恋活リハビリ②〜西野カナを心に飼いならすアラフォー〜
田中と、とぼとぼ歩いて帰宅した数時間後には仕事に行く支度をしていた。
ホテル問答の雨上がり、わたしたちは手を繋いでゆっくり歩いた。
男の人と手を繋いで歩いたのなんて、いつぶりか思い出せない。
誰も、そんなこと知らないのに、嬉し恥ずかし朝帰り、、、そんな気持ちで仕事へ向かう。
「昨日は、ありがとう。ちゃんと起きれた?」
田中からきたメッセージに「こちらこそありがとう。仕事がんばってね」と、なんのひねりもないメッセージを返す。
ここから、何か始まるんだろうか。
ふわふわ、浮ついた気持ち。
この感じも久しぶりすぎて楽しいなぁと噛み締めていた。
「明日の夜、こみかるの家の前を通るんだけど少し会えない?」
もう次のお誘いが来たことに戸惑いと嬉しさがこみ上げる。事件だ事件だ、これは大事件だ!
基本的に自己肯定感の低い私は「バツイチ、子持ち、お金も地位もなく、容姿端麗とは程遠く、好きな映画はスプラッター、愛読書は月間ムー、果たしてこれらを受け入れてくれる殿は現代にいらっしゃるのか」と思っていたくらいなので
こいつは、曲者なのか
心が広いのか、私のことが好きなのか
好きじゃなきゃ誘わないよね、うんうんうん!
田中アンタのこと好きなんだよ、絶対!
イケるよ、イケるよ!
私の中の女子高生が脳内座談会を開いている。
こんなこと、恥ずかしすぎて人に言えない、でも言いたい、言いたい、マッチングアプリあるある言いたい。
いままで聞いてると小っ恥ずかしくなってきた、西野カナの歌でさえ、わたしを応援してくれてるような気持ちになるぜ。
勇気を出して!!
ごーふぉー!ごーふぉいっ!
そう時間を空けずに、会うことになった私達。
後にこれが習慣化となる。
木曜日の24時
田中は我が家の近くの通りに車でやってきた。
時間も時間なだけに、どこかに行くわけではない。
少しドライブをしたり、おしゃべりをするだけ。
こんな時間にどこに行くのか尋ねると、音楽の仕事を少し手伝っていて毎週木曜日はリハがあるのだと言う。
車には機材も積んであった。
はじめて会った日にライブに行く予定だったのも、友達がサポートメンバーで入っていた日で誘われてたんだよね、、と少しずつ田中の素性が明らかになっていく。
好きなバンドの話をするとワイワイ盛り上がった。
Hi-STANDARDや、SUM41、OFFSPRINGにハスキンやゴーイングアンダーグラウンド、、、
「4歳年下でよく知ってるね、お兄ちゃんとかいるの?」
「お姉ちゃんいるよ。あと、ごめんなさい、本当は35歳。30歳って入れたら、直せなくて」
「えー!なんだ、書いてあったから30歳だと思って、てっきり!」
田中、年下だと思ったら今日から年上になった。
そういえば、高校生のときに友達に紹介されて付き合った他校の葛西くん。
1歳年上って聞いてて、あとから知ったんだけど同学年だったなんてことあったな。年上は間違いなかったけど。
歳がどうこうは関係ないのだが、これは最終確認を怠った私が悪いのだろうか。
しかし、今は歳がどうなど1ミリも気にならない!私は西野カナ。西野カナなら、どんな歌にするんだろうか。
ミキティの「ロマンディック浮かれモード」でもええな。いまのワシには、ぴったりや。
「来週いつ休み?」
次のお誘いがきた。もう動揺はしない。
会いたくて会いたくて震える西野カナを心に飼いながら一週間を過ごすことになった。
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