う。一口かぶりつくと、気付かぬうちに二口、三口とかぶりついている。
むしゃむしゃとかみしていく度に、味覚を通じて処理しきれぬほどの旨味が脳みそに送り込まれ、シナプスをビリビリと刺激する依存者続出のトシュカ。
そういえばここに初めて来た時も、健さんに連れられて一緒にトシュカを食べた記憶がある。気付かぬうちに、食い切っていた。その日から、トシュカ中毒者の仲間入りを果たしたのだった。
若大将が辞めて以降、Bistro syriaは夜も更けきらぬ前に店を閉めるようになった。誰もあんな夜通し働けないのである。EisenBahn通りには腹をすかせた暇人どもが食い物を求めて、夜な夜な彷徨い歩いている。 そして、私も同じように、腹をすかせ、寝るに寝れない夜をたびたび過ごしている。
そして若大将は自分の店を持つべく、日々探し回っている。
是非とも、EisenBahn通りに店を作ってほしい。幸いなことに、彼が毎晩、働きづめだったおかげか、沢山のファンがいる。きっとすぐに見つけれるだろう。
もう一度、若大将の作る、日替わりで焼き加減の違うあのトシュカを食べたい。