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このカードは現在お取り扱いできません
暗証番号を間違えまくって使えなくなったキャッシュカードを3社分持っていたことがある。それがそのまま私の持っているキャッシュカードの全てだったので、カードを再発行してもらうまで現金を下ろせない状態だったのだが、当時は引っ越しの時期で住所変更等々手続きがややこしく、結局2ヶ月ほどそのままにしていた。
その2ヶ月の間は現金を人から貸してもらってその場でPayPayから返済したり、隣で切符を買っていた知らないおじさんに会社の行事で貰ったQUOカードを買い取ってもらったり、現金の工面に苦労した。主に他人に迷惑をかける形で、なので、何を被害者ヅラしているのだという話ではある。
ところであの暗証番号というシステム、あんまりに「温度」がなさすぎる。例えばATMでは、3回連続で番号を間違えるとカードが使えなくなるのだが、その素振りを一切見せない。1回間違えるとちょっと叱られて、2回めは警告されて、3回目はアウト宣告、ならばこちらも納得こそできる。しかし実際は、3回とも「恐れ入りますが、初めからやり直してください」のアナウンスと共に、カードとレシートのようなものが排出される。レシートのようなものには「暗証番号が違います」の文字。
ああ、うっかりうっかり。さっき入力した番号ってどっちだっけ?(私の暗証番号というと、だいたい2通りの使いまわしだ。)それか打ち間違いしたかな?と、ヘラヘラ再チャレンジを繰り返す。すると次に排出される紙の印字はこうだ。
「このカードは現在お取り扱いできません」
随分と詳しいだろ。人生で4回も経験したんだからそりゃあ詳しくもなる。
最初にこれを経験したときは、あまりにさり気なさすぎて相手側の不具合かと思った。日にちを改めても相変わらず使えないので「勘弁してよね」のスタンスで銀行に連絡して恥をかいた。
逆に世の中の人間は、自分が先ほど入力した暗証番号が曖昧になったりしないのか。どこにどの暗証番号を使ったのか、全て覚えておけるものなのだろうか。すごすぎる。ピクシブを利用するたびにパスワードを変更している私には一生たどり着けない領域である。
犯罪のニュースやネットでの諍いをみるたびに、全世界の人間が全て自分の分身であったならば、この世はいかに平和になるだろうか。法整備のコストはいかに削減されるのだろうかとナルシズムに浸っていた時期もあったが、その世界が実現されれば銀行員の私は過労死するのではないだろうか。
ちなみに止まった3枚のキャッシュカードのうち、2枚は未だ再発行の手続きをしていない。この際口座凍結とかされててほしい。